神はどーだっていいとこに宿る


by god-zi-lla

花森安治のデザイン

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べつに暮らしの手帖の愛読者でもなくて花森安治という人にとくだんの関心があったわけでもなくって、なにか興味を引かれてたとすればあの書き文字と写植がまぜこぜになって写真の入ってない独特な新聞広告、あれは長年気になる存在ではあったんだ。

で30なん年か昔、花森さんの死亡記事を見たとき思ったのは、あの広告はどうなるんだろかってことだったりして、暮らしの手帖がどうなるんだろうかってことについては正直考えなかった。だって愛読者じゃなかったから。

まあそういう意味じゃ、あのどくとくな新聞広告の愛読者ではあったんだろうな。
出版社にとってなんの役にも立たない愛読者。

それはそれとして数か月前あることからある記事の載った暮らしの手帖の古いバックナンバーを一冊探すようになって、そうするとネットやなにかでずっと昔の暮らしの手帖の表紙をたくさん眺めることになってしまって、まあ、あの特徴のある他の雑誌とは絶対に間違えようのない(それって少し考えてみれば雑誌としてすごいことではある)表紙デザインについてようやく気づいたことがひとつあり、なんでそんなことにいままで気づかなかったんだろうというところにしかしもしかすると花森安治という人のすごいところがあるのかもしらんなあなんてことを、ぼんやりと考えるでもなく思っていたのでした。

そしたら先日神保町の東京堂を覗いたおり、この花森安治のデザインという画集というのか写真集というのか暮らしの手帖の表紙の原画がたくさん並んでいる本が平台にあった。

こういう本が平台のいいところにあったりするのが東京堂を覗く理由であったりもするわけで、まあなんというかそういう魔術というか詐術というかヒトのココロを見透かしたような商売というか、そういったモノにすすんで引っかかりたくて行くこちとらとしては手に取るしかないんだな。
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暮らしの手帖の題字って毎号毎号花森安治が書いてたってことに、じつは気づいてなかった。
さっき書いたのはそのことで、ネット上でバックナンバー売ってる古書店のページに古い暮らしの手帖がずらずらずらっと並んでるのを見て、なさけないことに新聞広告だけの愛読者だったおれは初めて気づいたのでした。

この見開きで紹介されてる表紙版下を見ても、それぞれ別の題字が書かれてるのがわかる。
何種類か書いたのを紙焼きにしてストックしといてそれを切り貼りしてるんじゃなく、版下にじかに墨文字でいちから手書きしてある。

しかしそんなのってアリなのかよ。
題字毎号変えてる雑誌って考えてみたらジョーシキの外の世界じゃないか。
だけどそうやって毎号違ってるのに連綿として続くこれは暮らしの手帖だって印象からは一瞬たりとも外れてないってことのほうが、考えてみたらもっとスゴいことのような気がしてくるじゃんか。

なんてことをぶつぶつと思いながらぱらぱらと立ち読みしてたら、ふと手が止まった。
あ、これ。あの表紙じゃないですか。去年の12月のはじめくらいだったかにようやく東北の古書店のサイトで見つけて買ったくだんのバックナンバー。その表紙と版下と写真。

あちゃー。そうなっちゃうともう意味もなくウレシくなっちゃってダメなの。
持って帰って実物と見比べてみなくっちゃって。
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Commented by mono-mono at 2012-02-05 23:36 x
「花森安治の青春」という本を読んでいるところだったのでちょっとした偶然に驚きました。
「花森安治のデザイン」は知りませんでした。
興味津々です。
とりあえず明日立ち読みっす(笑)。
Commented by god-zi-lla at 2012-02-06 07:01
mono-monoさん、どうもです。

気の小さい自分としては、そうとう強烈そうな花森安治という「人」については敬遠ぎみなんですが、本屋に行けば目に触れられた暮らしの手帖の表紙の表紙と、新聞めくれば目に触れられたその雑誌の新聞広告には高校生くらいのころから興味シンシンでした。

しかし、こうやって見ると優しそうなフリしてる作品もホントは強烈だよなあと、つくづく思ってしまったのでした。

ちなみに本屋には「一戔五厘の旗」の復刻版も並んでいて、変わった「函」入りのこれもすごいです。
Commented by 宗助 at 2012-02-06 10:57 x
寒いですね、冬眠状態ですが、暮らしの手帳、花森安治で眠気が覚めました。
どういう訳か実家に暮らしの手帳があり、子供の時から読んでいました。長じて自分で稼ぐようになってからは毎号購読し第二世紀の100号まではバックナンバー今もどこかにあると思います。お探しの号も家人が処分していなければあるかな。
子供心にもあのイラストとデザイン、独特の文章はインパクトが強かった。一銭五厘の旗をはじめ、料理本やエッセイ迄彼の装丁の本は出るたびに買っていました。
買い物案内の信者でした。ラックスのアンプに対する憧れは、SQ5Bというアンプが商品テストで推薦されていたからだったし、レコード紹介頁の黒田恭一の推薦盤もずいぶん買いました。
私の子供の時の権威は岩波書店や朝日新聞その他ガラガラと崩れてしまいましたが、暮らしの手帳だけは心の中で今も健在ですね、雑誌は買いませんが。
彼の下で働いた人が書いた「花森安治の仕事」という本もとても面白い本です。
Commented by 宗助 at 2012-02-06 11:05 x
そうそう、前号で名前が思い出せないと仰ってた三原橋の名画座の名前、あの映画館はまことにストレートに「銀座名画座」じゃなかったですか?
Commented by god-zi-lla at 2012-02-06 11:27
宗助さん、雨ですね。

じつはこの85号を買い求めて、初めて暮らしの手帖という雑誌にスミからスミまで目を通しました。

表紙の基本デザインが当初の描き下ろしイラストから、スタジオでのブツ撮り写真に変わったっていうのも、この本を買って初めて知ったのですが、そういわれればそうだったんだってくらい、ほんらいなら大リニューアルなんでしょうけど暮らしの手帖っていう雑誌のパブリックイメージを裏切らないリニューアルで、やっぱりとんでもない人だったんだろうなあと、そんなわけで自分にとって花森安治という人は「グラフィックデザインの人」です(笑)

しかし、そうなんですか。オーディオアンプの商品テストまでやってたんですか。それはすごいなあ。
大メーカーじゃなくてラックスのアンプを推奨するところが、暮らしの手帖らしいのかな。

> あの映画館はまことにストレートに「銀座名画座」じゃなかったですか?

あ、そうでしたっけ!
それで「名画座」なんてコトバが無意識に出てきたのかな。
ご指摘、ありがとうございました。

しかし地球座っていうポルノ映画館のほうだけ覚えてたのが、まったくもう恥ずかしくて情けないっす(笑)
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by god-zi-lla | 2012-02-05 10:43 | 本はココロのゴハンかも | Comments(5)