神はどーだっていいとこに宿る


by god-zi-lla

NORVO! MOVE!

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みんな言ってますけど東京は秋がちょっとしかなくていきなり冬になっちゃったな。
寒いのに近所のイチョウ並木は緑のまんまで、もしかして黄色くなるキッカケ失ったかな。

レッド・ノーヴォのMOVE!っていうアルバムがもう30年以上前からアタマのすみっこのどっかで気になっててさ。そのうちいつか買って手元に置いてゆっくり眺めてやろうってずっと思ってたんだよ。

そうです眺めるのが目的でした。

このジャケットの写真がさ、アメリカ空軍アクロバットチームThunderbirdsのノースアメリカンF100スーパーセイバーだからね。それでずうーっと昔っからこれはかっこいいジャケットだよなあって気になってたんです。なんたってあたくしはヒコーキマニアだったから。

ただレッド・ノーヴォってひとはいわゆる「中間派」からバップ初期のヴァイブラフォン奏者だってことになってるじゃない。だからちょっとおれの守備範囲じゃないだろうなって思ってたもんだから、それにまあいつだって欲しいレコードっつうのがあるしね。どうしても優先順位は上がりません。そういう意味じゃ純粋にジャケットだけ気に入って買うなんてことはそうそうないもんでさ。たとえジャケ買いといったってそこはやっぱり自分の守備範囲のなかのハナシだったりもするわけだ。

それがちかごろ歳とるにつれてその守備範囲ってヤツのほうがなぜか広がってきたもんだから、ついせんだってエサ箱のなかからこいつを引っぱり上げたとき、おー機は熟せり!、いよいよ今日という今日はこいつをエサ箱から救出してやるまいことかと、まあフトコロにやさしいお値段でもありましたので買って帰ったのでした。

レッド・ノーヴォ・トリオってのはこの時期ノーヴォのヴァイブラフォンにタル・ファーロウのギター、それにチャールズ・ミンガスのベースつうドラムレスのトリオです。

そうそう、ミンガスの音楽を以前よりずっとたくさん聴くようになったってのも大きいよな。これがベースにスラム・スチュワートとかだったら今回もパスした可能性あるかもしれない。やっぱり、この3人でどんな音出すんだろうって興味がいまになって募ってきた感じはある。

それで聴いてみた。
じつは昔懐かしい感じのジャズを聴くつもりでした。

いやーおれのブログってこんなことばっかですいませんけど、今までレッド・ノーヴォの中間派なんつうレッテルに惑わされて敬遠してきたおのれの不明をひたすら恥じるのみ。

このなんつうかスピード感とか、聴いたことないようなハーモニー感とか不思議な響きとか、なんか70年代のおしまいのころにゲイリー・バートンとパット・メセニーがやってた当時不思議な気分で聴いた音楽にある意味近いサウンドを、先立つこと30年前に出してたように一瞬きこえた。ようするに50年代初頭にこんな新しくて楽しい音楽をやってたのかってかなりビックリしちゃってさ。

いやー毎度のことでございますが、もしかして知らなかったのはおれだけですか。
まいったなあ。いくつになってもヨノナカおれの知らないことだらけだ。

なんでもレッド・ノーヴォはこのトリオを始めるにあたりジミー・ロウルズに強く勧められて、ベースにミンガスを使おうとしたんだってね。

で、その当時ミンガスはロサンジェルスで郵便配達をしてたんだそうです。
それをノーヴォは一生懸命探し回ったらしい。ミンガスもファーロウも20代後半の若者。
やっぱりノーヴォは新しいことをやろうとしてたんだろうな。

じつはビバップ全盛の50年代初めに少し時代遅れなジャズをやってるアルバムの表紙に53年に初飛行したバリバリの最新鋭機F100がジャケットかよって、ちょっと違和感もあったんだよ。なにせレッド・ノーヴォってひとはチャーリー・パーカーやディジー・ガレスピを従えてリーダーアルバム作ったような人だからね。

だけどちがってました。
これ当時は、中身も新しいしガワも新しかったんだよ。

つうようなわけで、ここのとこくり返しくり返し聴いてたんだけどさ。このトリオのレコードってのはこれっきりなのかどうかネットで検索してみたらサヴォイレーベルが80年代になっていろいろ出したアンソロジーのシリーズのなかにこのトリオの録音をまとめたアルバムがあるとわかった。

で最初、写真の下のほうに写ってるCDがAmazon.co.jpのマーケットプレイスにあったんで買ってみたんだ。

いや、あんまり気に入ってしまったもんだから、このトリオの演奏ほかのもいっぱい聴いてみたいと思ったのは当然あったんだけどさ。それともうひとつあったのはノーヴォ、ファーロウ、ミンガスのトリオについてどうもよくわかんないってのがあったんだよ。

このサヴォイのシリーズをいくつかLPで持ってて音質的にはあんまり感心しないのもあるんだけど、ライナーノートが比較的しっかりしてる印象があったもんですから(あくまで印象ね。なにしろ英語苦手だからちゃんと読んで理解してるわけじゃないの)、もしかするとこのトリオについてわかるかもしれないって期待もあってね。

それがあなた。送られてきたCDをみたらLPのライナーノートをそのまんまCDサイズに縮小したらしい、これって蟻んコが読む新聞かよってくらいな極小文字がびーっしり印刷された見開きのリーフレットが入っててさ。これがもうおれの目にまったく見えないの。老眼鏡かけたってぜーんぜん見えません。んー。

でもまあいいや。ほかの演奏が聴けりゃ。そっちが大事なんだからさ。

ちなみにMOVE!のLPには12曲入ってますがこっちのTHE RED NORVO TRIO WITH TAL FARLOW AND CHARLES MINGUSのCDは20曲収録。いやー結構けっこう。これでなくっちゃね。音もまあそれなりですし。なによりこの気持ちいい音楽をいっぱい聴けるのがうれしいもんね。

ちなみにこの一連の録音は50年と51年にわたってロサンジェルスで2回、シカゴで1回のレコーディングセッションで行われたようなんだけども、MOVE!のこのアルバムはそれをまとめてヴァン・ゲルダーがマスタリングしてるんだね。だからこのレコードには手書き文字でRVGと彫られてますけど、しかしロサンジェルスとシカゴで録音したのをヴァン・ゲルダーが仕上げてニューヨークのサヴォイが発売ってのがなんだか大陸横断でスゴイよな。

で、いい調子で聴いてたんだ。2、3日。

ふとCDのバックインレイにある曲名リストのすぐ下の蟻んこ文字をしげしげと見てたら
Due to time limitations. 5 tracks which appeared on the original double album release have been omitted from this compact disc.
は? それってつまりモトの2枚組LPには入ってたけどCDに入りきらなかったトラックは勝手に外しちゃったってことすか。えー、なんだよー、ふつうそんなことしねーぞ。先にそれ言えよなー、バカヤロー。

で結局買ったのが写真左に写ってる2枚組のLPす。
たしかに5曲(つか5テイク)よけいに入ってました。

ちょうどヤフオクに安値で転がってたのが、せめてもの救いだった。

だけど知ってたら最初からCDなんか見向きもしないでLP探したのにさ。
なんでこういうテキトーで無責任なことするかなあ(CD製作したのはどうもこのときサヴォイの原盤権持ってた日本コロムビアらしいな。けっ、覚えとくぜ)。

つうようなイキサツはありましたけど、いまは楽しく聴いております。

ちなみにMOVE!以外のオリジナルアルバムというのはMidnight On Cloud 69っていうジョージ・シアリングのトリオの演奏入ってる(A面B面を分けあってるのか?)やつがあるようで、これはベッドの上で女性が裸の背中を見せて横になってるあのジャケットはわりと有名なアルバムらしいね。

まあでも、そっちはもういいかな(とか、いまは思ってるけどさ)。

だけどまだ不思議なのはこのジャケットのF100でさ。こいつの初飛行が53年、Thunderbirdsで使われたのが56年から63年。いっぽうレッド・ノーヴォ・トリオの大傑作MOVE!のレコーディングは50年から51年。

つうことはこのかっ飛びサンダーバーズのかっちょいいジャケットじゃないオリジナルジャケットってのがあるってことなんでしょうかね。ふつうそうだろうな。だけどもしかしてこの大傑作が5年も6年もリリースされずにお蔵入りしてたって可能性もあるのかな。

あともう1コ。

下のレーベル面見るとわかるんだけど、アルバムタイトルが"ZING WENT THE STRINGS..."とあってMOVE!の文字はタイトルじゃなくて曲名として入ってるだけなんだ。

もしかしてこれがオリジナルアルバムのタイトルだったってことなのかな。

けっこうミステリアスな傑作アルバムだよな。
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by god-zi-lla | 2012-11-28 10:50 | 常用レコード絵日記 | Comments(0)