神はどーだっていいとこに宿る


by god-zi-lla

この2か月で読んだ本の備忘録、今回はあつかましい人各種取り揃え

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短パンにTシャツじゃ、ちょっと寒いな。
当たり前だろが。

左から。

謎の独立国家ソマリランド そして海賊国家プントランドと戦国南部ソマリア 高野秀行(本の雑誌社)
魚雷艇学生 島尾敏雄(新潮文庫)
七つの顔の漱石 出久根達郎(晶文社)
里山資本主義-日本経済は「安心の原理」で動く 藻谷浩介、NHK広島取材班(角川oneテーマ21)
評伝 高野長英 1804-50 鶴見俊輔(藤原書店)
地図と愉しむ東京歴史散歩 地形篇 竹内正浩(中公新書)
こんな夜更けにバナナかよ 筋ジス・鹿野靖明とボランティアたち 渡辺一史(文春文庫)

読み終わって著者略歴みて気づいたんだけど「アジア新聞屋台村」って高野秀行著だったのね。あれ読んだときも面白いもん書く人だなあと思ったんだが、そのあと「イスラム飲酒紀行」がさらに面白くて、こんだのこれはもっと面白い。

それに面白いだけじゃなくて、すごく深くて鋭い。どくとくのややC調で与太話っぽい書き方に惑わされずに最後まで読み進めば、いままでソマリランドについて断片的に耳に入るニュースが大手メディアのも海外通信社のも、じつはほとんどたんなる噂話レベルだったってことのわかる真剣に読むに値する現場ルポです。

あのー、トッピなこと言い出してすいませんけど、おたがい生きる時代も場所もなにもかもまるっきり縁もゆかりもない今回読んだ本の主人公、ソマリランドの人たちと高野長英と鹿野靖明つう3人じゃなくって2人とひとつの集団て、たまたまだけど「すごくあつかましい人」ってことで共通してる感じがしてさ。

だけどそのあつかましさがそれぞれの魅力になってて、なんでそれが魅力なんだっていえばそれぞれが持ってる強烈なあつかましさが生きるチカラの源泉ていうのかそれが生きてることの証しっていうのかそれがなきゃ生きていけなかったっていうのか、そういう感じに読めてしまうんだよな。

そのあつかましさにつられて、この2か月この3冊でもって人が生きるってどういうことかとか、人と人とのつながりってのはなんなんだとか、国家ってなんじゃいとか、そういうことをおたがいまるで関係のないこの3冊の本を読んで考えさせられることになったってのが面白かった。

ところで夜更けにバナナはこの本が出た10年くらい前にこのブログにコメントよくくれる虎吉さんにぜったい読めって勧められたのを、なんか重たそうなテーマだよなあと(しかも講談社ノンフィクション賞と大宅賞をダブル受賞しててエラソーだし)敬遠して読まなかったのが、来月の読書会のお題になったんで読んだところ10年前に読んどきゃよかったとおおいに後悔してしまったのだった。すまぬ虎ちゃん。

島尾敏雄は最初「出発は遂に訪れず」を読もうとして品切れのようだったのでこれを手に取った。この静かに漂うような笑うでもなく笑わぬでもないユーモアのようなものはなんなんだろう。日に日に出撃の迫る特攻隊時代の回想なのにさ。こういう小説は初めて読んだ。

東京歴史散歩はこの地形篇も以前出た正編も収録の図版が小さすぎるのが致命的欠点なり。コストの関係だかなんだか知らんけど、その本にはその本にふさわしい判型や体裁ってのがおのずとあるにちがいないと思うんだが、きょうびなんでもかんでも安直に新書判で出してなんら恥ずるところも反省する気配もない出版社ってのはどうなのよ。老眼のオヤジがこの本を手に東京をあちこち経巡るのは不可能です。残念至極。

里山資本主義は、資本主義社会ってのが行き着くとこまで行き着いてしまってブチ壊すなりガス抜きするなり脇道を作るなりしないと世界はダメになっちゃうと思っている人がどんどん増えてて、じっさいそれを実践してる人もどんどん増えてるってことを感じさせる本のひとつだと思う。

とにかくグローバル経済(=モラルなき強欲経済)シングルトラックってのがいちばんマズイつうのがヨノナカの共通認識になってほしいもんです。銭ゲバは銭ゲバだけでやってってください(ヤメロったってどーせムリでしょうし)。昔のヤクザ者がカタギに手を出さなかったように。

高野長英の小伝馬町破獄してからの業績もさりながら逃亡を支える人たちのココロがすごい。どっかに鹿野靖明のボランティアとダブってみえるところがある。それにしてもこれは朝日選書で絶版になったのを藤原書店が引き取って単行本で出し直した由。名著を救う出版社と捨てた出版社ふたつの見識や如何。

出版社といえば、晶文社がなんとか文芸書を出し続けてくれてるようでホントうれしい。出久根さんは前半の漱石にまつわるさまざまな蘊蓄を語るところがとくに面白い(つか、それを目当てに買ったんだ)。そこのとこだけで1冊になるだけの分量が多分なかったんだろうな。
Commented by 虎吉 at 2013-10-01 22:22 x
ゴヂラどの

 恐縮です。でも「とらちゃん」と言われると、三崎千恵子のおばちゃんに、呼ばれているような感じがしますね(笑)。

 高野長英・鹿野靖明・そして鶴見俊輔、よくも悪くもやんちゃなんでしょうかね。それでも支える人がいる。
 
Commented by god-zi-lla at 2013-10-02 06:47
寅次郎さん こんにちは(笑)

まったくしょうがないなあ、ってボヤかれながら見捨てられもせずに周囲が助けてやってるってとこがまさに寅さんですね。

日本人てそういう人が好きなのかな。いや日本人にかぎらない人類普遍の性向でしょうか。つか、周囲の人をそういうしょうがない人が逆に救ってるともいえるのかもしれないですね。
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by god-zi-lla | 2013-09-30 17:29 | 本はココロのゴハンかも | Comments(2)