神はどーだっていいとこに宿る


by god-zi-lla

こんどは歌いまくる巨匠(アラン・トゥーサンのライヴとニューアルバム)

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それにしても台風の雨がなあ。

あろうことか六本木ミッドタウンのビルボードライブでやるアラン・トゥーサンのライヴの予約開始日をカレンダーに印までつけといてすっかり忘れててさ。あーしまった、もうすぐじゃんかと焦っていつもの傍聴席というか大向こうというか天井桟敷というか、まあそういったライブレストランと銘打ちながらそこだけはお食事なんかしなくてもいい1ドリンク付きのカウンター席を予約したら取れたのでよかったんですけど、しかしこれだけの巨匠の知名度というものがいまひとつだってのがちょっと淋しいといえば淋しいよな。

というわけで回と同じビルボードライブへ行ってから4年ちょいの10月22日の夜、ふたたびアラン・トゥーサンのピアノと歌を存分に楽しんできたんでした。いやーよかったよかった。前回はジョー・ヘンリーがプロデュースしたクラシカルなジャズっぽいアルバムが出たあとで同趣向のピアノ中心のステージでしたけど今回は1時間ちょっとのセットをピアノ弾きまくりかつ歌いまくるという展開なのだったが、はっきり申し上げましてバンドで来日した前回よりもほとんどソロの(半分くらいにコンガ&パーカッションのおじさんが一人付き合う)の今回のほうが凄味を感じさせるライヴだったのがすごいよ。

じつは少しまえに御大あたらしいアルバムをリリースしておりまして写真にゲートフォールドの見開きが写ってるAllen Toussaint Song Bookというのがそれなんだが、ふつうソングブックつうタイトルのアルバムってばエラ・フィッツジェラルドのコール・ポーター・ソングブックみたく歌手がある作曲家の歌をまとめてアルバムにするようなのが当たり前であって、自分の歌を自分で歌ってソングブックっていうのもなんだか珍しいような不自然なような気がしないでもないんだけど、たった一人で24曲歌いまくりピアノ弾きまくったライヴが、じつにまったくいいアルバムになってんだよ。

でまあ、こんかいの来日でもこれをやるんだろうなと予想はしてたんですけどね。

あのーやっぱりアレじゃないですか。CD聴いてるとアラン・トゥーサンが自分でピアノを弾きながら歌ってんだってふうにはあんまり意識しないで、アタマではそう知ってはいてもなんとなく「歌+ピアノの伴奏」って感じで聴いてたりするじゃないですか。

なんていうのかな、ようするにピアノの弾き語りっていってもいろいろあるわけで、ぽーんぽーん、ぽろろーん、くらいにコード押さえながらさらさらっと文字通り語るように歌うってのも弾き語りでしょうけど、この巨匠の場合ピアノをがんがんと当然ぜんたいとしたらニューオーリンズ風なとこへときにドビュッシーかと思わせるようなフレーズが挟まってたり、なんだかわかんないけどどっかで聞いたことのある何かの引用だったりってのがこれでもかってくらい入れ替わり立ち替わり出てきては消える緩急自在のピアノを弾き倒しながら、Yes We Canのような早口言葉みたいな歌でもなんでもあの柔らかい声で歌うんだけどさ。

CDで聴いてるあいだはともかく間近にそれを目撃してしまうと呆然とするというか、この人はやはり尋常ならざる巨匠だよなあと思うしかないんだよ。しかもほとんどすべてが自分以外のシンガーのために書いた自作曲なわけだしさ。いったいこの人の本業はピアノ弾きなのか歌うたいなのかソングライターなのか、はたまたアレンジャーなのか、まあしかしやっぱりこの巨匠はニューオーリンズ音楽の生き神様としか言いようがないんだろうな。

つうわけで写真左は店のチラシですけどゲートフォールド右側ロールスロイスのバンパーにスーツ姿で足をかけている巨匠の足は白いソックスとサンダルつう、そういえば昔おれがサラリーマンだったころ勤め先の内勤のおじさんたちによくあったこれは「社内ファッション」だったよなあって、なんかちょっとダサ恥ずかしい生き神様のお姿だったりするのだが、じつはライヴでも巨匠はこのサンダル履きなうえにムラサキの地にラメがキラキラときらめくジャケットをお召しになって、前回も今回も変わらずピアノに向かうのであった。

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ところでアルバムもCDもラストは紫ラメのジャケットのようにきらきらとしてエキゾチックな長いイントロのついたSouthern Nights。アルバムでは途中で歌われる唯一の自作でない曲「セント・ジェイムズ診療所」が22日のファーストセットではアンコールだった。

それからアルバムではBrother Get Furtherで客席とコール&レスポンスが楽しそうだったので、よーしライヴでやったらデカい声で歌ってやろうと思ってたら、おれが行ったセットではやってくれなくてちょっとガッカリ(笑) そういえばSoul Sisterもやってくれなかったなあ、シスタッ・シスタッ・シスタッ・シスタッって。

でもいいんです。巨匠にはじつにたくさんの名曲があるんだから。

ところでビルボードライブには来年1月アート・ネヴィルを含むミーターズの残党バンドが出るらしい。エアロン・ネヴィルと元気な次兄チャールズ・ネヴィルのバンドはここで見ましたから、アートが出るのに行けたらあとは末弟シリルが出てくれりゃビルボードライブでネヴィル・ブラザーズをバラで見物したことになるな。あはは。
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by god-zi-lla | 2013-10-26 07:57 | 常用レコード絵日記 | Comments(0)