神はどーだっていいとこに宿る


by god-zi-lla

正月の箸置き

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新しいカメラにトイカメラモードってのがあって、ためしに撮ってみた。
これも四すみの明るさを落とすだけじゃなくって、カメラがいろいろ小細工を弄してるふうにみえるな。

おとついの日はことし初めての歌舞伎座に猿之助見に行ってきた。なにしろおれは新しい歌舞伎座に出ない記録を作ってやるってずいぶん長い間突っ張ってたんだから、ようやっと出てきたこのヘソマガリを見ない手はないでしょ。まあ新しい歌舞伎座に出ないにはいろいろあったようですけど(いわく猿之助襲名に際して大御所級のどなたかとトヤカクあって出してもらえなかったのを逆手にとって『じゃあ出てやんねえよ』とタンカ切ってみせたとかさ)、まあその手のハナシもそれはそれで見物的にはとっても面白くて、あることないこと尾ひれがつけばつくほど楽しくていいんですけどね。なにはともあれチカラのある若い役者がカブキの殿堂に戻ってきたんだからメデタシメデタシ。

で猿之助の「黒塚」を見てみれば、おれのようなシロート目にだってこういうオトコが歌舞伎座に出てこないというのがどれほどな異常事態かってことが一目瞭然なのであった。

どこのおうちでもそうでしょうけど、お正月しか出てこない食器というのがいくつかあるんだ。ウチのばやいこの箸置きもそういうヤツのなかのひとつで、べつに正月用にと思って買ったわけでも誰かが決めたわけでもなんでもないのにいつのまにかそういうことになっている。

しかもいかにもお正月っぽくメデタイわけでもなくてさ。それどころかこれはなんの動物なのかバケモノなのか、たしかに色と模様はなかなかに艶やかなんだけどね。カタチ的にはとっちかというとブキミなほうかもしれない。なにしろ左のやや大きいやつなんか前後双頭だもんな。ひとによったら食卓でこんなもの見たくないと思うかもしれない、こいつら5匹がよりによって正月のみ登場するわが家のとってもメデタイ箸置きなのであった。

そんなわけで正月しか出てこないから写真撮ってみたのもこれが初めてです。いつもは台所の戸棚の奥深く小さな紙箱にしまわれて5匹は暗闇で肩寄せ合ってひっそりと暮らしてるわけだ、多分。

もう10年くらい前かもっと前だったか奥さんと金沢を旅したとき、たまたま繁華街にあるごく真っ当な(つまり『趣味の店』とかそういうのじゃない)陶磁器店にぶらっと入るとコイツらだけがおれたちを呼んでいたんでした。いくらでも並んでる九谷焼のお皿とかお茶碗とかはちいとも呼んでくれないんだが、なぜかコイツらがおれたちにまるで吠えかかるようにしてたんだな。

店のひとによるとこれを作った作家は家族みんな陶芸家で、本人も東京だかから学校出て帰ってきて焼き物をするようになった新進の作家だから面白いでしょって。まあ、たしかに面白い。つか、なんかわりかし伝統的な陶磁器がたくさん並んでるその店のなかで、この5匹だけが異様というか異質というかフザケてるというか、色使いとかはたしかにほかに並んでる九谷焼に通ずるとこもありはしたんだけど、かなり場違いな感じではあったんであった。

で、ほかのお皿とかが値段の張るせいかおれたちをさっぱり呼んでくれないのもあって迷わずこの5匹を旅のミヤゲに包んでもらったわけです。そのとき作家の名前もたしかにお店の人には聞いたはずだったんだけど、説明書きのひとつあるでもなく箱はたんなるあり合わせのボール箱だしさ。じつはこの写真撮るまでまったく作家の名前がわからないままでね。

だけどそれもなんだかアレだよなと思って、こういうときにインターネットは便利だ。金沢箸置きとか九谷焼箸置きとか陶芸女性金沢とかなんかテキトーなキーワードで画像検索してたら、あーこれじゃんかというのがすぐに見つかった。いまもこのワケワカラン動物の箸置きをこの作家の人は作っとられるらしいのだな。いやいやそれにしても便利になったもんです。これが昔だったら、この箸置き持ってもっぺん金沢行ってセトモノ屋さん一軒一軒尋ね回らにゃならんとこだったぜ(そこまでせんて)。

米田文(よねだ ぶん)さんという作家の作品なんだそうです。いやーなんかすっきりしたぞ。どうやらときどき東京でも個展を開いたりしてるらしい。写真で見ると、この箸置きと同じような感じの、こう、理解可能なような理解不能なようなブキミでもありカワイくもあるような磁器の作品のいろいろというのが面白そうなので、機会があったら見に行ってみよう。

だけど写真撮るのに並べてみて気づいたんだけど、コイツらどれをどういうふうに並べてみてもこうやってカタマリにして置いてみると5匹が5匹いっせいに、わんわんわんわんわんわんと少し上向いて一斉に吠えてるようにしか見えない(犬じゃないと思うけど)。

箸置きってのはほんらい1個1個べつべつに置いとくのが当たり前のものだけど、なぜかこいつらは5匹まとめて並べてやるほうがずっと魅力的だったりするところが不思議なんであった。
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by god-zi-lla | 2015-01-14 09:33 | 日日是好日? | Comments(0)