神はどーだっていいとこに宿る


by god-zi-lla

台北国立故宮博物院北宋汝窯青磁水仙盆

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(写真をクリックすると多少拡大されます)

虎吉さんのブログで初めて知ったのが先週で、こりゃあもう行く以外の選択肢はあるまいと終了前日の大阪市立東洋陶磁美術館に飛び込んだ土曜日が昨日のことなのであった。

詳しい説明は全部省きますが台北の國立故宮博物院所蔵の北宋汝窯青磁の水仙盆4客すべてが東洋陶磁美術館にやって来て、同館所蔵の同じ汝窯青磁の水仙盆とともに展観に供されて今日2017年3月26日がその最終日だったんでした。

なにしろトンでもない青磁の名品ではあるけどもたったの4客、「どーたらこーたらのナンちゃらカンちゃら展」と名前が付くわけでもなくこのエントリーのタイトルのとおり〈台北國立故宮博物院北宋汝窯青磁水仙盆〉(たいぺいこくりつこきゅうはくぶついんほくそうじょようせいじすいせんぼん)というだけで小さな展示室ただひとつ。

去年、故宮博物院で写真でいうと左からふたつを見た。いちばん左のものに今回「人類史上最高のやきもの」っていうキャッチコピーがつけられている。なんつうトッポいコピーかと思うんだが、しかしそれが大げさな物言いという感じは全然しない。世界じゅうの陶磁器を見てまわったわけじゃないが(そんなヤツはひとりもいなかろうし)、もしかしたらそうかもしれない、いやきっとそうにちがいないと思わされるものがたしかにあるんだよな。

だから故宮で見たアレを日本で見ることができるんだったら、それは行くしかないじゃんか。

しかもこの汝窯で焼かれた青磁の水仙盆で、現存するのが確認されているのは世界じゅうで6客しかなくて、そのうちの4客が台北の故宮博物院にあり、ひとつは中国・吉林省の博物館にあり、残るひとつがこの大阪の東洋陶磁美術館にあるというんだから。

つまり世界中で六つしかないうちの五つを一度に見られる、しかも大阪で。

故宮博物院が東洋陶磁美術館に至宝をまとめて貸し出すのは当然そこに同じ〈汝窯青磁水仙盆〉があるからで、それがない東京には回ってこない。もちろん京都にも名古屋にも行かない。

じつは台北でも4つ同時に展示してるわけじゃなくて、おれたちが行ったときに見ることができたのはいちばん左のものと、そのすぐ右にあるフチに銅の輪が嵌められたものの2客だけだった。だからその右にある2客は今回初めて見たし、東洋陶磁美術館所蔵の1客(写真右端)も、いままで何度もこの美術館へ行ってるにもかかわらず初めて見た。

もうこんなチャンスは、少なくともおれの生きてるうちにはないね。

まあしかしアレなんだよ。わざわざブログで話題にしといてなんですけど、これらがどう素晴らしいか字で書いて説明することなんておれには到底できっこないし、写真見てもわかりっこないから何も申し上げません。すいませんが、ぜひ台北まで行って見てきてくださいませ。それだけの値打ちがあると、おれは思う。台北へ行く値打ちがあるくらいだから大阪だったら言わずもがな(終わっちゃったけど)。

ちなみに上の写真は図録に綴じ込まれた片カンノン10ページの口絵です。そして裏の5ページにはそれぞれの水仙盆の「裏」の写真が載っている。じつに破天荒な図録なり。

それからこれも特別に展示されていて、見た。
じつにまったく、とんでもない展覧会である。
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Commented by 虎吉 at 2017-03-27 06:33 x
ゴジラ殿

こんにちは。
会期末での来阪、お疲れさまでした。

小生もあまりの素晴らしさにびっくりしました。4つーーいや、「人類史上最高」ってのを眺めるだけで精一杯。ですので、小さな茶碗は正直、よく覚えていません(汗)。確かにとんでもない展覧会でしたね。

東博でも4月からお茶の逸品が紹介されるようですね。
Commented by god-zi-lla at 2017-03-27 09:08
虎吉さん こんにちは。

いやー、助かりました。すんでのところで「一生の不覚」をやっちゃうところでした。ありがとうございました。

しかしあのキッチリ人数制限して展示室に入らせるやり方は良いですね。40分並んでも中でじっくりと見られたので満足度高いです。

まあ、巨大なミュージアムで報道が沸騰するような有名展が開催されるときにあれをやれと言っても無理でしょうけども。

ちなみに台北で見たとき、ほかのお客さんはほとんどいませんでした。人だかりは「白菜」と「豚肉」のみ(笑)。
Commented by KT at 2017-03-27 21:51 x
話題になってましたね。行けませんでしたけど。
展示は、一番手前の円形の部屋ですか?
以前、ここで青磁の篇壺の展示があって、とても魅力的だった記憶があります。

国際美術館、最初に行った時は、洪水になったら大変だと思いましたが、今や、東南海地震で現実的な話になってきたような気がします。よくまぁ、下に下に掘ったものだ。
Commented by 宗助 at 2017-03-27 23:49 x
すっかりご無沙汰しています。汝窯青磁の水仙盆と聞いて思わず書き込んでいます。先日貴ブログでこの展示を知ったのですが、今月は取り込んでまして大阪まで行く気力が湧きませんでした。今頃、最終日にでも無理して行けばよかったと臍を嚙んでいます。

以前も書き込みましたが、故宮博物院の大観の時に院所蔵の汝窯青磁21点が一挙公開されて、この4点も展示されていました。10年前くらいになりますが、その時の印象では写真の左から2番目の覆輪(でしたっけ)のある盆の青さが一番美しいと感じたと記憶するのですが、東洋陶磁美術館の光の下では如何でしたか?

上の写真だと美術館所蔵の右端の盆の青さが少し濃いように見えます、実際はどうだったのでしょう。
Commented by god-zi-lla at 2017-03-28 07:10
KTさん こんにちは。

> 展示は、一番手前の円形の部屋ですか?

そうです、円形というかカドが面取りしてあるようなあの2階の小さい展示室です。あそこに上の写真の汝窯の水仙盆5客と、後世景徳鎮で作られた汝窯の「写し」の水仙盆1客(故宮所蔵)、それに付属品一式だけがゆったりと間隔を取って展示されました。

そこへ入室限定30人、とても見やすかったですよ。

> よくまぁ、下に下に掘ったものだ。

大阪の「中之島」だから前後を川に挟まれてますしね。何かあれば不安はありますね。しかし美術品の展示に太陽光は却って邪魔だといわれれば、たしかにそうですね。

だけどあの地上の風景はちょっと馴染みにくいです。
Commented by god-zi-lla at 2017-03-28 07:27
宗助さん こんにちは。

故宮へ行った話題をブログに書いたとき、宗助さんが汝窯の21点全部ご覧になったというコメントを寄せられてそれが記憶に強く残っていたものですから、今回の展覧会を知ったとき絶対に行かなきゃイカンと思ったんです。

今回5客を見て、やはり一番美しいのは左端の「無紋」だと思いました。ああいう美しさを表現するのに言葉をいくら費やしても無駄ですが、なんというか窓のない展示室に置かれた水仙盆を見つめているはずなのに、そこから外の晴れた青空を見上げてるような感じ…、あーやっぱりダメだなあ。

東洋陶磁美術館所蔵の水仙盆は青磁の色が濃いというより、貫入の入り具合で、写真ではそう見えるのかもしれません。

それから今回の展示の照明ですが、感じ方に個人差もあると思いますが大阪では作品に直接光が当たりすぎてやや眩しい。館としては細部まで見せようとしたのかもしれませんが、もうひと工夫あっても良かった気がします。

Commented by 宗助 at 2017-03-28 11:56 x
汝窯青磁の話になるとついつい力が入ってしまって(笑)
私が台北の大観で見た時は、見慣れた東洋陶磁美術館に比べて展示室の照明が明る過ぎと感じました。陶磁美術館では自然光展示室もあるし中国陶磁室は天井が高くて明るく、韓国陶磁室は低めの天井で照明も落とすという風に格別に注意を払って調整しているようですが、それに比べると台北の展示は強いスポットライトを当て過ぎで微妙な美しさが味わいにくかったという記憶があります。

それで、照明に気をつかう陶磁美術館ではどうだったかなと思った伺ったのですが、ゴジ兄のコメントによると「作品に直接光が当たりすぎてやや眩しい」という事、その感じは私の台北の経験と似てるなと思いました。
Commented by god-zi-lla at 2017-03-28 13:16
宗助さん

今回の特別展の照明は東洋陶磁美術館の通常展示よりやや明るく大雑把という印象を抱いたので、じつはブログ本文で書こうかと一瞬思ったのですが、なにか唐突な気がしてやめておきました。

もしかするとあの明るさは台北の希望だったのかもしれませんね。

平生、あの館ではあまり見ない鏡などを使って裏面を見せるなどの「仕掛け」がふんだんに使われていましたし、そのあたりの見せ方について故宮博物院の意向があった可能性はありますね。

近ごろ国内の美術展はとくに照明による作品の劣化を嫌って全般的に照明が薄暗くなってきているという印象が強いので、今回の汝窯青磁水仙盆の特別展が尚更明るく感じられたというのは間違いなくありました。
Commented by ハルズ at 2017-03-28 16:46 x
雨過天晴 雲の破るところなり、という美しい「青」の最高の色ですね。
上薬がメノウだとは思いもよりませんでした。
北宋と言えば鎌倉時代、その時代にダイアモンドの次に固いメノウをどのようにして粉末にしたのでしょうか?
もちろん他の物質・不純物が混ざれば色は出ませんし。
奇跡の焼き物ですよね。
私は一昨年、九州の国立博物館で見ました。
興奮しました。
今回は、行けなくて残念。
Commented by 宗助 at 2017-03-28 18:53 x
>あの館ではあまり見ない鏡などを使って裏面を見せるなどの「仕掛け」がふんだんに使われていましたし、そのあたりの見せ方について故宮博物院の意向があった可能性はありますね。

私の記憶ですが、故宮博物院大観の際の青磁水仙盆の展示は壁に寄せてあったのではなく、島の形になったショーケースに一列に展示されていたと思います。したがって見学者はぐるりと回って反対側もじっくり見ることが出来ました。

この事から推して、ゴジ兄の仰るように今回の鏡を使って裏側も見せる展示方法は台北の意向だった可能性が高いですね。
Commented by god-zi-lla at 2017-03-29 07:38
ハルズさん こんにちは。

あ、太宰府の国立博物館に出たんですか。知りませんでした。今さらですが、残念(笑) まったく、機会があれば何度でも見たくなるような素晴らしい「青」ですね。

おっしゃるとおりあの色は奇跡の賜なのでしょうね。
Commented by god-zi-lla at 2017-03-29 07:42
宗助さん

なるほど。照明の明るさといい鏡といい、あれは台北故宮的なサービス精神の表れと理解して、文句を言うのはヤメにします。

4つまとめてはムリとしても、また日本のどこかに(どこでもいいので)出して欲しいですから。
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by god-zi-lla | 2017-03-26 17:54 | 物見遊山十把一絡げ | Comments(12)