以下、自分のための備忘録。本人としては今回の入院と手術がこれから残りの人生を生きていくうえで貴重な経験になったと思っているが、べつに面白いものじゃないし、面白おかしく書いてるわけでもないので、興味のない方は捨て置いて下さい(長いし)。とくに何かの役に立ちそうな気はまったくしませんが、もし参考になるようなことがあれば幸いです。
1月4日(水)夕方
近所のかかりつけ病院の外来終了間際にタクシーで駆け込む(ふだん徒歩10分の距離が苦しくて歩けない)。
その日の内科外来担当は消化器内科医で(ふだん診てもらってるのは循環器内科医の院長)、すぐCT撮影。CTデータから小腸イレウス(閉塞)の疑い。当院では治療できないので地域の総合病院へ至急行くよう強く勧められる(つか指示される)。
《追記》いったん自宅に戻ってからタクシーで向かいたいと医師に言ったが、ここから直接行くよう強く言われた。
点滴開始。《追記》医師が総合病院に受け入れ要請の電話を入れる。移動のため救急車を要請。15分ほどで救急車到着(最寄り署ではなく『旗の台』の救急車だった)。かかりつけから総合病院のERに救急搬送。所要時間約5分(マジで近い)。
陰圧室に収容されPCR検査。採血。小腸イレウスの疑いで入院決定。陰性判定の後消化器内科病棟へ移る(個室)。腹部のレントゲン撮影。絞扼性イレウスと診断。
鼻から胃へドレーンのチューブを挿入される。胃の内容物を鼻から排出(9日まで継続)。ドレーンチューブ固定の邪魔になると口髭をシェーバーで剃らされる。
心電図モニターも繋がれる。点滴+胃のドレーン+モニターのワイヤハーネスでがんじがらめ。
その夜はほとんど眠れない。
1月5日(木)
朝から腹部エコー。レントゲン撮影。血管に造影剤を点滴してCT。移動は車椅子。
担当の消化器内科医師から、腹腔内の組織に小腸の一部が絡まって締め付けら閉塞しているが、自然にほどけることもあるのでとりあえず経過を見るとのこと。最悪手術もありうるがそこまでのことはないだろうと、この時点では楽観視。
この病気の「原因」はなんなんですかと質問。いや「原因」はありません。「たまたま」なるんです。だから予防も出来ません。なりやすい体質というのもありません。そんな「病気」があるのかとびっくり。そもそもそういうのって「病気」っていうのか。しかし確かに苦しいんだから病気なんだろう。
胃腸が異常に膨張している実感。
鼻から突っ込まれた胃のドレーンから内容物はある程度自然に排出されるが、看護師が時々手動ポンプで排出。結構な量。
4日から絶食。以後1週間点滴で生きる。
水は飲んでも構わないが、飲んだ量を記録せよと言われる。以後ペットボトルの水を飲む。なにしろ口から水を飲んだところで胃から下には落ちず、溜まった水分はドレーンから排出されるだけだ。しかし明らかに脱水状態で唇はカラカラに乾いて皮が剥けてくる。せめて口腔内を潤すためだけでも水を飲みたい。
奥さん面会。面会はすべての病棟・患者に対してごく限られた時間帯に1日1回家族1人のみ病室で10分間限定。奥さんも体調すぐれないのに無理して来てくれたが、わずか10分のために来てもらうのは申し訳なし。以降退院まで面会なし。
この夜もほとんど眠れない。寝返りも打てない。
1月6日(金)
朝から腹部レントゲン撮影。看護師が付き添い点滴とドレーン袋をぶら下げた棒をガラガラ押して自力で歩いて行く。
午後になって担当の消化器内科医師ふたりが、経過観察していたが改善されていない。手術したほうが良いと思うがどうかと問われる。そうするしかないならしてくれと答える。
娘がコンビニで買った550mlペットボトルの水6本差し入れてくれた。
連休に入ると大変なので、これから急いで再度腹部エコーと造影CTを撮って最新データを見ながら外科と協議したいと担当医師ふたりがおれを車椅子に乗せて病院内をほとんど走るように移動。そんなに緊急なのかよ。
手術は7日15時と決定。
おいおい、って感じ。
《追記》37.0度から38.0度の発熱が続くので手術を前に念のため再度PCR検査。結果は陰性。
1月7日(土)
執刀外科医から説明。手術は腹腔鏡で2時間程度。今のところの所見では小腸自体を切る必要はなく絡みついた組織(脂肪などの膜のようなものらしい)を切除すれば小腸は「絞扼」から解放されるが、小腸の一部が壊死していたりするとその部分を取り除き、場合によっては小腸を切り詰める必要が生じることがないとは言えないと。
看護師から術後は外科病棟(大部屋)に移ると説明。手術までに荷物をまとめとくように指示。そこいらへんのあれやこれやを奥さんが差し入れてくれたエコバッグに詰める。
15時少し前に手術着に着替え、車椅子で手術室に移動。
麻酔の前に背中に「痛み止め」薬剤の針を刺される。
麻酔は点滴と口からマスクで。
尿道にカテーテル挿入(9日まで継続)。
そして気がつくと外科病棟の4人部屋。
手術は思いのほか簡単で40分くらいで終了したと。小腸自体にダメージはなく、経過さえ良ければここから1週間から10日程度で退院できる見込みという執刀医の説明。
腹腔鏡手術の「跡」は3つ。多分メインがヘソのところ、その左右にひとつずつ。傷の痛みというのは麻酔が覚めたあともほとんど感じない。背中に刺された痛み止めの効果もあるんだろうけど、意外なくらい痛くない(そもそもおれは痛みに鈍感だってのもあるだろうが)。
しかし小腸が「開通」したという実感乏しく、胃のドレーンからは排出続くし胃腸全体の膨張した感覚はそのまま。
鼻に刺された胃のドレーン、尿道のカテーテル、点滴、小型の心電図モニター、それから背中に刺された「痛み止め」のチューブとその小型容器。これらをぶら下げて、明日からは積極的に起き上がって病棟内を歩いて身体を動かして下さいと看護師の指示。可能な限り指示に従おうと思うものの、歩くところは限られており、廊下を歩いて談話室へ行き読書、スマホいじり、水のペットボトルを自販機で買うくらい。小用は尿道の管から排出されるからトイレには行かない。
1月8日(日)
午前中レントゲン撮影 《追記》これ以降、検査のための移動はすべて自力歩行。
執刀医の回診。経過は良好と。
これ以降、巡回の看護師に「お通じ」はあったか「ガス」は出たかと聞かれる日々。でもね、4日から何も食ってないから「お通じ」あるとしたらそれ以前の残存物。出ない。ガスも出ない。
胃のドレーンからの排出は徐々に減っている。「開通」したということか。胃腸の「張り」も少しずつ弱まる。
1月9日(月)
手術から3日目。経過良好とのことで鼻から胃に通されたドレーンのチューブを抜かれる。
背中に刺さった「痛み止め」の薬剤が終わったので、これも抜かれる。手術傷の痛みは感じない。
心電図モニターも外れた。超うれしい。あとは尿道のカテーテルと点滴のみ。
午後になって尿道の管も抜いた。いよいよ身体から出てるのは点滴のチューブのみとなる。
絶食は6日目。食べないこと自体はまるで苦にならない。これは意外なり。
身軽になったので病院1階にあるコンビニとユニクロで買い物。雑誌(Newtonとdanchy。文字が多いから時間潰せるだろうと)、爪切り、使い捨てのコップ、下着。
点滴のチューブだけになったので、夜はかなり眠れるようになる。
1月10日(火)
入院7日目。
レントゲン撮影。
午前中執刀医の回診。経過順調なので今夜から食事始めましょう。食事といっても最初は「重湯」など流動食からですけどねと。重湯でも流動食でも、とにかく機能回復しているということだからうれしい。食べられるということについて「うれしい」というのはそれほどでもなし。
夕食前の看護師の巡回で点滴のリンゲル液とチューブを外されて、針のみになる。あ、もういいんですかと言うと、口から食事が出来るということは点滴から栄養素を入れる必要がなくなったってことです。ただし発熱などがあったときのために針だけはしばらく残しておきますとのこと。針の刺さったところはネット包帯で保護。一気に自由の身になった気分。
奥さんから文庫本を1冊封書で送ったとメール。これはありがたい。先に差し入れてもらった本は読み終わってしまったところだった。すぐ読み始める。
薬剤師が来て、食事が始まったので入院前から飲んでいた降圧剤などについて当院薬局で処方したものを服用するように指示。退院まで継続とのこと。入院前に服用していた降圧剤は2種類の薬の「合剤」で当院薬局では処方していないので、2種類の薬を出しますと。
夕食。
重湯、味噌汁(汁のみ)、牛乳200ml、アイスクリーム。
アイスクリーム、うれしい(しかし退院までこれ1回だけだった)。食事の写真スマホで撮って奥さんと子どもたちに送る。全員アイスクリームに強く反応。
このぶんだと週明けには退院できるかもしれないと勝手に思う。
1月11日(水)
体重計に乗る。入院前に比べ6kg減。そりゃ何も食ってないんだからな。しかしショック。
朝食は重湯、味噌汁(汁のみ)、牛乳。アイスなくてがっかり。
レントゲン撮影。
シャワー室を看護師が予約してくれたのでコンビニへボディーソープを買いに行く。
回診で執刀医、順調なので次の食事から「五分粥」にしましょう。
点滴の針、抜かれる。身体に何も刺さってない。WOW !
14時、シャワー室で身体を洗う。3日夜以来だから8日ぶりの「風呂」。手術の「穴」3つを避けながら身体を洗う。
依然として胃腸の張りがあり「お通じ」はほとんどないし「ガス」もあまり出ない。でも、あとは退院を待つのみという気分になってきた。
昼食。五分粥、梅干し、ソフトサケあんかけ(鮭切り身のカタチに成形した練り物)、キャベツの肉味噌かけ(ドロドロ)、すまし汁(豆腐入り)。だいぶ食事っぽくなった。
夕食。五分粥、梅干し、ソフトトリニク野菜あんかけ(鶏ムネ肉のカタチに成形した練り物)、白菜のお浸し。味噌汁(玉ねぎ)、牛乳。
1月12日(木)
朝食。五分粥、梅びしお(小パック入り)、はんぺん煮付け、つぶし金時豆(ペースト状)、牛乳。
レントゲン撮影。採血。
執刀医が来て傷口を点検。レントゲンも血液検査も良好なので、もう退院しても大丈夫と言われる。じゃあ明日朝退院でお願いします! 食事もお昼から全粥に。
昼食。全粥、筑前煮、酢の物(シラスと白菜)、フルーツカクテル、かき玉汁、梅干し。
薬剤師が来て退院後の内服薬について説明される。もともと飲んでいた薬は退院と同時に再開すること。別途胃薬を3日分処方するので、これは飲み切って終わりにして下さい。
夕食。全粥、あじのソテー(成形品でなくモノホンの鯵、骨抜き)、サラダ(フレンチドレッシングの小パック付き)、かぶ煮物、バナナ1本、肉入り野菜スープ、梅干し
荷物をまとめる(大したモノはない)。
1月13日(金)
検査なし。
朝食。全粥、海苔佃煮、炒り卵あんかけ、ゆば入り青梗菜炒め、味噌汁(玉ねぎ)、牛乳
病棟の事務の人から退院手続きの説明。救急搬送時、かかりつけ病院から渡ったCTのデータCD-Rを返される。
10時。着替えてから病院1階の会計窓口で精算。領収証を持って病棟に引き返し入院患者のリストバンドを切ってもらう。
10時15分。病院正面玄関からタクシーに乗る。約5分で自宅前に到着(そのくらい近い)。道路を歩くとフラつく。このフラつきはその後2日間残った。
*退院後の日常生活復帰についてはあらためて