神はどーだっていいとこに宿る


by god-zi-lla

この2か月で読んだ本の備忘録20241208-20250206_d0027243_10505250.jpg



京都はいちめんの雪景色って金閣寺の写真を添えてニュースが伝えてる。
しかしこれホントに今日の写真なのってくらい年年歳歳変わらない定番写真よね。まあいいんですけど。

で東京は寒いけど快晴なり。


唐突ですいませんけど、おれも来年はコキだ。いや子機、いやいや呼気、いやいやいや古稀だって。

あ、もしかして今年が古稀なのか? ホントだったら数え年でカウントすんのか?

どっちにせよジジイはジジイだ。誤差範囲。


きのう2月7日、日比谷で《》を見てきた。怖いけど面白い。他人事のようで他人事でない感じ。

おれはまだまだ若いモンには負けないなんてことは鼻毛の先っぽほども思ったことないし、まだまだやりたいことがあるとも思わないし(つか、昔から思ったことがほとんどない)、長生きしたいともとくに思ってないし、まあ毎日そこそこに生きて、そのうち死ぬべき時期が来たら死ぬんだろうって、まあそういうのは「思う」ってんじゃなく、「なーんも思ってない」の範疇だろうけどな。

だけどまあ「死ぬ」ってことについて、以前より思いを致すことがすごく増えてるのは間違いない。正直いって、おれのようなテキトーなヤツでもそんなことを思うようになるんだなーなんてボンヤリ思ったりして、ようするにそれが「老い」ってもんでもあるんだろうな。

なんつて。


おれんとこの父親は本人の希望どおり自宅で死んだ。最期のとき、同居している弟が主治医の訪問診療医に来てもらって臨終を確認した。自宅で起き上がれなくなってから2週間後のことだった。

そんなことで、上の写真の本もまた他人事のようで他人事でない感じ。

もともと奥さんが図書館から借りて読んでた本で、これは面白いから読んでみたらと勧められた。そこで奥さんが返却したあと、あらためて自分の名前で借り直して読んだ。奥さんはこの本の仕事のために読んだのかもしれないんだけど、そういうことを抜きにしてこれは非常に考えさせられる本だと言ってたのだった。


おれんとこの父親は寝付いて1週間めくらいから、死を迎えるための医療を訪問診療医に施してもらい、まさに朽ち果てるように亡くなった。だけどそういう医療行為は「病棟の医師」には理解され難く、病院のなかで医師の仕事は命を長らえることであって、そのような行為は医師の「倫理」に反するものと往々にして決めつけられてしまうと著者は言う。

手厚い医療を受けることで、シアワセな「死」を迎えられるとは限らない。自分の思うように「死を生きる」のはなかなか難しい。



つうわけでこのふた月、最後に読んだこの小堀鷗一郎著《死を生きる》が読後の印象を総取り。ほんとは高野秀行《イラク水滸伝》で行こうかと思ってたんだけど、自分の日常と直結してるような本には勝てない。でも高野秀行というひともすごいと思うよホント。書名が毎度毎度フザけたようだから、それで少なからず損してると思うんだけどね。

以下、読了順。


「役に立たない」研究の未来 初田哲男・大隅良典・隠岐さや香/著 ナビゲーター/柴藤亮介(柏書房)12/8図
イラク水滸伝 高野秀行(文藝春秋)12/16虎ノ門書房本店
花の命はノー・フューチャー ブレイディみかこ(ちくま文庫)12/22三省堂池袋店
鈴木邦男の愛国問答 鈴木邦男(集英社新書)12/23三省堂有楽町店
ページをめくるとジャズが聞こえる 村井康司《ジャズと文学》の評論集 村井康司(シンコーミュージック)12/29図
夜哭烏 羽州ぼろ鳶組2 今村翔吾(祥伝社文庫)12/30紀伊國屋WS
芸者と遊び 日本的サロン文化の盛衰 田中優子(角川文庫)1/7紀伊國屋WS
人間の土地 サン=テグジュペリ/堀口大學・訳(新潮文庫)1/12借り本
雨月物語 上田秋成/円城塔・訳(河出文庫 古典新訳コレクション)1/20浜書房
歌舞伎の中の日本 松井今朝子(集英社文庫)1/28紀伊國屋WS
よりみち部落問題 角岡伸彦(ちくまプリマー新書)1/30三省堂池袋店
死を生きる 訪問診療医がみた709人の生老病死 小堀鷗一郎(朝日新聞出版)2/6図



今村翔吾《夜哭鳥》は羽州ぼろ鳶組シリーズの2作目。1作目を面白く読んだので2作目を手に取った。まだシリーズは続いてるが、正直2冊でもう飽きた。3冊めを読むとしても当分先のことだな。池波正太郎《剣客商売》なんかのようにシリーズ全巻貪り読み続けるってことにはなりそうにない。

円城塔の現代語訳の《雨月物語》は平易かつ格調高く、さらに円城塔らしい「手口」もあって見事なもんである。いやー面白いんだねえ、雨月物語。








# by god-zi-lla | 2025-02-08 23:12 | 本はココロのゴハンかも | Comments(0)

レコードでも聴くかと棚をガサゴソやってたら_d0027243_16093615.jpg



このレコードなんである。

マリー=テレーズ・フルノーのピアノでドビュッシーの〈ベルガマスク組曲〉、フォーレの〈舟歌3番&8番〉それからラヴェルの〈ソナチネ〉が演奏されてる。1957年の録音。

これがとってもいいんだ。うまく言えないけど、折り目正しくて優しい表情だけども、カドが丸まってるというわけじゃない。エキセントリックなところは微塵もないんだけどしっかりと記憶に残る演奏。

あーダメだ。やっぱウマく言えない。

ひょっとしてジャケット写真の、閨秀ピアニストなんつう「死語」を思い出させるような雰囲気に引きずられてるとこがあるかもしれんけど、それだけってことはありえない。


で、ぢつはこのレコード。うちの棚にたぶん10年くらい(いや、もっとか)前から刺さったままだったのだった。それを今ごろになって思い出した、いやいや思い出したんじゃないんだ。半月くらい前、なんかピアノのレコードでも聴くかと思って棚を眺めてるうちに、あれ? なんだっけこのレコード、と目に止まったんだよ。

それから今日まで、もう何度も繰り返し聴いてる。なんかこう、ちょっと古めかしくもモノラルらしい奥行き感のある「音」に惹かれてるってのもきっとある(オーディオ的な『高音質』っていうんではない)。



だけどこのレコードはいつどこで手に入れたんだっけか。まるで記憶がない。そのくせ買ったわけじゃないってことだけは、なぜかキッパリ断言できる気がする。なんでだ? ひょっとしてこういうのをマダラボケつうのか。

じゃ、買ったんでなきゃなんなんだ。レコード屋でなにか別の買い物をしたとき「特典」でもらった? あるいは福引きとか? いやレコ屋のカウンターにガラガラがあるのなんて見たことない。なら三角クジ? もしかして知り合いに譲ってもらった? あとはなんだろ。イベントかなんかの「記念品」とか? オーディオのフェアでデモCDもらったことはあるけどレコードはなあ。

とにかく、記憶のカケラもない。

だからマリー=テレーズ・フルノーというピアニストについても、半月前に棚から引っこ抜いたあとネットで検索して知ったんでした。

【Marie-Thérèse Fourneau(マリー=テレーズ・フルノー)】 1927年生まれ。マルグリット・ロンに師事し華々しくデビューしたが多発性硬化症を発症しピアニストとしてのキャリアを断たれた。2000年没。

詳しいことは日本語ではヒットしないので外国語不如意なおれにはお手上げなり。

Discogsで検索するとLPのアルバムが2枚あった。そのうちの1枚がおれの手元にある盤らしい。このレコードの原盤は1957年リリースのフランス 'PACIFIC' レーベルだっていう(コレです)。へえ、オリジナルはけっこうなお値段で取り引きされてるんだな。

上の写真じゃよくわかんないでしょうが、うちにある盤のジャケットは厚紙PP貼りツヤツヤのひじょうに立派な造りで、こういう丁寧な仕事のジャケットは日本盤以外にはちょっと見当たらない。ディスク自体もけっこうな重量盤である。

ジャケット裏を見るとフランス語で収録曲と演奏者が書かれているほかには、 'NOT FOR SALE' の表記と 'MASTERING : HISAO NATSUME' とある下に日本語で〈※アナログ・マスター音源に起因するノイズが一部入ります〉と印刷されてるだけだ。レコード会社の名前もレーベル名もどこにもなく、ただ 'CLASSICS MO-1006' って番号だけが表示されてる。価格表示もない。日本語の注意書きとジャケットの造りからして日本盤なのは間違いないけど、こりゃどう見たって市場流通したレコードとは思えない。

Discogsに上がってるオリジナル盤の画像と見比べるとジャケット表側はオリジナルの複製のようだが裏面はまったく違う。マニア向けの復刻だったらジャケット裏面もラベル面も注意深くオリジナルを複製するでしょうから、そういう意図で作られたものじゃないことはほぼ間違いない。


どうもモヤのかかったような情報ばっかりなのでそのヒサオ・ナツメという名前を検索してみると、『サクラフォン』というフランスのピアニストによるSP盤の名演奏をCDに復刻するレーベルを主宰している『夏目久生』という人物の、どうやらことらしい。

が、このレコードのどこにもサクラフォンとかSAKURAPHONEなんていう表示はないし、サクラフォンレーベルの商品リストにもこのLPレコードは載ってない。このピアニストのSP録音のコンピレーションが1枚あるけど、それはこのレーベルの本業でしょうからね。


けっきょく、よくわからない。

どうしてこれがおれの手元にあるんでしょうか。




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知ってるひとがいたら教えてくださいませ。

これ、良いレコードです。


それにしてもマリー=テレーズ・フルノー、コンサートピアニストとしてのキャリアが断たれてからの人生はどんなだったんだろうか。

ALSで逝った友人のことを少し思い出す。






〈追記〉
このレコードの演奏自体はQobuzで聴ける。
LPからの板起こしのような気がするけどハイレゾ(24/96)です↓




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# by god-zi-lla | 2025-01-31 19:44 | 常用レコード絵日記 | Comments(0)

じょうずに頼る介護(ちょっと宣伝)_d0027243_08162864.jpg



奥さんが旧知の編集者仲間と書籍を企画して作った。


中身はタイトルとオビの惹句を見れば一目瞭然ですけど、ようするに親もさることながら自分自身のビョーキだ介護だっつうのも含め、厄介ごとを自分ひとりで抱え込んで窮地に陥らないよう、ヨノナカにある「使えるモンはなんでも使い倒せ」つう本なんである。

まあ、よくありげな実用書のようではあるんだが、書名の肩のところにある『54のリアル』ってのがクセ者なのだった。

そもそもの企画のはじまりが、奥さん自身の実体験である。奥さんの実体験だから同居する宿六はカンケーありません、なんてことはありえない。つか、むしろ「元凶」は宿六のほうにあったりするんである。

つまり、おれだな。あははは。

ようするに『54のリアル』はすべて実際にあった(あるいは進行中の)事例で、なにかを説明するために〈たとえばこんなときには〉的に作られた架空の事例じゃないんだ。

だからねえ、こういうこと言っちゃナンなんですけど、これがけっこう面白いんだ。あーこんなことがあるんだと感心したり、こういうふうになるとマジやばいな、みたいなのがたくさん出てくる。

そのなかにおれんちの「事例」も混じってるんだけども、そこはまあさすがにどこの誰のことなのか特定できるようなことは(ほかの項も含め)書いてない。ま、おれんちのことについちゃ日ごろ親しくさしてもらってるひとなら、あ、コレかもなと思い当たるかもしれないけどさ。

そして、その『54のリアル』のおのおのの当事者は、親の介護だの認知症だの、おひとりさまの相続問題だの入院手続きの身元保証人だの。はたまた親や自分のための老人施設選びだのなんだので、苦境に立たされたり困ったりしながら、なんとか乗り越える方法に辿り着いたケースもあれば、不幸にしてそうでないケースもあったりするので、面白くもありながら身につまされたり我が身を振り返ったりゾッとしたりするんである。

そして、そういう実際にあった事例に専門家が適宜アドバイスなりコメントなりしてるのが本書なり。行政にはどんなサービスがあるか。こういうとき法律はどうなってるのか。民間にも有料ながらこんな「使える」サービスもある云々。


奥さんがこんなことを言ってた。

行政には「グランドメニュー」がない。


なにか困ったことが起きて必要に迫られて必死に調べていくと、ホームページのすみっこのほうに出てたりする。だけど役所の担当セクションに聞いても「そういう困りごとなら、こういうのもありますよ」なんて担当外のことまではなかなか教えてくれない。だから一般市民は、必要なサービスがあっても容易にそこに辿り着くことができない(故意にそうしてあるのか、気が利かないだけなのかは不明)。

ファミレスのグランドメニューみたいのがあれば用が足りるのに、だ。

行政のサービスはその自治体によっていろいろ異なることが多いから、この本でも具体的に出てるわけじゃないけども、「グランドメニューはないが、何もないわけでもなく、意外と助かるサービスもある」ということを知ってるだけでもずいぶん違う。

とりあえずトシを取ってくると、この先ヤバそうなことがいくらでもある。そのヤバそうなことを、あらゆるテを使って対処して生き延びる。そのためには知っておく必要のある事柄は多い。今のうちに準備できることはしておけ。準備できなくても心構えだけでもしとけばずいぶん違ってくる。

そういうことの一助になる本です。

しかも面白いときたモンだ。



じょうずに頼る介護 〜54のリアルと21のアドバイス 
リボーンプロジェクト{編] 太田出版刊 定価1760円税込(ISBN 9784778340100)

全国の書店・ネット書店で絶賛発売中!(紀伊國屋書店Amazonならここで)

買って読んでみてね。
買うほどのこともないと思う人は図書館で借りて読んでちょ。
図書館にないばやいはリクエストして買ってもらって下さい。


ところで余談ですけど、奥さんはさる出版社で長年実用書を中心にたくさんの書籍・雑誌を作ってきたプロの編集者です。定年退職後体調を崩して現在恢復途上だけども、今回心身と仕事両方のリハビリを兼ねてこの本を仲間たちと作り出版にこぎつけた。

そしてじつは奥さんにとって、フリーの編集者として勤め先以外の出版社から刊行された、これが初めての本ということになったのでした。

それからですね。本書中「54のリアル」のなかに、あれ? この事例のここんとこって自分のことじゃね? ってのがあったとしても、それはたんなる偶然です。けっしてアタクシが奥さんにアナタのことをベラベラ喋ったなんてことはありません(たぶん)。

だから気にしないでね。





# by god-zi-lla | 2025-01-27 17:17 | 本はココロのゴハンかも | Comments(2)