神はどーだっていいとこに宿る


by god-zi-lla

おーなんてラウドなんだ素晴らしいぞ(Ellington, Mingus, Roach / MONEY JUNGLE)

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というような印象を、US盤のCD(BLUE NOTEレーベルのステレオ。90年ころプレス?)と国内盤LP(76年頃プレスのキング盤ステレオ)を聴いて長年にわたり抱いてたわけだけども、このたびオリジナル盤(mono)をやっとこさ手に入れて聴いてみたらこれがなんだか知らないけど違うじゃんかよ。

どうにもこうにも、まいりましたねこいつは。

A面冒頭タイトル曲の「Money Jungle」からもうミンガスが異様かつ暴力的な、ビートというよりパルスをエリントンのピアノにぶつけてきてるじゃんか。

たしかにCDでもキングのLPでもきこえてんだけどさ。きこえてんだけどバランスがぜーんぜん違ってんじゃないっすかこれってば。CDとキングのLPはどう聴いてもエリントン桃太郎にミンガス犬とローチ雉、いやそうじゃなくてエリントン三蔵法師にミンガス猪八戒とローチ沙悟浄かな。

よーするにまあ主従関係だわ完全な。

ところがさ。このモノラル・オリジナル盤、62年録音だからたぶんステレオからミックスダウンしてる「ステモノ」だろうけど、こっちで聴くとエリントンのピアノの音量にたいしてミンガスとローチの音がデカい。ようするにピアノとベースとドラムスが対等に近いのよな。

「Money Jungle」のミンガスのベースなんてモロ完全にフリーじゃないですか。4ビートなんか刻んでないでしょこれって。つか小節線そのものがないよ。ジャケットの写真みたくエリントンの背中を凶悪な目で睨みつけながら、ガガガガガガガガガ、ガガガガガガガガガって轟音を叩きつけててきてるじゃないですか。

エリントンもそのミンガスのベースに乗っかって、ものすごい気合いで鍵盤バシンバシンひっぱたいて、むしろどっちかっつうとローチのドラムスが辛うじてビートを維持して2人の掛け合いをマトモなジャズの世界に繋ぎ止めてるって感じじゃないのかね。

しかし2曲目の「LE FLEURS AFRICAINES」になるとローチもミンガスもさざ波になってエリントンのまわりを浮遊してる。んー。これもバランスがいままで聴いてたのと違うよなー。ローチとミンガスのさざ波感がよりリアルつうかさ。

えーとね。非常にビミョーなとこではあるんだけどオーディオ的「音質」でいうとどれがどうって一概にいえないつうかね。つかこのモノラルのオリジナル盤の音質は少なくとも高音質とはいえないんじゃないかね。ピアノのピーク潰れてるし、全体にドライにすぎる音色な気がするしさ。いわゆるこれはラウドカット的な音で、まあコトは単純じゃないから、だからいい音だとも、そうじゃないとも言い切ることもできないんだけどね。

ただこの三者のバランス。プロデューサーのアラン・ダグラスは、あるいはエリントンは、あるいはローチは、あるいはミンガスは、つまりここで記録された音楽のありようってのはこういう三者の関係なんだっつうことを、このオリジナル盤で聴けるバランスとして作った側が定着さしたと言っていいわけだよな普通。

このように聴いてほしいと思うカタチに商品化する。
それがプロデュースってもんだもんな。

それをさ。うんと時代が下ってから原盤制作に携わってもいない有象無象どもが「マスターテープからマスタリングするときに、削り取られてしまった音がある!」なんてリキみかえって「高音質リマスター」作ったりするのって、ひとつ間違うとトンでもないブツができちまうってことじゃねえのかね。

マスターテープに記録された情報から何かをそぎ落とすことによって、言い換えると情報量を減らすことによって表現しようとしたものだって場合によったらきっとある。もしそういうものがあったとしたら、そこで原盤制作者によって削り取られた情報を「再現」することってば、おおげさにいうと芸術の冒涜、もうすこし小さくしてしまえば一種の覗き趣味つかさ。

そんなことにもなりかねないんじゃないのかね。

だからさ。さいきんときどき話題になったりする「ラウドネス・ウォー」ですか。あれだってピカピカの出来立て音楽についてどーたらこーたらその音楽のファンでもないやつらが外野からヤジ飛ばすのは、おれは完全に余計なお節介だと思ってんだけどね。つか、まったくのヤジだろ。

そりゃあドナルド・フェイゲンがスティーリーダンの作品をラウドにリミックスされりゃイヤに決まってるでしょうけどさ。そりゃあスティーリーダンの音楽ってラウドじゃ意味ない音楽だもんよ。そんなことが許されるわけないじゃん。当たり前じゃんかそんなこと。

ただじゃあラウドな音楽そのものが意味ないっつーか存在意義ないっつーか、そんな乱暴な意見が正しいわきゃないんであってさ。そりゃあ自分の好き嫌いと正邪善悪を混同してるだけっつうか神様気取りの阿呆つうか。まあそんなもんだよな。

ラウドに、ダイナミックレンジ圧縮して音圧上げて、作り手がそうしたけりゃ、そうでなきゃ表現できないもんがあるってんだったら、それでいいじゃんか。逆にそういう音が聴きたいっつうリスナーがゴマンといて、それに合わせて売るためにそうするやつらがいるなら、それはそれでいいじゃんか。

で古い音源についていやあ。そこにラウドなオリジナルがあったとしたら、それはラウドに作る主観的な理由があったんだからそうしたんだと考えるほうが自然で、そこに原盤制作に携わってない人間があたかも「客観的な正しさ」を装った勝手な解釈を付け加えるなんてトンマなマネは、おれは金輪際しないほうがブナンだと思うんだけどさ。

ラウドなオリジナルをラウドじゃなくリマスターするのも、ラウドじゃないオリジナルをラウドにリマスターするのもどっちもな。

〈MONEY JUNGLE〉のこのモノ・オリジナル盤の音も相当にラウドだぜ。キングのLPやCDのほうがよっぽど普通な音だと、おれには思えるんだけどさ。ただじゃあ、こうやって聴きくらべてみると、どっちがこの音楽の本質かっつうとミンガスのベースがばばばんと張り出したオリジナル盤じゃかろうかと思うんだけどね。それはまあラウドかどうかとはまた別の問題だけどさ。

LPもCDも再発音源のほうはどうも「巨匠デューク・エリントン」を全面に出しすぎてんじゃないかと思うんだよな。ただどうもこのオリジナル盤を聴いてみるとこの3人は真っ正面からガチンコ勝負に入ってるっつーか「だれもやってないことやってやろう」つー感じだし、アラン・ダグラスもそういう音楽としてレコードに定着させようとしてたんじゃないすか。

また書かずもがななこと書いたですかね。

しかし〈MONEY JUNGLE〉。
ステレオのオリジナル盤はどーゆー音なんでしょうかしらね。
あるいは最新流通してるCDはどういうバランスでリマスターされてんでしょうか。

やっぱ買って聴いてみるしかないでしょうかね。
Commented by 大天使心得 at 2009-10-20 10:23 x
そーそー、ご自分で身銭切って買ってちゃんと音聞いてから腹立てて金返せと言いましょうね。みんな必然的な音表現だと思えれば、ブーたれたりしないのですね。こりゃ破壊じゃん、とおもうからぶーたれるわけです。ちなみにメタリカなんかとてもさわやかで好適だと思います。波形を見るとほとんど隙間がない海苔状態だそうです。
Commented by 大天使心得 at 2009-10-20 10:40 x
ちなみに嶋護さんが「ラウドネス」という言葉を使ったので、そのまま来ていますが、現状は精確に言うとマキシマイズウオーです。ダイナミックレンジは問題外だし、音が大きい=ラウドであることとも違います。とにかくご自分で聞いて、どれだけ音が破壊されているか確認してください。おしまい。
Commented by god-zi-lla at 2009-10-20 11:51
というか、ようするにモトの制作者の意図にないことをリマスタリングの際にするのはマズいだろと思うだけで、場合によっちゃコンプレッサとリミッタかけまくりでマスタリングされたオリジナルに対して、部外者が制作者の意図と関係なくコンプレッサもリミッタも外して「音の良い」リマスターを作ったとしたら、それも「破壊」じゃあるまいかと思うわけです。

ちなみに〈MONEY JUNGLE〉のステレオ・オリジナル盤や現行流通盤のCDで確かめてみたいのは、たまたまモノ・オリジナル盤だけ各楽器のバランスが違っちゃってるのかどうかってとこです。

でも、たまたまであれ意図どおりであれ、このミンガスがガンガンくるモノ盤はすごく気に入っちゃったんですよね。このレコードの本質がようやく見えたというか、そんな感じで。
Commented by 大天使心得 at 2009-10-20 16:03 x
オリジナル性を尊重するという点などについては基本的に同意見です。しかし、それと今回のラウドな盤を気に入ってしまった、ということとは別の事柄として捉えるべきかと思います。
その盤がラウドだから、「さいきんときどき話題になったりする「ラウドネス・ウォー」ですか。あれだってピカピカの出来立て音楽についてどーたらこーたらその音楽のファンでもないやつらが外野からヤジ飛ばすのは、おれは完全に余計なお節介だと思ってんだけどね。つか、まったくのヤジだろ。」とマキシマイズが正当化されるかのような表現は実際の音をご存じないから言えるお話だと理解しました。波形が海苔のようにずっと鳴り続けているのは、もう歪みの塊の音です。
J-Popでも良い音楽は沢山あるのですが、CDでは買えない。買うと歪みだらけの音で、やたらとやかましく是は音楽を損なっているとしか言い様のないものが大部分です。勿論、そういうノイジーな表現を旨とするミュージシャンならその人の勝手ですが、問題は全てがこういう方向に行っている、という事です。それを感じない、どちらでも良い、というならノーサイドです。
Commented by mono-mono at 2009-10-20 22:25 x
[MONEY JUNGLE]はオリジナル欲しいリストに載っけて以来虎視眈々と狙い続けておりますがいまだ叶いません(泣)
そうかァ、ラウドで素晴らしいのかァ。
そりゃ自分で聴いてみるしかないっすよね。
まいったな。
一段と欲しくなってしまいました。
ハァ〜、いいなァ(笑)

ジャケも良いカンジの色と質感っすね。
しかも極美!
ク〜。
Commented by ノイ at 2009-10-20 22:49 x
ビートルズのリマスターを聴いて全く同じ感想を持ちました。
テープの音を忠実にだって んなもん面白くもなんともないんです
かのペーパーバック・ライターだって、リマスター聴くと
激烈ラウドなシングルのおバカさのカケラもありゃしません
J-POPのツブレアンパンな音はもちろんイヤですけど 
生テープのノペーっとしたリマスターもつまんないもんですよ
Commented by 大天使心得 at 2009-10-21 01:50 x
>J-POPのツブレアンパンな音はもちろんイヤですけど 
生テープのノペーっとしたリマスターもつまんないもんですよ

わはは、ツブレアンパンね。鬼コンプリのことですね。ノイさん久しぶりです。まあ、これはこれとして、所詮は遊びですからどちらさんもてーげーでいいんですが、でもきゃつら同じネタで何回儲けるんでしょうね。ビートルズとかストーンズなんかはマスターデータって絶対に出てこない気がしますね。
Commented by god-zi-lla at 2009-10-21 11:30
>ノイさん。
ノイさんが少し前に書いてた「アナログ盤はそのマスターを使ってカッティング・エンジニアが「気合い」を入れたもの」つう、その「気合い」って表現がズバリだよなあと、ヒザを叩いて喜んでしまいました。

息子がノートPCで聴いてるJ-POPを聴くともなくしょっちゅう聴いてますが、よーするにPCの内蔵スピーカーとかケータイとか、そんなモンで聴いちゃえば何を聴こうがおんなじっつうか、ぐしゃっと潰してあったほうがブナンに聞こえるってのはよくわかりますね。

アムロの〈BEST FICTION〉なんかは自分でも(自分のオーディオで)よく聴きますけど、あれなんかになるとPVの映像があるのが前提の音だって感じですね。DVD見て聴いてたほうがだんぜんかっちょよくて楽しいもんね。

あ、それはまた別か(笑
Commented by god-zi-lla at 2009-10-21 11:31
> mono-monoさん。
ジャケットのマットな紙がいいっすよー。うしろに写ってる国内盤の階調の飛んでしまったジャケ写真も大違い。
でも丁寧に扱わないと自分がオーナーの間にダメにしそうで恐い紙質です(笑

音はハッキリ言ってエリントンのピアノが歪んでます(爆
でもミンガスのベースの迫力といったらもう!!

この暴力的なベース聴いてると、かつてメンバーをぶん殴ったなんてことは当たり前な気がしてきますね。

でも、こうなったらステレオ版も欲しいっす(笑
Commented by ihiga at 2009-10-27 12:31 x
god-zi-lla さん、

僕は、Money Jungleの2002年発売のCDを持っています。当地では、これが最新盤なのですが日本ではHQCD盤などというのがでているみたいですね。
2002年盤のには、3トラックのオリジナルマスターテープからリミックス/リマスターと書かれています。ピアノの音の方が大きく中心で、右にドラム、左にベースとといった感じですが、家のシスデムでは割と自然に聞こえます。ピアノの音は歪んでおり、お世辞にも音がいいとはいえず、迫力があるとも思いません。僕も気に入ったレコードは違うプレスを見つけるとついつい買ってしまう方なのですが、これに関しては、多分お持ちのオリジナルのモノ盤が一番いいのでは?(笑)

当地で最初のスティーリー・ダンのレコードがCD化された際に、レコード会社がマスターを間違えてプレスしたという事件があったようで、リマスター盤が発売された際には、アーチスト監修というシールが貼られて売り出されていました。
Commented by god-zi-lla at 2009-10-27 13:07
> ihigaさん。

もしかするとオリジナル盤でもステレオバージョンはピアノ中心の音量になってるのかもしれませんね。
モノ用にミックスダウンするときに、モノラルで埋もれないようにベースとドラムの音量を上げたっていうようなことが、もしかしてあるのかも。

どっちにしてもピアノが歪んでいるのは、きっとエリントンが力任せにぶっ叩いたせいですね(笑
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by god-zi-lla | 2009-10-20 09:48 | 常用レコード絵日記 | Comments(11)