神はどーだっていいとこに宿る


by god-zi-lla

父さん?(The WILD Sound of New Orleans by TOUSAN)

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雨がしとしとしとしとずうーっと降ってて、なんだか冷える晩だねえ。
凍った雨の降る鵯越の火葬場から底冷えのする京都に寄って、東京に帰ってきたらやっぱりこんな天気でさ。そのせいなのか元気がいまひとつ出ないんだよな。

しかしまああれですわ。こういう日は晩メシにナベでもこしらえて気合い入れてあったまるにかぎります。そうだそうだ。きょうはナベにしよっと。って、しかしほとんど毎晩そんな調子だもんなー。いやまったくいくらレパートリーが広くったってもうネタ切れですよホント。

なので今夜はちょっと新機軸。
構想5分。買い物30分。調理90分。あらあらかしこ。
じゃなくってね。

さいきん買ったレコードってわけじゃないんだけどね。
さいきんになって素性つか来歴がちょっとわかったんです。
買ったのは去年の夏、いやもう少し前だったかな。
もしかしたらおととしだったかもしんない。

内袋はブーブー紙です。
いまどきそんな言い方だれもせんて。

アラン・トゥーサン若かりしころのレコードなんだけども眉にツバつけつつ買いました。
だってほらスペルがおかしいじゃんか。ジャケット見てくださいな。
TOUSAN

になってるでしょ。しかしホントは。
TOUSSAINT

えーここに写ってるCDのタイトルんとこ見てご確認されたし。
ふつうここまで大胆にアルバムタイトルのなかに入ってるミュージシャンのスペル間違えるってことないだろ。だからもしかしたら同じニューオーリンズにいる「トゥーサン」て別人のアルバムかもしれんなーと思ってたりしてさ。

だってジャケットの写真見比べたってさ。この50年の歳月を隔てた2枚のポートレートの人物がおんなじ人だって断言できますかい旦那。うーん。ちょっとなー。外人だからなおさらわからんもんなー。でしょ。

おれは実物のご尊顔も拝しましたけどCDに写ってんのが本人だってことっきゃわかんない。

「トゥーサン」て日本人でいえばサイトウさんみたいな人でさ。
斉藤さん
斎藤さん
齋藤さん
齊藤さん
西藤さん
西東さん

字はちがくても読みは一緒で別人。みたいな。

いやーニューオーリンズにはありげな苗字なんだよねー、なんてそんなことありますか。

聴いてみてもね。あーこれは間違いなく若いころのアラン・トゥーサンだよなあっつうところまでわかりません。歌ってくれてればまだわかるかもしれないんだけどね。柔らかい声だしさ。でもこのレコードではいっさい歌ってません。ピアノ弾くのみ。

非常に達者ではあるんだけどね。ピアノ。でもこのなんというか現在の非常に引き出しの数が多い、ありとあらゆる音楽にこの人は精通してるんでないかという底知れなさっつうのは当然ながらないんだよな。そりゃそうだよ。このレコードたぶんまだハタチになるかならんかくらいでしょ。

この年齢にしちゃあ見事なピアノではあるんだけど、いわゆるひとつのニューオーリンズのブルーズつうか。年代的にややロックンロールがかってきてるものの、しかしあくまでもたんなるニューオーリンズのブルーズという感じなのね。

聴いても同一人物だと確信できません。

そしたらせんだってんだ「レコーディング・スタジオの伝説 〜20世紀の名曲が生まれた場所」(ジム・コーガン、ウイリアム・クラーク/著、奥田祐士/訳)つう本よ。この本の108ページから始まるニューオーリンズの伝説的スタジオ、J&M コジモズ・ファクトリーの章。

あひょー。いきなりこの章のトビラの写真がこのジャケット写真と同じ上着に同じネクタイのアラン・トゥーサン青年じゃんかよ。おんなじセッションの写真に間違いないねこいつは。わははは。やっぱなー。はいはいはいはい。そうだったんかそうだったんか。いやいやいやいや。って意味不明なリアクション思わずしちゃったもんなー。

で本文にはこんなことが書いてあります。
… 1958年、RCAはJ&Mでオーディションを開き、コジモはトゥーサンに、タレント候補たちの伴奏を依頼する。参加者の列は、ブロックをぐるりと取り囲んだ。3日間にわたるオーディションの末に、契約を勝ち取ったのはたったひとり——ピアノ奏者だけだった。RCAはすぐさま、アル・トゥーサン(Tousan)名義のアルバム『The Wild Sound of New Orleans(ザ・ワイルド・サウンド・オヴ・ニューオーリンズ)』("Toussaint"という綴りはあまりになじみにくい、とRCAの重役たちは考えたのだ)をリリースする。現在でこそコレクター垂涎のレア・アイテムとなっているものの、当時の売り上げは芳しくなかった。…

え、コレクター垂涎のレア・アイテム? 売れ残ってたんですけどこれってば。
いやそれはともかくとしてだな。

けど乱暴なことするなあ。読みにくいから勝手にスペルいじってんだもんなー。フランス風のスペルだからご先祖様はクレオール系だったんでしょうかしらね。でも他人様の名前勝手にいじくっちゃいけません。

いやしかしそういうことだったわけか。
ようするにこいつはアラン・トゥーサンのデビューアルバムなわけだったんだ。

まあ、ありげなサクセスストーリーってばそれまでですけども、なかなか興味深いエピソードではありますね。なんか後年のトゥーサンの活躍をそのまんま「予告」してしまってるつうかね。そんな感じだよな。

それにしてもこの本は面白いよ。
たくさんのスターやヒット曲を生んだ伝説のスタジオとそのエンジニアや経営者について書かれた一種の「列伝」本なんだけどね。まあここいらへんのことに詳しい人にはとくに目新しい話はないのかもしんないけど、おれらみたいなアメリカのポップミュージック好きのシロートが読めばすごく楽しい本なんです。

もしかすると、このアラン・トゥーサンのデビューアルバムよりかずっと楽しかったりしてね。
本とレコードくらべちゃいけないけどさ。この本の引き出しの数が今のアラン・トゥーサン並みだもんだからさ。やっぱね。そういう面白さってのはそうそうあるもんじゃありません。

つことで、オマケのレーベル写真どうぞ。
父さん?(The WILD Sound of New Orleans by TOUSAN)_d0027243_18201982.jpg

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by god-zi-lla | 2010-02-15 18:21 | 常用レコード絵日記 | Comments(0)