徳用手書きRVG
2012年 04月 28日
1950年代の古いレコードをターンテーブルに乗せて、音楽が終わって針がいちばん内側のミゾまでいったのをそのままにしておくと、針のついたピックアップアームはそのミゾとその一つ外側のミゾのあいだを行ったり来たりせわしなく右往左往し続ける。
それ以降のレコードはそんなふうにはならなくて、ただ最後のミゾをいっけん静止しているかのごとく回り続けてるだけです。どうして最初はそうで、のちにそうでなくなったんだろうか。
理由を知りたい気もして調べればすぐにもわかりそうではあるけど、べつに知らなくてもいいかなという気もするのでとくに調べたこともない。
ただ、あれをぼんやり、なんとなく見てるのは楽しい。
ときに、たいして古くもないレコードのはずなのに買ってきて針を降ろすとそうやってピックアップが忙しく右往左往するレコードがあって、よくよく見てみればこの手のレコードが録音されたのは40年代や50年代だったりと新しいわけではない。
こういうレコードというのは古い時代にカッティングされたマスターをそのまま使い続けてプレスしてるレコードなんだってことに、あるとき気がついた。
しかもたぶん、大なり小なりヒットしたレコードだったりすれば1枚のマスターから何枚も何枚も実際にレコードをプレスするスタンパーを作るわけにはいかないで、その寿命が来るまえにマスターテープから新たにマスターを切って増産することになるんだろう。
そうすると50年代の右往左往する最終ミゾのあるレコードも年を経るにつれて新しいマスターによるスタンパーで作られるようになって、いつのまにか右往左往しない最終ミゾのあるレコードに取って代わられてしまうにちがいない。
してみるとそう古いわけでもない、せいぜい古くても65年くらい以後にプレスされたに違いないレコードなのに右往左往のミゾのあるレコードっていうのは、つまるところ短期間に大量に生産されたことのないレコードだってことになるんだろうな。
だけど、これはずっと後になって、そういうレコードをどこをどう巡り巡ってきたものか中古レコードとして買い求めるおれたちにとっては、ちょっとうれしいプレゼントのようなものではあるわけです。
なにせ、そう古いオリジナル盤なんてもんじゃないわけだから、そんなに高いわけはない。
それなのに、古いスタンパーを使ってるから音のほうはそうそうオリジナル盤より劣るわけでもない。
数日前にたまたま下の3枚を出して聴いてたら、珍しく揃いも揃ってそういう盤だったもんだから写真撮って並べてみたんだけど、3枚ともいわゆる手書きRVGの彫り物がデッドワックスにあるヴァン・ゲルダーのマスタリングによるレコードです(もちろん買ったときにはどれもそういう盤だと確認して買ってますけど)。
左とまん中はどちらもモトはSPという古い音源のマイルスとモンクだけど、どっちも60年代後半ぎりぎり70年代には入らないだろうくらいのプレス。右は大名盤サキソフォン・コロッサスのオランダ盤でUS盤でいうとサードプレスと同じスタンパーらしいやはり60年代なかごろのレコード。
それがどれも最後に右往左往します(笑)
なんか、うれしい。
なんたって良い音が安いんですから。
まあ、それだけの話です。
「せわしなく右往左往し続ける」レコードがあることは知っていてもそれが古いカッティングのマスターだとは認識していませんでした。
なるほど、古い勉強になりました。
しかし一枚のレコードをとことん楽しんでますね!
なるほど、古い勉強になりました。
しかし一枚のレコードをとことん楽しんでますね!
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god-zi-lla at 2012-04-29 23:19
mono-monoさん、じつは子どものころウチにあった10インチのレコード、もしかしたらあれはSPだったのかもしれないですが、松田トシさんが歌っている童謡のレコードとかが、やっぱり最後に右往左往して(笑)、それが子どもゴコロに深く刻み込まれてるんです。
ほとんど自分のレコードについての原風景みたいなものです。
だからなんといいますか、最初に聴くものよりも見るものとしてレコードを認識してしまったところに、なにか自分にとっての不幸のミナモトが(笑)
ほとんど自分のレコードについての原風景みたいなものです。
だからなんといいますか、最初に聴くものよりも見るものとしてレコードを認識してしまったところに、なにか自分にとっての不幸のミナモトが(笑)
by god-zi-lla
| 2012-04-28 21:10
| 常用レコード絵日記
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Comments(2)