神はどーだっていいとこに宿る


by god-zi-lla

梅干し

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べつに梅干しが大好きなんでことはぜんぜんない。
だからもちろん梅干しを自分で漬けようなんて思ったこともありません。

なのにこのところ梅干しを切らさないようにしてるのは朝メシの残りゴハンをおむすびにするためで、ほとんどそのためだけにときどき近所のスーパーで買って常備してるようなもんだから、この梅干しを入れた器が食卓に乗っかるなんてことはほとんどない。

これは、なんの変哲もない、たんなる梅干しです。

近所のスーパーを覗いてみると梅干しってのはそれなりに人気のある食い物で、たいがい漬け物コーナーの隣りかなんかにちゃんと梅干しの指定席がある。そこにはけっこうな種類の梅干しが粒の大小、お値段の高低、それに色もいろいろに並んでるわけだ。おれみたいな梅干しが好きでもなんでもないヤツからしてみると、おー世の中には梅干し愛好者って意外と多いんだなとちょっとびっくりしたりもする。

しかしね。いろいろ見渡してみるとこれがほとんど全部なんか変哲があって、たんなる梅干しなんかじゃなかったっつうか、むしろオレをたんなる梅干しだなんて見くびってんじゃねーぞ的にどれもこれも、おれが考えてた「たんなる梅干し」とは違ってた。

いや、梅干しってば梅に塩に、せいぜいまあ赤紫蘇くらいが原材料だと思ってたんだよな。

容器を裏返して表示を見てみると昆布が入ってたり鰹節が入ってたりっていうのはけっこう当たり前で、なかには蜂蜜が入ってたりするのもあるんだな。まあようするに梅干しになんやらかんやらウマ味を加えて付加価値つけたいってことでもあるんでしょうけど、さらにたいがいのやつにアミノ酸だとか還元水飴だとかステビアみたいな人工甘味料とか、そういうのがいくつも並んでる。

そうじゃないやつのほうが圧倒的に少ない。
ヘタすると、そうじゃないやつはなかったりする。

んー、おれそんなに気張っておいしくしたヤツはいらないんだけどな。
ふつうにすっぱくてしょっぱくて、あとはとくに梅干しに求めない。

じつは写真のやつはスーパーに並んでる梅干しのなかではいちばん安くて、まあ多分そんなに上等の梅を使ってるわけじゃないんだろうってのはよくわかる。紀州南高梅とかああいうブランドのやつにくらべたら見かけからしてうんと貧相だしさ。

だけどね、原材料んとこに「梅、塩」としか表示されてないのはこれだけだった。
これよりずっと値段が高くて見かけもリッパな梅干しも全部、そのとき売り場にあったほかの梅干しの容器を片っ端からひっくり返して見てみたんだけど全部が全部に鰹節とか昆布以外にアミノ酸とか還元水飴とかっていう、まあなんとなく人工物っぽい調味料あるいは添加物までが入ってんですね。

んー、そんなにまでして梅干しを「ウマいもん」にしたいのか。
すっぱくてしょっぱいだけの梅干しではなぜイカンのか。

つか、たんにすっぱくてしょっぱい梅干しをウマいと思わんのだったら、べつに世の中のひとはそんなに梅干しってやつが好きってわけでもないんじゃないかなんて、ふと思ったりもした。

まあ健康最優先でイマドキあんまりしょっぱい梅干しってのも敬遠されるんでしょうから、そのかわりにいろんな味つけて食べてもらわないといけないっつう理屈もあるんだろうけどさ。

それもそうなんだけど、なんというかこうフクザツな味覚っていうのか旨味っていうのか、いろんな食い物にそういうものを追っかけすぎなんじゃないかって気がしないわけじゃないんだけど、どうなんですかね。ようするに梅干しがすっぱくてしょっぱいだけじゃ単純で飽き足らないというかさ。

話は違いますが、ぬか床にときどき新しい煎り糠と塩をつぎ足すんだけど、この煎り糠を近所のスーパーに買いに行くと今度は「たんなる煎り糠」つうのがなかなかなくて、あるのは煎り糠になんだかいろんなウマ味の出そうな混ぜモノをした「ぬか漬けの素」みたいのばっかりなんだよ。

そういうのでぬか漬けするときっとウマいんだろうな、とは思う。
それはべつにあえて否定しません。

ウチのぬか床に埋まってるのは煎り糠と塩とトウガラシだけです。
だからそんなにウマ味なんか出てません。

おれはぬか漬けは、おー、なんかこのキュウリすっぺー! とか。
セロリは浅漬かりのこのへんの薄味がいいんだよなー! とか。
ニンジンはやっぱこのぱりぱり感がいいんだよなー! とか。

そういうのを食いたいから、あんまりウマ味があってもかえって困ったりする。

なんていうのかそういう単純なすっぱいとかしょっぱいとか甘いとか辛いとか、そういうなんでもない味みたいのがわりかし軽んじられてるっていうのか嘲られてるっていうのか、そこまで言うと言い過ぎでしょうけど、なんかそんな気がして仕方ないんだけど。どうなんでしょうね。

もしかしたら、たんにおれが年とってきて味覚に変化が生じてきたってことかとも思う。これも一種の老化っていうかね。きっとそれもあるんだろうな。

だけど、そればっかでもないような気がしてるんだよな。
ちかごろの日本人はやや過度にウマ味を求めてるんじゃないか。
口が奢りすぎというか、もう一種の頽廃と呼んでもいいんじゃないか。

まあ、たかがスーパーの梅干しひとつでそこまで言うこともないな。
Commented by yayoishibainu at 2012-08-20 18:08 x
同感します。

素朴な味覚
今は、とても贅沢なのですね。
それは、価格とは無縁の

我家は、精米機のおかげで
新鮮な糠が、生じます。

糠漬けの足しに用いておりますよ。
精米具合の調整にて
糠の量も調整し。。。
 
瓜 胡瓜 茄子 
乳酸発酵の不思議
夏の味覚

お酒が、進みますよ。

Commented by mono-mono at 2012-08-20 20:45 x
実は少し前から梅干しの記事を書こうと思っていたのです。
なのでタイトルと写真に、個人的にちょっとビックリしました。
関係ないですね、すいません(笑)。
でも乞うご期待、なんて。

そうなんですよね、梅干しって甘いのとか多いんですよね。
一方で「梅、塩」だけという潔い梅干しがちゃんと売ってて、それを探して買うgod-zi-llaさん、格好良いっす。
この梅干しの見た目も大変に好感が持てます。
色もかたちも趣も、とっても梅干しらしい梅干しに見えます。

「ちかごろの日本人はやや過度にウマ味を求めてるんじゃないか」
ウ〜ン、なるほど。
「一種の頽廃」
いろいろ考えさせられます。
Commented by god-zi-lla at 2012-08-21 06:18
yayoishibainuさん

> それは、価格とは無縁の

そうなんですよ。どうも、いろんな混ぜモノが入ったやつのほうが梅干しにかぎらず「高級」な場合が多いようです。

手が込んだもののほうが「洗練」されて高級ということなんでしょうか。

> 瓜 胡瓜 茄子 
> 乳酸発酵の不思議
> 夏の味覚

まったくまったく!
乳酸発酵そのものの味以外に、いったい何がいるんだろうかと思いますね。
それ以外のウマ味は、自分にとっては暑苦しい存在です。


Commented by god-zi-lla at 2012-08-21 06:25
mono-monoさん
長いヴァカンスかあ、いいなあ。と思ってたらご多忙だったんですね。
失礼しました。

トシのせいか、最近は「洗練された」ものとか「手の込んだ」ものとかというのに、だんだん心惹かれなくなってきてる気がします。で、ぎゃくにシンプルなもの。食い物だったらひとつの味がするもの、いろんな味が渾然一体となったようなものじゃなくて。

レコードだったらSTEREOじゃなくてMONO。
いや、それはちょっと違うのかな。

違わないような気もします。

まあ自分の好みの変化にかこつけて、「頽廃」はちょっと言い過ぎでした(笑)
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by god-zi-lla | 2012-08-19 09:11 | 食いモンは恥ずかしいぞ | Comments(4)