神はどーだっていいとこに宿る


by god-zi-lla

きゃらぶき

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【春の食卓シリーズその4】

こないだはタケノコといっしょに炊き合わせるのにフキを茹でてその残りをきゃらぶきにしてみたんだが、これがあんまりウマいもんですからこんだはきゃらぶきにするためにフキを求めてぜんぶきゃらぶきにしてやったのだった。

きゃらぶきってのも出来合いを買うと塩昆布みたく真っ黒けでしょっぱくて、それこそお茶漬けにするのが最適なヤツから薄い色で味もほんの少々甘辛いくらいに仕上がったのまで、なかにはなんでこんなに甘くしなきゃなんないのかわかんないアタマ痛くなるくらい甘ったるいのを食ったことさえありますけど、どれもこれもきゃらぶきにはちがいなくって、これでなかなかにウィングの広い食いモンではあるんだな。

で、おれは塩昆布まではいかないにしてもそこそこ濃いめで甘さはうんと控えてあって、炊きたてゴハンの湯気の上がるお茶碗にひとつふたつ乗っけて食ったらとまらなくなっちゃうくらいの味加減が好きなんです。

だからそのように炊いてみた。こういうものを自分で作るいちばんいいところは、自分がこんなのを食いたいっつうストライクゾーンど真ん中に絶好球を放り込んでやれるとこだと思うんだよ。とくにこのきゃらぶきなんてやつは老舗の佃煮屋で売ってたりデパ地下の高級料理屋が出してる惣菜店に並んでたりもするくせに、べつに作るのがそんなにむつかしいものでもないし材料が手に入りにくいモンでもない、ありきたりの惣菜だからさ。

これってようするにフキのあのいかにも春だよなあーっていう青くささに醤油のしょっぱさと砂糖の甘さを乗っけてやりゃあそれでいいんだから、どうやったってそうなりゃいいんだと思うんです。だからさっと茹でて表面のスジを取ってやったフキを適当な長さに切って醤油と砂糖か味醂で煮てやれば、もれなくきゃらぶきですよっていえるものになる。

まあそれじゃああんまりお愛想なしでもあるんで、写真のやつは前日の晩メシで出汁を取った鰹節とコンブのダシガラをぐつぐつ煮出して二番出汁取ったのに味醂と醤油を入れてそこにフキを放り込んで中火くらいで煮詰まらないように気をつけつつ水分はそこそこ飛ばしながら煮て、最後は少し残った煮汁にフキが浸かったままの状態でフタをして自然に冷めるまで置いて味をゆっくり含ませておしまい。

んー。思ったとおりの味加減になって、ホントうれしい。
いちどにたくさん食膳に出すとすぐなくなっちゃうから、こうやってチマチマ出すんです。
せめて四、五日は楽しみたいからさ。べつに上品ぶってるわけじゃありません。

つうわけで、きゃらぶき。

それとね。冒頭「春の食卓シリーズ」ってのは思いつきで付けただけですから。
その3とか、その2とか、その1とか、いくら探したってそんなもなぁどっこにもないよ。


そういえば昔、東京の古い町の一角に池波正太郎も贔屓にしてたっていう正真正銘どこから見たって町のトンカツ屋さんにしか見えない、入ってみても見た目どおりなんの気取りもない小さなトンカツ屋さんがあってね。まあ行けばロースカツばかり食べててほかのものは食べたことないんだけど、店の壁にはエビフライ定食って書いたもう茶色に変色しちゃったお品書きが貼ってあったんだよ。でも、だれもその店でエビフライなんて食ってるのを見たことがないんだ。それでおじさんにエビフライもやってるんですかって聞いたら、むかしはやってたんだけどずっと前にやめちゃったんだよねえ。だけど、剥がすと壁が淋しくなっちゃうんでそのままにしてるんだよ、ゴメンね。だって。

まあ、春の食卓シリーズも似たようなもんなんです。ゴメンね。わははは。
Commented by 虎吉 at 2013-04-15 23:45 x
鰹節に昆布の出汁、醤油と砂糖、
味醂、煮汁に浸し、そして
--青臭さ。
うまそだな、ご飯でも酒でも。

あ~そんな春をあと何回味わえるかな。

Commented by god-zi-lla at 2013-04-16 08:58
虎吉さん。
あと何回なんて勘定してるより日々気持ち良く過ごしましょうよ。
いくら考えたって、あと百回の春は巡ってこないんだから。
Commented at 2013-04-19 18:34 x
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by god-zi-lla | 2013-04-15 13:16 | 食いモンは恥ずかしいぞ | Comments(3)