神はどーだっていいとこに宿る


by god-zi-lla

大きいスコーンあるいはジミー、野を駆ける伝説

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きょうは出かけずにスコーンを焼いたんである。

おとついの昼間、ヒューマントラストシネマ有楽町で「ジミー、野を駆ける伝説」を見たら主人公ジミーのお母さんがジミーにスコーンを焼いて勧めるんだ。それもずいぶん大きいスコーンでさ。んー、ああいうスコーンもいいかもなあと思うと矢も盾もたまらない。見終わってうちに帰ってから考えてみると、あんなに大きい抜き型はおれんちにはなかった。だけど作って食ってみたい。

じつはちょうど台所で使ってるササラがボロっちくなってしまったもんだから、その日映画を見る前に東急ハンズに寄って探してみたものの気取った銀座ハンズに案の定そんなものはない。もちろん近所のホームセンターにもないしスーパーの雑貨売り場にもない。じゃあこいつをどこで買ったのかというと合羽橋なのであったが、まあ出来ればササラひとつ買うために電車賃かけて合羽橋まで出かけたくなんかありませんから躊躇してたんです。そしたらこれじゃないですか。そうよデカい抜き型もいっしょに合羽橋で買ってくりゃあいいんだ。よーしササラ以外に買うものができたぞ。というわけでそれからあといくつか買わなきゃなんないものをデッチ上げて勇躍合羽橋へ出かけたのであった。

ササラのついでのようなフリをして買い求めたのは直径8センチの丸い抜き型で(ホントは抜き型なんか近所のホームセンターにも売ってると思うんだけど、まあそこはそれ)、ちょうど今日は朝から冷たい雨の東京で外に出る気分でもありませんから久しぶりにスコーンをこさえてみたのが写真なのだった。

ほんとは映画のなかでジミーのお母さんが焼いたスコーンは8センチよりもうすこし大きいようにも見えたんだけど、あんまり大きく抜いてうまく扱えないのも困るしね。まあ、こんくらいだったら大きいの作ったなあーっつう気分に十分ひたれるんではあるまいかと思って8センチで手を打ったんでした。

写真の小さいのが普段作ってるこれは直径約4センチですね。このときのもそうです。抜き型のサイズで2倍だからけっこうデカい。型から抜いて天板に乗っけるときいつもだったらひょいとつまむのが、さすがに割れちゃったら困るのでスケッパー使っておそるおそる動かした。

ジミーというのは1930年代はじめのアイルランドの寒村で仲間たちの先頭に立って横暴な地主と戦い、教会の陰険な干渉をはねのけて農民・労働者・若者たちの集まる場(=ホール)を作り上げた無名の(しかし実在の)農民活動家を描いた映画で、当時の(今もか)アイルランドの複雑な政治状況と世界恐慌のあおりによる不況のなかで自由に誠実に生きようとする主人公ジミーがカトリック教会と地主・資本家たちからコミュニストのレッテルを貼られてさまざまな脅迫や妨害を受けつつ最後には国外追放となってついに再び祖国の土を踏むことがなかったという、書いてしまうとなんだか救いようのないような悲劇に思えるんだけど意外なくらい見終わったあと爽やかな映画でね。

ちなにみ監督ケン・ローチの前作「天使の分け前」は世間の評判とはうらはらに、おれにはちょっと納得のできないストーリー展開でまったく爽やかでない気分で映画館を後にしたものだから(いまはなきテアトルシネマ銀座の最終上映作だった)、じつはちょっと心配しながら見始めたんだがこれはシンプルでストレートないい映画だった。

映画は劈頭、追っ手を逃れてアメリカに逃亡していたジミーが10年ぶりに故郷に帰ると老いた母親が彼を迎えるんだ。最初このお母さんはただ無学で貧しい臆病な農民なのかと思えるのだが、話が少しずつ進むにつれてその控えめな言葉の端々に非常に強い芯のようなものが見え隠れしてるのに気づく。そして映画がおしまいのほうまで進んでいくと、ジミーという子どもを不屈の闘志と信念の活動家に育てたのはまさにこの見かけはたんなる田舎の人の良さそうなおばあさんでしかない老いた母なのだということをハッキリと理解させられるんだよ。

そのお母さんが息子にスコーンを焼いてやる。
それがなんだか大きいわけだ。
食ってみたいよな。

Commented by 虎吉 at 2015-02-06 13:15 x
こんにちは。
『ジミー、野』をご覧になり、スコーンを作るなんて凄すぎです。うまそうです。

あのお母さん、ほんと素晴らしいですよね。ご指摘の通りあの親にしてあの息子だと思います。そして、住んでいる村を愛し、そこに住む人たちへの温かい眼差しを感じます。

神父さんが息子への就職を斡旋する場面、ホールで図書を充実させよう言う場面、息子を逮捕しに来た警官たちとの会話の場面など印象に残っています。

ところで「ササラ」という道具を半世紀ぶりに思い出しました。といってもまずは、インターネットで確認したんですけどね。生きていれば103歳のばーさまが、洗濯板を使うときに使っていたように思います。ゴジラ殿は炊事で使われるようですね。

インターネットを見ると炊事、洗濯、掃除など家事全般で活躍する道具なんですね。
Commented by god-zi-lla at 2015-02-06 14:05
虎吉さん 寒いですね。
東京は大雪と言ってたのに快晴です。

ササラは札幌の市電では除雪に使うんだそうですね。ササラ電車ってのを何度もニュースで見たことがあります。あれは実物を見てみたいもんだなあと思います。

そうだ、まだ下ろしてないから写真撮ってササラをネタにブログでっち上げよう!(笑)
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by god-zi-lla | 2015-02-05 17:28 | 食いモンは恥ずかしいぞ | Comments(2)