神はどーだっていいとこに宿る


by god-zi-lla

カブキ以外の芝居見物

カブキ以外の芝居見物_d0027243_7113518.jpg
しかしまあ自分でも呆れるくらい歌舞伎見てるのは間違いないです。ほかの芝居をまるっきり見てないわけでもないんだけど、これだけ歌舞伎見てりゃあちょっとね。

最後にこのブログに書きとめた芝居が友だちに誘われて新橋演舞場3階下手壁際、舞台の三分の一が見切れちゃう席で見た熱海五郎一座〈プリティウーマンの勝手にボディガード〉だったがこれが梅雨時のことだったから、いちおうそのあとのとこから備忘録としておさらいしとくことにする。

でその同じ月に三軒茶屋のシアタートラムで段田安則と小泉今日子と浅野和之の〈草枕〉を見た。そうです漱石の隠れもなきあの草枕なり。これがしかしどうも、ちょっとなあって出来でね。段田・浅野という名手が揃っても如何ともし難いって感じだった。

そのあと歌舞伎見物を4回挟んだあと7月に池袋の東京芸術劇場プレイハウスでロイヤルオペラの〈兵士の物語〉。2009年に新国立劇場の中劇場で見たアダム・クーパー主演の名舞台の再演なり。見た感じそのまんま手直しなしの再演でやっぱりこれはすごい舞台だと思ったんだけど、きわめて残念なことに客席はひどい不入りでね。じつにもったいないことである。とにかくチケットが高い。たしかどの席も一律13,000円くらいして、おれも買うまでかなり逡巡した(いい席は高くても、どこかに最低4ケタ値段の席は作れよな)。

それからプロモーションの失敗でしょうか。まあバレエともいえるし芝居ともいえるけど、バレエでも芝居でもないともいえるからどっちの客も来なかったのかもしれない。それにストラヴィンスキーのことをややこしくて取っつきにくい「現代音楽」だといまだに勘違いしてる人も多いしなあ。

あの入りでは東京での「次」はないな。それがなにより残念。

それからまた歌舞伎見物6回を挟んで10月、新宿の紀伊國屋ホールでこまつ座〈マンザナ、わが町〉は言うまでもなく井上ひさしの作品で、マンザナは太平洋戦争中アメリカ合衆国が日系人を不当に押し込めた強制収容所のことです。劇中でも紹介されてたけどこの蛮行について戦後被害者に公式謝罪した大統領がロナルド・レーガン(在任1981-89)で、すでに相当な数の被害者が世を去ったあとだった。

芝居としたら井上ひさしらしいといえばいかにも「らしい」、ドタバタとしたところの多い喜劇でまあ普通なのかな。ことし初めのほうで見た同じこまつ座の〈小林一茶〉なんかに比べてこの太平洋戦争を題材にした井上作品のメッセージのストレートさというのは、いつもある意味強烈だよ。芝居にせよ小説にせよこういうテーマについては絶対オブラートに包むようなことをしないとこが井上ひさしで、おれはやっぱりそういう井上ひさしが大好きな「サヨク」です。

でまた歌舞伎3コ見たあとつい先日の13日、上の写真のいかにも仮設っぽいZeppブルーシアター六本木つう小屋で見たのが中島らも作の〈ベイビーさん~あるいは笑う曲馬団について~〉。

おれにとっちゃ中島らもという人はもっぱら〈中島らもの明るい悩み相談室〉に始まり〈今夜すべてのバーで〉や〈アマニタ・パンセリナ〉や〈ガダラの豚〉などのすごい作家だったんだけど、芝居のほうはまったく見たことがありませんでした(お父さんのバックドロップを映画化したのは見た。劇中散髪屋のおっさんの役で調子っぱずれの鼻歌を歌いながらちょっとだけ登場するらもさん本人がいちばん印象に残って、この人はもしかして役者としてもトンでもない人かもしれないと思った)。

ベイビーさんてのはサーカスで飼われている動物でエサを食わないで生きている。外見はトラだったりクマだったりウマだったり見る人によって違うものに見えてるらしいんだが観客のおれには白い大きな布をかぶせた風船が宙に浮かんでるようにしか見えない(ほかのお客さんにどう見えたかは知りません)。

舞台は昭和16年、満州のどこかの町。関東軍の兵士に慰問公演を始めようとしてるサーカス団がいてその団長は「ゆわーん」と「ゆよーん」しか言わないドードーさんという名前で、すがたカタチは絶滅したドードーという鳥なのであった。

そのドードーさん率いるサーカスで飼われているベイビーさんを関東軍の大佐が高級将校の宴会で虎鍋にして食おうとするのを、サーカス団の団員に身をやつしていた満州の馬賊たちが阻止しようとするわけだ。

わけだ、って言われてもアレでしょうが。

冒頭、サーカスのピエロに扮した松尾貴史がひとり登場するや15分くらいずうーっと独白してるんだがこれがほとんど漫談でね。中島らものモノマネをしてみたりやたら笑わしてくれるんだけど一瞬このまま終わってしまうんじゃあるまいかと不安になったりしてどうなることかとは思いましたが、そのあとは思いのほかちゃんとした芝居で、じゅうぶん楽しんできた。

しかしこの芝居も井上ひさしとほぼ同じ時代を舞台にしてるんだよな。そういえば今年2月に見たNODA MAPの〈エッグ〉も同じだ。背景にみんな日本が戦ったあの20年戦争がある。今年いくつも戦争の芝居がかかったのがたんなる偶然てことはありえない。

それはともかく、「ゆわーん」と「ゆよーん」がいまだにアタマんなかをグルグルして困っています。

さて今年はこのあと二つ、歌舞伎じゃない芝居を見る予定なり。
そうするってえと歌舞伎は。
カブキ以外の芝居見物_d0027243_9124739.jpg
オマケ。
冒頭の写真を撮った位置で振り返ったら〈けやき坂〉のイルミネーション。
名前
URL
削除用パスワード
by god-zi-lla | 2015-11-22 09:17 | 物見遊山十把一絡げ | Comments(0)