神はどーだっていいとこに宿る


by god-zi-lla

グールドのゴルトベルク1981年盤の2015年盤のLP(なんてややこしいんだ)

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というようなわけでハーマンの人からマークレビンソンNo.29Lの修理完了したから代金送ってちょという電話があったので送金したのであった(イマドキ電話でやりとりしてるってのが、それだけでなんか楽しいよね)。たぶん明日かあさってにはブツは再びわが手元に戻るのでありましょうが、この年の瀬の物入りのさなか大枚叩いて届くのは見慣れた古いアンプリファイヤーという今日は師走十六日である。

なーにを言ってんだか。

先月の文京区湯島〈音と戯れる会〉でグレン・グールドのラストレコーディングとなった二度目のゴルトベルク変奏曲の、当時現場でサブとして回されていたらしいアナログテープからプレスしたLPレコードというのがあるというのを初めて聴かしてもらったんだよ。しかもそれは今年の秋口だかに出たばかりでまだアマゾンでも買えるというじゃんか。

いや、はっきり申し上げてグールドのゴルトベルクといえばおれにとっちゃ最初に録音された55年のヤツのほうである。なにしろこれが初めて買ったゴルトベルクのレコードだしバッハのレコードったって、バルヒャがモダンチェンバロで弾いた大伽藍のようなイタリア協奏曲のLPに次いで2枚目だったんだからもう40年以上も昔のことなんでした。

スタイルも思想もぜんぜん違うこの2枚ですけど(そもそもそんなことに気付いたのはずっと後のことだったし)、いまだって時折引っぱり出しちゃあなーんの違和感もなく愛聴し続けてる我が人生のレコードって感じだもんな。

だからグールドが最後に遺した新しいゴルトベルクにはイマイチ馴染めなくってさ。しかもレコードに針をおろすといきなり止まってしまうんじゃないかと思うくらいゆっくりと演奏されるあのアリアだ。いやあおれはやっぱ55年盤のほうでいいや。つう感じでなんとなく81年盤には手が伸びないであまり聴き返さないまま30年が経っちゃった。

81年にグールドが亡くなってCBSソニーの国内盤が出たのは翌82年だと思うんだけど、そこからそんなにたってない時期に買った盤が上の写真左側のやつで、ジャケットに挟み込まれた解説には諸井誠がグールドの訃報に寄せて書いた毎日新聞の記事が再録されてたりする。81年、82年というとちょうどCDが世の中に登場する前後のことだから、もしかしたらこの盤で初めてCDを手にしたなんて人も多かったのかもしれませんけど、おれが初めてCDプレーヤーというのを買ったのって86年のことですからもちろんLPしか買わなかった。

だけどね。なにしろグールドのゴルトベルクっちゃあ55年でしょの人でしたから先月その初めて世に出たアナログ録音のゴルトベルクというのを聴かせてもらっても、ふうーん、という感じでね。この30数年あんまり聴いてこなかったから即座に感じるものがないんだ。同時に聴いたCDと比べたら、まあちょっとモヤっとした感じがするなあみたいな。

しかし気になるのは気になるもんだからウチに帰ってこの写真左の国内盤を聴いてみた。んー、まあこういう音だったよなあ。クラシックとしたらかなりオンマイクのクリアーな音。湯島で聴いた音と思い出して比べるとこっちのほうがやっぱりバリっとした印象で、アリアは相変わらず止まるかと思うような遅さである。だけど以前のような違和感は感じない。もしかしたら立て続けに2回聴いたからかもしれない。

そしたらもう1回、今月の文京区湯島でも聴くことになってね。今回はまたちょっと違う趣旨ではあったんだけども、それはさておいて二度目を聴かしていただくに至って、とうとうこっちの物欲の堪忍袋の緒が切れた(なんちゅう表現じゃ)。これはやっぱし自分ちで自分のステレオ装置で聴き比べてみたいじゃん。そうしてamazon.co.jpから届いたのが上の写真右のLPなんであった。

グールドのゴルトベルク1981年盤の2015年盤のLP(なんてややこしいんだ)_d0027243_14191689.jpg
でこの新しいLPなんだが、デジタル録音初期のこととてアナログレコーダーをバックアップに回していて(当時は珍しくなかったみたいね)、最近になって見つかったそのアナログテープから起こしたLPレコードだっていうのがウリなわけだ。もともとのヤツはデジタルマスターからカッティングしてるわけですからね。

アマゾンの商品ページにはなーんの能書きも書いてないんだけど、同じLPをHMVのショップサイトに見てみるとこんなことが書いてある
…この1981年盤は初期のデジタル録音としても有名で、LPだけでなくCDも発売されました。その際LPのカッティングにもCD用のデジタル・マスターが使われましたが、今回のLPプレスに当たっては、そのデジタル・マスターではなく、デジタル・マスターと並行して収録されていたアナログ・マスター素材からグールドやサミュエル・H・カーターの使った編集用のスコアをもとに編集し、DSD化した音源が使われています。アナログ・レコーディング完成期ならではの、のびやかで安定感のある音楽的なサウンドは、グールドの超絶的に美しいピアノ・サウンドを再現しています。
晩年のグールドの透徹した表情を捉えた有名な初出盤のダブル・ジャケットを再現しています。(SONY MUSIC JAPAN)
んーむ。つうことはアナログの録音テープからプロデューサーの記録どおりに編集したDSDマスターを起こしてSACDとCDを作ったのち、その同じマスターでLPをプレスしたのが今回のLPなんですと読める。

つまり録音はアナログだけどマスターはデジタル、それをアナログにプレスしたってことだな。

アナログ録音からアナログマスターを起こしてカッティングした純粋アナログじゃないわけか。
ちょっと、なーんだ、って気分ではある。

だけどヘンな話、ここんとこ繰り返しこの81年盤、グールドが最晩年に遺した二度目のゴルトベルクを聴いてるうちにどんどん好きになってきててね。ふと、もしかしたらこのままもう少し聴き続けると旧盤よりこっちのほうがよくなってくるんじゃないかという気がしてきてさ。こりゃあアマゾンから届いたばっかりのLPとどっちが良い音かなんて比較もさることながら、もう少しじっくり81年盤と付き合ってみようかって気になってきちゃった。

不思議なもんだな。

左の駐車禁止ラベルが2015年LP(SONY 88875102811)
右のラベルは30何年前に買った国内盤(CBSソニー 28AC 1608)

Commented by クラシコ at 2016-11-25 22:07 x
初めまして。グレングールドのゴルトベルク変奏曲について検索していてたどり着きました。不躾で恐縮ですが差し支えなければ、1982年盤と2015年盤を聴き比べたご感想をお聞かせ頂けますでしょうか。やはり今回のアナログマスター版のほうが素晴らしい音がするのでしょうか。
Commented by god-zi-lla at 2016-11-26 14:22
クラシコさん わざわざご覧下さって恐縮です。

この2枚の音質を比較しながら聴いてみたことがなかったのですが、せっかくですから〈アリア〉だけ盤を取り替えながら先ほど比較して聴いてみました。

実際聴き比べてみたところで申し上げると、どっちが良い音かということでしたら一般的にいえば優劣はないと思います。ただ82年のデジタルマスターから作られた国内盤よりも、今回出たアナログマスターからDSDマスターを起こした2015年のUS盤のほうがグールドの「ハミング」がやや明瞭に聞き取れるようになっているのと、低音部のスケール感がやや大きくなっているように聞こえます。そこにどういう価値を見出すかというのは、もう趣味嗜好の領域でしょうね。

ただ、これがデジタルマスターとアナログマスターの違いだとは断言できませんし、どちらか一方だけ聴いて、これが82年、こっちは2015年と指摘できるほどの違いがあるわけではないということもご承知おき下さい。
Commented by クラシコ at 2016-11-26 23:30 x
ブログ主様

丁寧にご返信頂きありがとうございます。

これまでCDしか聞いたことが無く、せっかくなので音質の良いレコードを選択したいと思ったのでお聞きした次第です。
この楽曲は不眠症の貴族のために書かれたそうですが、グレングールドの演奏を聞いても眠りに誘われそうにありません。恐らくバッハが想定したであろう曲の解釈とは違うのではないかと思いつつも、なぜかグレングールドの演奏をまた聴きたくなってしまいます。
お蔭さまで、デジタルマスター版とアナログマスター版のどちらを購入するにしても、安心して聴くことができそうです。ありがとうございました。
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by god-zi-lla | 2015-12-16 23:09 | 常用レコード絵日記 | Comments(3)