さいきん見た映画(の続き)あるいは葦の髄から天井覗く
2016年 09月 29日
写真は岸部一徳と藤山直美の(廃業した)漢方薬局店主夫婦が団地の台所で漢方薬をこさえてる(じゃなくて調剤か)とこなんだけど、じつに興味深いシーンでね。なるほど漢方薬の薬屋さんのおじさんというのは奥のほうでこんなことしてんのかーと、ちょっと勉強にもなるのでした。
だけどこうやって作ってた漢方の錠剤がじつは宇宙人のためのおクスリだったなんてねえ。ラストから遡って一気に全部がSFになってしまうのであった。
しかし漢方薬を飲む宇宙人、つか漢方薬が宇宙人に効くというのも、おれはこの映画を見て初めて知った。いやまったくもってナニがアレですけども。
邦画ついでにいうと、そのあとクドカンの〈TOO YOUNG TO DIE 若くして死ぬ 〉も良かったねえ。こういう言い方しちゃイカンかもしれませんけど、悪フザケがちゃんと貫徹されればメッセージも伝わるし人の心も動かせるつう出来映えだったのではありますまいかしらん。芝居とくらべちゃイカンかもしれませんけど、このまえ本多劇場で見たケラリーノ・サンドロビッチの〈ヒトラー最後の20000年 ほとんど何もない〉が、悪フザケが悪フザケのまま(しかも中途半端に)終わってタイトル以上に「まったくナニもない」のとは好対照だな。
若い人向けの映画を装いつつ、これは中高年向けの映画なり(ディテール、キャスト含め)。
若い人ってばマンガを原作にした〈セトウツミ〉もなかなかでしたぜ。男子高校生がふたり河川敷の公園に座って喋ってるだけの映画ってばそうなんだけど、「オマエ、神妙な面持ちとか、やってみ」みたいな。その会話が面白いんですけど、ここまで現代の男子高校生が語彙豊富であればニッポンはこの先百年ぜってー大丈夫だな。
面白いんで原作のコミック全巻買って読んで驚きましたが、台詞のほとんど一言半句にいたるまでじつに忠実に原作をなぞってんのね。それどころかロケも漫画に書き込まれた現実の風景のその場所で行われたみたいでさ。んー。じゃあ映画って…、なんてつい考えてしまわないでもなかったのであったが面白かったから良し。
シン・ゴジラはもちろん見た。映画自体についておれが書くようなこともないから書きませんけど、その半月前だかに〈ふきげんな過去〉って映画を見てたもんですから、おいおいおい、こんだはここにゴジラも上がってくんのかよって、いっとう最初、東京港にあらわれた子どものゴジラが上陸してくるとこがその映画の舞台と似たようなあたりだったから思わず笑ってしまったのであった。品川区のみなさまこのたびはホントにご苦労さまでございました。
ハリウッド映画だと〈トランボ ハリウッドに最も嫌われた男〉が見応えあり。それにしても今年見た映画でいうと〈ストレイト・アウタ・コンプトン〉にしても〈スポットライト〉にしても、それからこのトランボにしても、じつに映画にしにくそうな重たい(政治的でもある)テーマを、しかもちゃんと楽しめるエンターテインメントに仕立てて公開して成功させるとこがすごいもんだなあと思う。日本の映画業界じゃ最初っから企画として成立しないんじゃないか。
そういえば、音楽に政治を持ち込むな、なんてマヌケなことを言ったテレビ芸人がいたそうですけど、まあ日本のテレビの中の音楽だけをみてコメントしてたらきっとそうなっちまうんだろうな。テレビのなかでしかものを見られないなんて、おれは不幸だと思うけども本人が気づかなければ不幸も不幸とはいえない。
それにしてもヘレン・ミレンの演じたあのじつにヤな感じの映画評論家が忘れられないね。たったひとりの人間のメディアを通じて発する悪意のコトバが世の中を壊していく。
政治的といえば〈アイヒマン・ショー〉なんていう映画も見た。見終わって気持ちのいい映画とはとてもいえない。正義も不正義も政治上の問題でしかないって、つくづく思う(映画のテーマとは関係ないでしょうけど)。
あ、それからトランボの妻役のダイアン・レインっていい味わいの女優さんになってたんだねえ。エンドロール見るまで気づきませんでした。たぶん〈コットン・クラブ〉で見て以来じゃなかったかな。おれ、自分と同年配だと思い込んでたんだけど、コットン・クラブのときはまだ10代だったんだな。
きのう〈EIGHT DAYS A WEEK〉、その前々日に〈ある天文学者の恋文〉見たけど、それはまた。
by god-zi-lla
| 2016-09-29 14:11
| 物見遊山十把一絡げ
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