神はどーだっていいとこに宿る


by god-zi-lla

最近見た芝居(最近じゃないのもあるけど)

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ここんとこ気の重いことも色々とありますけど、そんなこたこのブログとは何の関係もないからいいんだけどさ。

芝居といえば6月の〈コペンハーゲン〉以来歌舞伎座に幕見を含め6回、国立劇場1回、世田谷パブリックシアターが1回、明治座に1回、シアターコクーンへ1回、それから本多劇場も1回。依然として歌舞伎馬鹿を続けてるんでした。困ったものである。

歌舞伎のことからいえばこのかんのことで思い出すのは新しい芝翫が橋之助の名前で最後に歌舞伎座に出た8月の土蜘〉。これが橋之助最後の本舞台だっていう想いが目一杯詰まったようなアウラを発してた。今月の襲名舞台の盛綱も良かったけども踏み切りの一歩手前の、思い切り気を張りつめて身をかがめてチカラを爆発させる直前の気迫が橋之助演ずる「叡山の僧智籌実は土蜘の精」にあったようにおれには見えた。

まあ、なんてったって好きな役者だから頑張ってほしいよね。

それから8月幕見で見た〈権三と助十〉の助十、同じ8月〈吉野川〉の大判事の息子(役名忘れた)、9月〈らくだ〉の屑屋、それから今月〈御浜御殿〉の富森助右衛門、新しい芝翫の〈盛綱陣屋〉で信楽太郎などを演じた染五郎。なんつうかこう、古典新作白塗りから百姓町人までなにをやってもキチンと見応えのある安定した役者になってきて、芝居見物に行く楽しみがひとつ増えた感じがするね。

国立劇場も歌舞伎で10月から師走まで三月連続で仮名手本忠臣蔵を通しで上演するというんだ。その10月は大序から四段目まで、普段上演機会の少ない幕をやってくれるからようやっと筋の飲み込めたところがいくつもあった。

それにしても「(殿は由良、由良というばかりで)わしのことなどオノでもなければクダでもない」と大星由良之助ばかりを重用した生前の主・塩谷判官を恨む斧九太夫(松本錦吾)の人間味がとても可愛いじゃないか(だけどその主人からの愛されなさと由良之助にたいする妬みが結局出奔→裏切りにつながるという伏線でもある)。

つうわけで七段目で九太夫が主の月命日に由良之助の口へ無理やりタコを押し込もうとするのは(由良之助の真意を探るという意図は意図として)それはそれでひとつの意趣返しなんだろうな。親子で仮名手本忠臣蔵を代表する悪いヤツだがそれなりに哀れを催すところもある斧九太夫なのであった。

だけど、そうやって物語の全体像を(ときに損得抜きで)見せてくれるのがありがたや国立劇場の通し狂言の御利益なのでした。

歌舞伎はとりあえず置いといて本多劇場のケラリーノ・サンドロビッチ〈ヒトラー、最後の20000年〜ほとんど、何もない〉。タイトルからして悪フザケだけど、悪フザケも突き抜けないとこういうことになっちゃうんだなあという見本だったな。シラケた客と箸が転ぶだけでも笑って帰りたい客に真っ二つみたいな客席に役者もやや戸惑う風なんだもん。最初っから笑いたがってる客を黙らせるところからが勝負だったんじゃあるまいか。

明治座の〈HONGANJI リターンズ〉はヅカファンの娘に引かれて善光寺詣り。たまにゃあ娘にべんちゃらのひとつもしとくというのが家族円満の秘訣なり。どうということのない芝居のなかで元タカラヅカ男役トップスターの壮一帆、九團次(歌舞伎)、諸星和己(もと光Genji)の3人がなかなか。

パブリックシアターの栗山民也〈ディスグレイスト〉はねえ、パキスタン系の弁護士とその甥っ子、アングロサクソンの妻、ユダヤ系のキュレーター、アフリカ系の若手女性弁護士ってのを多分ニューヨークの元の芝居じゃそれぞれそれらしいエスニックの役者がやったんだと思うんだけどさ。それで、そのエスニックの違いが芝居のでかいキモでもあるわけなところをここニッポンでは全部ニッポン人がやったわけだ。

んー、なんちゅうかアチラの舞台じゃ説明不要のことをコチラの舞台ではなんらかの方法で客に説明せにゃならない。秋山奈津子がアングロサクソンの女で小日向文世はインドを装うパキスタンで安田顕はユダヤですというのをさ。じつにまったく困ったものである。

ここんとこ串田和美の芝居はちょっとアレかなあという気分で見てたのが、先週水曜のシアターコクーン〈メトロポリス〉はなかなかだったと思う。ただし「なかなか」になったのは松たか子が登場してからで、そこまではうまく芝居に入り込めなくて何かもどかしい(自分とは関係のないものを眺めるような)時間が過ぎてくのであった。

松たか子と森山未來の二人ですね、まず見どころは。そしてその二人以外の俳優たちの身体の動き、それから音楽、装置も十分楽しんだ。

だけどさ。串田和美自身のやった役と、飴屋法水のやった役はなくてもよかったんじゃないかしら。





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by god-zi-lla | 2016-11-20 18:55 | 物見遊山十把一絡げ | Comments(0)