神はどーだっていいとこに宿る


by god-zi-lla

黄金週間へらへら日記2017

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5月1日
朝から東京プリンスホテル恒例の〈美術骨董ショー〉を散歩がてら冷やかしに行き、冷やかすだけで相手にもされず退散。買えそうなお値段でちょっといいなと思ったのは小山冨士夫のぐい呑みかな。ひとケタ万円だけど、おれにはやっぱり買えません。

つうわけで、れいによって何も買わず(いや、買えず)会場をあとにして地下鉄に乗ろうと東プリの玄関へ出てみたら、ありゃま外は土砂降りじゃんよ。仕方ないのでそのへんの空いたソファで外国人観光客に混じってしばし休憩。

小降りになったとこで御成門まで歩き地下鉄で日比谷。TOHOシネマズスカラ座で〈ライオン 25年目のただいま〉。日本の町なかであれば国じゅうどこで迷子になっても最後は親の元に帰れそうだけど、コトバもいろいろ宗教も生活習慣もイロイロ国土はだだっ広く人口は日本の10なん倍のインドじゃそう簡単にはいかない。だけどこんなことが実際にある現代なのだなあ。きっと帰ってくると信じて25年住まいを変えなかったお母さんに、ちょっと泣く。

5月2日
コーヒー煎った。掃除した。包丁研ごうと思ったがサボった。
おかげで熟れたトマトが切りにくい。

5月4日
山手線とモノレール乗り継いで平和島流通センターの〈古民具骨董まつり〉。なんかいつもより客が少ない感じ。そういえば出展してる骨董屋古道具屋も心なしかふだんより少ない。いつも見る常連の店も何軒か出てない。なんで? 大型連休で骨董屋さんも行楽にお出かけか、それとも他に儲け仕事の出来か。

ここんとこ骨董といわずデパートの食器売り場といわず町の瀬戸物屋といわず、長い間に1枚2枚と割れ数の足らなくなった普段使いの小皿の後ガマを物色して回ってたんですけど、ようやく平和島で(お値段的にも大きさ的にもデザイン的にも)ちょうどいいのを発見。バラ売りしてたので8客くらいあった中から矯めつ眇めつ4客選ぶ。うちの奥さんが店のおじさん相手に値切るも見事敗退。

ちなみに奥さんこの日はほかに2枚で1500円の皿を千円に値切って敗退。1個1500円の指輪をやっぱり千円に値切って敗退。阪神タイガース快進撃のこの連休、我が家は骨董屋さんに3タテ喰らう。

しかし考えてみりゃあ1500円の500円、金額は少ないけど「率」としたらデカいぜ。
33パーセント負けろって、それはちょっとムリでしょ奥さん。

だけど久しぶりに骨董市で「買い物」したなあ。

5月5日
團菊祭五月大歌舞伎午前の部。歌舞伎座行く前に弁当調達す。

ここんとこ芝居弁当といえば三越地下に入ってた梅林つうトンカツ屋の生姜焼き弁当ばっかりだったのが、残念なことにこのトンカツ屋さん三越から撤退。んー、タレの染みたゴハンがとっても美味しかったのになあ。

で、仕方ないので先月は寿司岩の助六、今回は別の弁当買ってみたところ味は悪くないのにフタを開けたら煮物の汁気が外に染み出し手がベトベト。狭い歌舞伎座3階席でヒザの上に広げて食いやすく、味もそこそこ良くてお値段手頃な弁当を次回も探さにゃなりませぬ。

歌舞伎はニュー彦三郎(ヘンな呼び方してごめんよ)が梶原平三景時をする〈石切梶原〉。ひょっとするとこれが歌舞伎座では最初で最後の可能性もあるから見逃したくなかった。これまでに幸四郎の平三を1回、吉右衛門の平三は2回見たけど吉右衛門のやり方と今回の彦三郎のやり方ではずいぶん違うんだな。

最後に手水鉢を上段の構えから真っ二つに斬り下げるところの違いもたしかに大きいんだけど、ふたつ胴を重ね斬りする支度の仕草。娘梢が父親の命乞いをしながら泣くところで吉右衛門の平三は白鞘の刀の束に下げ緒を無言のうちに巻き続けるというところがあるんだが、今月の彦三郎にそんな描写はなく平三の快男児ぶりを単刀直入に見せるような演出になってる(斬り割った石の手水鉢の上を跨いでみせるとこなんかもそうだな)。なるほど歌舞伎の「型」ってのは役者の家によってずいぶんと違うものであるよと初心者は感心しきりなのであった。

それにしても近ごろ気づき始めたんですけど、吉右衛門の芝居はいちいち深い。

吉右衛門だけ見てても初心者のおれにはわかんないことが多いんだが、ほかの役者が同じ役をやったのと比べるといちいと「あー、あそこはこういうことだったのか」って気づくんだよ。石切梶原で吉右衛門が下げ緒を束に巻く動きもそうだった。梢の嘆く声を聞きながら、平三の心の動きをその動作とうつむき加減の顔で客に推し量らせてんだな。

すごいといえば昼の部最後の〈魚屋宗五郎〉の菊五郎もすごかった。江戸っ子ってのは正真正銘こういう人ですって感じが、なんかもうとんでもないです。

イナセで格好いいけど、おっちょこちょいで無鉄砲そのうえ酒に意地汚くて意志が弱くて銭勘定に疎い。

いいねえ、やっぱり菊五郎の〈芝浜〉を見てみたい。

芝居がはねた後、出来立てマーマレードを受け取りに湯島まで歩いた。

歌舞伎座前から晴海通りを日比谷交差点までまっすぐ出て日比谷通りを右に折れる。ずんずん行けば日比谷通りはそのうち本郷通りに名前が変わり、そのまんま一直線に進めば神田橋を渡って小川町の交差点。さらに坂を登ってニコライ堂の前を過ぎればもう目の前に聖橋だ。

ところでニコライ堂と湯島聖堂、ふたつの聖堂の間の神田川に掛かるから〈聖橋〉というんだそうですね。

5月6日
ラフォルジュルネ、今年は国際フォーラムのホールB7で昼から夕方までずっといるっていう変則技に出てみたのだった。

まずリシャール・ガリアーノ六重奏団でピアソラほかのタンゴ。ガリアーノのクロマティック・アコーディオンに弦楽四重奏+コントラバス。ちょっとお行儀良い感じ。

それからシモーネ・ルビノという若いパーカッショニストのソロコンサート。スネアドラム1個を相手に最初は普通に両手にそれぞれスティック1本ずつ、そのあと右手にブラシ左手にスティックとマレット。最後は両手とも素手とかで精緻に叩きまくる。なんじゃこいつはすごいじゃんか。スネアのあとはバッハの無伴奏チェロをマリンバで。

しかしいちばん面白かったのは、あらかじめ録音してあるパーカッション(&環境音&ノイズ)の曲に合わせて照明を落としてほとんど真っ暗な(楽器のない)ステージ上で蛍光色のスティック1本だけをあやつり、あたかもそこで何かを叩いて音を出しているようにスピーカーからの再生音と超絶的にシンクロさせるパフォーマンス。

これって多分CDとかのメディアで再生不能。映像作品として再生してもライヴでやるような「意味」は伝わらないんじゃあるまいか。げんにそこにいて体験しないかぎり鑑賞不能というあたり、音楽の演奏というより現代アートのインスタレーションってやつに近い気がしないでもない。

これ見てたら、音楽とか演奏行為とかってのは一体全体なんなんだ、なんてことをガラにもなく考えてしまったんであった。

でもさ。こういうの見ちゃうとマリンバ用にアレンジしたバッハなんてのは(主催者がプログラムにとっつきやすさを求めたのかもしれないけど)てんでつまらないものに聞こえてしまうのだった。

三つ目のコンサートはオーヴェルニュ室内管弦楽団が「笙」の宮田まゆみを加えて細川俊夫の作品を演奏するのを息を殺して聴く。もしかすると雅楽以外で笙のナマ音を単独で聴いたのは初めてな気がする。それにしてもすごい緊張感。ホールの空気がひりひりとして痛い。

最後にテレマンの〈ドン・キホーテのブルレスカ〉が演奏されて、音楽家もお客もほっとひと息って雰囲気がホール全体に充ち満ちてましたね。

いやー今年も初めて聴いたものばっかし。

去年のラフォルジュルネではブルンジの太鼓青年団(そんな名前じゃないけど)を聴き、今年はてんでばらばらの音楽を同じ場所で続けて聴くってのはどうだろうって、タンゴとパーカッションと現代音楽を聴いてみた。

知らないものに初めて触れるのはホント楽しいよ。

さて連休も今日でおしまいだってさ。
あーくたぶれた。


Commented by 虎吉 at 2017-05-07 23:08 x
こんばんは
今日も虎は鯉をゼロ封しましたねーー昨日はいったい何が起こったのかーー5月で終わらないことを祈るばかりです

GWは近距離とはいえ充実した日々ですね、包丁研ぎと値引き交渉以外は(笑) 皐月の江戸歌舞伎は大名跡を堪能ですね 大阪は花形で春から初夏の演目で賑わいました

ラフォルジュルネもいいな〜 在京中に何度か行った記憶はあるんですが、会場が多くて迷子というか、なにしたらいいのかわからなくて(汗)って状態でした ゴジラ殿のように「初物」で楽しめる余裕がなかったのかな

Commented by god-zi-lla at 2017-05-08 08:54
虎吉さん こんにちは。

ラフォルジュルネは聴いたことのない音楽、珍しい演目、変わった楽器などに最近は絞ってます。

が、どうも同じようなことを考える人が結構いるようで、そういうプログラムに限って早く切符が売れてしまったりします。

近ごろは都心の春のフェスとしてすっかり定着したようで、国際フォーラムの広場はすごい混雑です。レバンテもラフォルジュルネ特別メニューを出すので行列ができてたりします。

大阪松竹座、七之助のお光は見てみたいなあ。
Commented by hal at 2017-05-08 14:06 x
>小山冨士夫のぐい呑み
他人の事ながら、妙に引っかかるなぁ
Commented by god-zi-lla at 2017-05-08 14:43
halさん。

ちょっと買えるかもしれなそうなお値段なんですよね、小山冨士夫の小さなぐい呑みって。

買ったことは一度もありませんけども。
Commented by dai-tora at 2017-05-08 22:32
ゴジラ殿

こんばんは 遅がけにすみません
「野崎村」のお光、尼さんになる前後はもちろん、結婚を前にした彼女の仕草がいいのですよ 



Commented by god-zi-lla at 2017-05-08 23:56
虎吉さん

あの、そわそわと浮き立つ前半のお光さんと、後半の絶望感の落差に泣けちゃうんですよね。ある意味とても残酷な芝居ですが。

七之助のお光は3年くらい前に一度歌舞伎座で見ましたが、ここのところ進境著しい七之助ですからきっとさらに良い出来映えでしょうね。

おれが見たなかでは倒れる直前の福助のお光が素晴らしかったです。

なんとか復帰してもらいたいものです。
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by god-zi-lla | 2017-05-07 21:56 | 物見遊山十把一絡げ | Comments(6)