神はどーだっていいとこに宿る


by god-zi-lla

COOL HEAT 〜ジミー・ジュフリーなんて知らなかった(その3か4)

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つうわけで、いったい全体「その1」とか「その2」ってのはいつのことだったかといえば、このときのことなのであった。あーもう2年もたってたのか。書いた本人すら忘れてんですから今さらその続きっていわれてもねえ、でしょ。

だけどね。ブログのエントリーとしては2年とかたっちゃってんだけど別にジュフリーについて興味を失ったわけじゃなくって、その間にも何枚かレコードCDを手に入れて聴いていたんでした。

それはそれとして「その1」をアップしたとき、ジュフリーは映画〈Jazz On A Summer's Day(真夏の夜のジャズ)〉の冒頭に登場してたじゃないのというご指摘を受けて、ドルフィー以外にほとんど目の行ってなかったことに大いに恥じ入り同作を幾度も見直していたところ、こんだは大きな帽子をかぶって大観衆を前に艶然と歌うアニタ・オディに完全にヤラられちゃったんである。

なんてすごい歌手なんだこの人は。以前からレコード数枚持ってたのに全然そのことに気づいてなかったオノレというものに、重ねがさね恥じ入っちゃってね。その後はジャズヴォーカルなんて滅多に聴かないおれがアニタ・オディのレコードも何枚か買ってしまってさ。

そしたらジュフリーがアレンジしてアニタ・オディが歌ってるレコードがあるっていうじゃないか。ヴェテランのオディファンだったらみんな先刻ご承知の有名レコードなんでしょうが、こちとらまったくのにわかファンで知ってることってば全部付け焼き刃。しかしそんなレコードの存在を知ってしまったからには聴いてみないという選択肢なんて残されちゃいないのであった。

つうわけで例によってレコードを探すともなく探していたところ(値段の高い盤には二度ほど遭遇しましたけどパス)、このほど深溝の初期盤(ジャケット書き込み&レーベルにシール貼り)を二千円ちょいでエサ箱より発掘したんである。COOL HEART、そして〈Anita O'day Sings Jimmy Giuffre Arrengements〉と副題にあるそのアルバムが上の写真なり。

じつは正直なところジュフリーについておれの興味は今やフリー・ジャズに行ってからの演奏に移ってるんだけどさ。だけど、そうはいってもあのアニタ・オディに(あらかた予想はつくとはいえ)どんなアレンジを提供して、それを彼女がどんなふうに歌ってるのか、そりゃあ興味津々だよ。

これはやはり案の定というか、柔らかくて心地良くふくらみ適度なシャープさもあって、あんまりジャズっぽくない響きも随所にきこえるジュフリーのアレンジに乗ってアニタ・オディが超絶技巧を婀娜っぽい歌い口に包み込んで歌う見事なレコードです。

A面しょっぱなはヴァイルのMack The Knife(匕首マックとかモリタートとか)。ボビー・ダーリンが歌ってヒットしたのが59年だそうなんだけど、このレコードも59年録音だからどっちが先だかよくわからない。よくわからないけど、こういうなんつうかじゃらじゃらっと歌い崩したら全然サマになんないような曲を先頭に持ってくるところが、もう技量において互いになんの不足もないアニタ・オディとジミー・ジュフリーの組み合わせの自信ってモンなんでしょうね。

そして実際このアルバムはじつに見事なもんなんだけど、そこはかとない違和感というか座りの悪さというか、お尻がモゾモゾするような感じというか、そういうものをほんの少しだけど感じちゃう。

アニタ・オディは40年代スタン・ケントン楽団の歌姫だったんだから大きな編成のバンドをバックに歌うのなんてお手の物に違いないんだ。リズムセクションだけをバックに小さなクラブでひっそり歌うなんてのがツボというようなシンガーではない。だから、これはもうジュフリーのアレンジとこの録音セッションの選曲(ノーマン・グランツがプロデュースしたんだろうか)にどっかアニタ・オディの個性とちぐはぐなところがあるんだろうな。

だけど、そのほんの少しの違和感みたいのが逆にこのアルバムの魅力な気がしないでもない。物事なんでもスンナリ行きゃいいってもんじゃないしさ。ジュフリーはリハーサルでバンドの指揮をしながら、ちょっとアニタには合わなかったかなーなんて思いつつ当のアニタ・オディに目をやると彼女は彼女で、ちょっとあたしの柄じゃないかもねえ、も少しルーズなアレンジにしてくれたらなあなんて思いながら歌いつつ、ま、これはこれで新しい感じがするし、あたしがエラにだって負けないテクニシャンだってとこを知ってもらうには悪くないアレンジかもね、なんたってあのジミー・ジュフリーなんだし、なんてね。

でノーマン・グランツはといえば、おーいいね、いいねー、なんつって、ちょっとしたチグハグ感なんて気づきもしなかったりしてさ。

そういう現場のちょい微妙な雰囲気が聴いてるうちに透けて見えてくるというのはどうせおれの考えすぎなんだろうけどさ。

なんて思いながらジャケットを眺めてたら、この写真は合成なんだな。

どっか公園だか邸宅の庭だかで撮ったアニタ・オディの写真に、別のところで撮影されたジュフリーの写真を切り抜いて合成してある。そして切り抜いた輪郭の上をペンでなぞって仕上げている。

この時代、録音自体はバンドとシンガーが同じスタジオに入って同録してるのは間違いないのにね。ジャケットのほうは別撮りってのがなんか面白い。まあここいらへんも中身のちょっとチグハグな感じを象徴してるようで、アルバムの「景色」として楽しんじゃえばいいのかもしれないけどね。

ところでこの盤はステレオなんです。

アニタ・オディがセンターにすっくと立ち、それをわりかし近いところでバンドが取り囲んで演奏してる雰囲気がとてもいいんだ。同時期のRVGのステレオ録音とはダンチの差。さすがハリウッド録音といっていいのかどうかわかんないけど、これはいいよねえ。

モノラル盤のほうがきっとお値段的には高いんでしょうし需要もあるんでしょうが、おれはステレオ盤を聴けてよかったと思う。

そしてこのヴァーヴのラベルにSTEREOPHONICってシネスコ風のロゴのあるのもこの盤で初めて見た。少なくとも今までウチには1枚もなかったな。しかもですね。ジャケットのほうはただHI-FIと表示されてるだけでどこにもSTEREOと印刷されてないんだよ。そしてレコード番号は〈MGV 8312〉となっている。

なのにラベルを見ると(下の写真)レコード番号は〈MG VS-6046〉だ。

はてさてコイツは最初っから工場でステレオ盤をモノラルジャケットに入れて横着したものか、たまたま間違えちゃってこうなったのか、あるいは後世高値のMONO盤と安いステレオ盤を入れ替えてばっくれた小悪党がいるのか。

まあでも、おれはステレオを聴けて良かったね。おかげで安かったんでしょうし。言うことありません。
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Commented by ihiga at 2017-07-26 21:33 x
ぼくは暫く前からアニタ・オディの歌が好きです。とくにヴァーヴ時代前半は良かったともいます。このレベルのステレオ盤Sings the Winnersをもっていますが、それを聴いたときにはゴジラさんと同じでそのよさに驚きました。
Commented by god-zi-lla at 2017-07-26 22:33
ihigaさん こんにちは。

なるほど〈Sings the Winners〉も雰囲気のいいステレオ録音なんですね。こんど探してみます。

それにしてもアニタ・オディは格好いいですね。とくに声量があるとか音域が広いとかではないシンガーですが、すごいスイング感に驚きます。
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by god-zi-lla | 2017-07-23 14:07 | 常用レコード絵日記 | Comments(2)