神はどーだっていいとこに宿る


by god-zi-lla

さようならチャールズ・ネヴィル

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以前から癌で闘病中という情報は知ってたんだけど、亡くなったというのを今月のレコードコレクターズ誌の訃報欄見るまで知らなかった。2018年4月26日死去。1939年12月28日生まれというから78歳か。

「実物」を二度見た。一度はネヴィル・ブラザーズで来日した東京ドームシティホールで2008年の10月、二度めは2012年5月ビルボードライブ東京、弟エアロンのソロツアーのバックバンドに加わって(つか実質バンマスか)。

ネヴィル・ブラザーズのライヴでは〈ベサメムーチョ〉をくねくねとやってくれましたけどゴリゴリ吹きまくるという感じのサックスじゃなかったね。いかにもニューオーリンズのライヴバンドというサービス精神満点な雰囲気だけど出過ぎず引っ込み過ぎず、バンドのサウンドの枠組みは長兄アートが作って次兄チャールズはあくまでその現場推進係という感じでもあったんだろうか。

そういうふうにチャールズのいた二つのライヴを思い返してみると、ネヴィル四兄弟にとって音楽っつうのは何よりもまず「家業」で「稼業」という感じのプロっぽさで出来上がってたような気がする。最高の演奏で客を楽しませて盛り上げるが本人たちはいたって冷静で、いくつも残しているライヴアルバムとライヴの「現場」にほとんど印象の違いがない。

ある意味、ビシっと様式化されててサプライズなんてものはどこにもないけど、そんなものなくても完璧なライヴが出来るという途轍もない自信みたいのがすごかった。あれはやっぱり生まれたときからニューオーリンズという特別な土地で一緒に育ったものにしかできない「兄弟の芸」というもんじゃあるまいか。

ネヴィル・ブラザーズ自体はもう何年も前に解散を宣言していたが、チャールズの死で永遠にあのライヴは見られないことが確定したわけだ。2014年にミーターズのリユニオンバンドで来日した長兄アートの様子を見て、全員揃って再度の来日というのはもうないだろうと予想はしてたけども(あのときはアートのほうが危ないと思ってた)、それでもやっぱり残念でならない。

ネヴィル兄弟それぞれの音楽というのはネヴィル・ブラザーズのときのサウンドとはみんな違っていて、そこがまた「家業」を思わせるところなんだが、上の写真のチャールズのアルバムも同様でニューオーリンズ風味はそこかしこに溢れてはいるけども、全体としてもっと穏やかでリリカルな雰囲気に仕上がっている。

三男エアロンはいまやスターシンガーだから数え切れないくらいのソロアルバムがあるけど、チャールズはこれ以外にリーダーアルバムがあるのかどうか、おれはよく知らない。もしかしたら、アルバムを作るということにあまり意欲のなかった人だったのかもしれない。

そういえばエアロンはスターだけどもブラザーズのステージでヴォーカルを独り占めしてたわけじゃなかった。末弟シリルが歌いアートも歌いチャールズも歌い、そういうヴァラエティのなかでのエアロンのあの声だった。

このチャールズのアルバムもチャールズが吹きまくるわけでもなく、やりたかったのはニューオーリンズっぽさに凝り固まらない柔軟なバンドサウンドづくりだったのかもしれない。ブラザーズでやってることはそこでやればもう十分だったんだろうな。

しかしまあ、聴くほうとしたらチャールズ自身のアルバムのなかでも〈ベサメムーチョ〉みたいなクネクネとエロいやつも披露しといて欲しかったなあなんて、今となっちゃ詮無いことを思わないでもないんだけどね。


さようならチャールズ・ネヴィル。
じゅうぶん楽しませてもらいました。





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左から。エアロン、アート、故・チャールズ、シリル。


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by god-zi-lla | 2018-06-21 15:44 | 常用レコード絵日記 | Comments(0)