この2か月で読んだ本の備忘録
2018年 11月 30日
ホルモン食って欠けたのかもしれない義歯の先端は歯医者で応急修復してもらった。しかしそのホルモン屋の向かいは日本を代表する日本料理屋のひとつで(当然おれは入ったこともない)、ここじゃあ歯が欠けるような固い料理なんて出すわけないよなあ。狭い道一本隔てただけでこの差ってのがなんかいいよね(よかねーよ)。
左から。
IQ ジョー・イデ/熊谷千寿・訳(ハヤカワ文庫)
宝島 真藤順丈(講談社)
文庫解説ワンダーランド 斉藤美奈子(岩波新書)
高橋悠治という怪物 青柳いづみこ(河出書房新社)
一千一秒物語 稲垣足穂(新潮文庫)
「IQ」つうのは主人公アイゼイア・クィンターベイのイニシャルで村上春樹の小説とはなんの関係もない。LAの下町のクソ真面目でアタマの切れる若い探偵(つか探偵仕事メインの何でも屋)とその相棒の同級生でちょいワル商売人がなんとなくホームズとワトソン君で、アフガニスタンからお帰りですか的な過去の出会いと現在進行中の事件がチラチラと入れ替わる。
この仕掛けも手伝ってかなり面白く読ませるけど、このデビュー作でミステリー小説の賞をいろいろ取った中年新人がこれをシリーズ化するとなれば(すると思うけど)次回作はどーすんのかと興味津々で待つつもりになってるくらいだから、これはやっぱり面白いってことだろうな。
敗戦後から本土復帰直前まで沖縄のウラ社会とオモテ社会の境目にいる若者のウチナーとヤマトとアメリカーをめぐる青春群像冒険活劇。
著者の意図がどうだか知らないが読後今日のニュースを見ただけで沖縄の戦後は全然終わってないよなということを再認識させる。乱暴で荒っぽくて今のコトバで昔を語る無理もあっちこっちにあるけど、それはひょっとしておれがトシ取ったってことの裏返しでしかないのかもしれないから置いとくとして、強引に最後まで引っぱってく(そしてテッテ的にエンタメ小説なのに読んでからも何かしら考えさせる)チカラはたいしたもんだ。
斉藤美奈子ワンダーランドです。やっぱつまらん文庫解説を実例とともにぶっ叩く部分が痛快なのよね。レコードCDの「ライナーノート」でも誰かこういうのやってくんないかな。
あー、でもレコードCDのライナーはいまどき文庫の解説ほど読まれちゃいないか。
いつも不機嫌そうな仏頂面で滅法美味い焼き鳥を出す頑固じじいの来歴を語る本のような本です。でもだって、舞台の上に見る「現在の」高橋悠治ってもろにそういう感じだもん。だけど昔の高橋悠治はそうじゃなくてすごいかっちょよかった。そのかっちょ良さとはなにかも著者はもちろん調べ分析して語る。いやまったくもって面白い。
しかもこの本を買うわずか10数分前に高橋悠治が初めてバッハを録音したレコードを買ったところだっただからさ。なんかもう読む前から面白い。
稲垣足穂は高校生のとき以来の再読だけど、一千一秒物語のほんの一部分をオボロに覚えてただけだな。でもこれが1920年代に書かれたというのがなんかすごいよ。書かれたしょっぱなから新しいとか古いとかいう判断から抜け出してる。
だけどさ。たまたま〈文庫解説ワンダーランド〉と並んじゃったから追記しときますけど、この文庫の解説書き出しにいきなり「稲垣足穂(一九〇〇 - )」だぜ。存命作家。いったいいつ書かれた解説かと文末を見れば「昭和四十四年九月」とありますがタルホ先生が亡くなったのは77年だから「昭和五十二年」。
おれきっと高校生のときこの解説ごと読んでるね。
奥付見ると「平成十六年」に改版してるのに解説は放置したらしいな。カバーも変わって(著者略歴にちゃんと没年も入ってる)、オビには〈ピース又吉が愛してやまない20冊!〉なんてってるのにさ。
嗚呼新潮文庫。
by god-zi-lla
| 2018-11-30 12:12
| 本はココロのゴハンかも
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