神はどーだっていいとこに宿る


by god-zi-lla

おじいさんの京みやげ その1レコード編

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旅といやあミヤゲであるが、旅先でレコード買うことはあんまりない。
だいち、奥さんと一緒に行動してんだからレコ屋に入るってわけにはいかない。

つかレコード屋に入れば、それが町の小さなレコ屋だろーが繁華街のビルのワンフロア占めてるようなメガストアだろーが、気の済むまでエサ箱というエサ箱を掘り続けたいじゃんか。どこから始めて、どこでヤメるか。いつ始めて、いつヤメるか。それは自分で決めたいじゃん。

ツレがいるとそれが出来ない。

ゆっくり見てていいよ、とか言われたって結局1時間もパタパタやってたりすりゃあ、ツレ自身もエサ箱掘りが道楽の人じゃないかぎり必ず顔色が変わってきます。だから言ったでしょ。

なので旅の道すがらにレコ屋があっても入らない。
ウッカリ見つけても見えなかったことにする。

エサ箱掘りは単独行にかぎる。これジョーシキあるね。

そしたら、寺町通りのとある賑やかでないあたりの雑居ビルに「レコードCD」などと書いてある看板を見つけてしまった。あっ、と思ったがそのまま例によってやり過ごそうとしたところ奥さんが、せっかくレコード屋さんがあるんだから見てったらなんて言う。

おれは、いや見てかないよ。買えば荷物になるし。レコード買いに京都来たわけじゃないし時間もないし、とかグズグズうだうだ言って通過しようとしたのに、奥さんを見れば何を思ったかもうずんずんその古くてちっこい雑居ビルへ入ってくぢゃないの。

入ったのはビルの2階のうんと小さなレコード屋で、肩から背中側へ斜めがけしてるショルダーバッグを脇へ回さないと反対側のエサ箱にバッグが当たっちゃう。そのくらい狭い店だった。

そもそも初めて入ったレコード屋を手ぶらで出たためしがないんです。必ずなんか買う。めぼしいブツがなくても買う。めぼしくないブツでも買う。それが人の道ってもんだと信じて疑ってないからね。

こうなったら仕方ない。

奥さんは片隅に並んでる本の棚を見てる(古本も置いてる店ってよくありますね。古着並べてる店だってあるし)。んー、まあとにかくチャチャっと見て、なんか掴んで買って出よう。こんな小さな店でも気の済むまでパタパタやってりゃ1時間はかかる。でもね、これから約束だってあるわけですし。

で、およそ10分、いや20分、 いや30分か。ざあーっと見たものの、とくにめぼしいブツはなかったので初めて見かけた2枚を掴んでレジへ行く(こういうとき、パタパタしなかったエサ箱にひょっとしてお宝があったんじゃないかと思っちゃうんだな)。

1枚はウィリー・ボボの〈BOBO'S BEAT〉。この人たしかラテンジャズとかサルサの人だったな。ライナーに初めてのアルバムと書いてあるように読める(英語の素養がないもんで自信ない)。

もう1枚がスコット・ジョプリンのラグタイムミュージックのアルバム〈THE RED BACK BOOK〉。シュリンクに貼ってあるステッカーに〈The Entertainer〉〈The Easy Winner〉〈The Rag Time Dance〉は映画〈スティング〉で流れる演奏と同じアレンジです、みたいなことが書いてある。

なんか、いかにも便乗商法なステッカーだな。

ひっくり返してライナー見てみると、プレイヤーは知らない人ばっかりだけど指揮はガンサー・シュラーと書いてある。なるほど、じゃあそんなイイカゲンなレコードではあるまいて。

つうわけで初めてのレコード屋さん、お近づきのシルシにレコード2枚しめて3千円ちょうどお買い上げ。

これでまあ奥さんお店そしておれ、三方一両損、あーいや、三方良し、か。

帰って聴いてみるとラグタイムのほうはじつにお行儀のいい演奏で、なんちゅうか普段乱暴な音楽聴いてるニンゲンからすると少し物足らない。

だけど、調べてみるとこれは73年当時けっこう売れたレコードみたいである。

ラグタイム音楽がちょっとしたブームになったのはもちろんあのロバート・レッドフォードとポール・ニューマンの映画〈スティング〉のおかげだけども、それに便乗するように当時ラグタイムのレコードがいろいろ出た。これもそういう1枚なのか、たまたま巡り合わせで売れたのか、ネットで見たこのレコードの国内盤のオビにはクラシックチャートで半年間ナンバーワンを走る、みたいなことが印刷されてる。

たしかにこの良くいえばお行儀のいい、悪くいえば退屈な演奏はクラシックファンにはちょうどいいのかもしれない。いやそんなこといっちゃイカンな。クラシック好きながらドシャメシャな音楽も滅法好きっつう知人は何人もいるもんなー。まあとにかく楽隊は粛々と演奏し、録音も楽隊がスピーカーの奥に並ぶクラシックっぽいサウンドになっている(いい録音だと思いますけどね)。

お行儀がいいってば、もう1枚のウィリー・ボボ選手。この人は奥ゆかしい控えめな性格の方だったんですかね。ラテンパーカッションの人のリーダー作だからもっとチャキチャキにはじけて、コンガやティンバレスが四方八方暴れまくるのかと思ったらそうでもない。

トランペットがクラーク・テリー、サックスにジョー・ファレルとライナーにあり、名前はわからないんだけどトロンボーンなんかもかなりの手練れで、ハモンドB3も相当にイケてる演奏でけっこうな聴き応えではあるんだ。

でもなー、リーダー作なんだし、もうちょっとパーカッションに暴れて欲しかったなあ。全体にジャズっぽいのはもしかしてウィリー・ボボの希望なのかしらん。クラーク・テリーとかジョー・ファレルとかってビッグバンド・プレイヤーの手練れ連中にどこかお任せ的な雰囲気もあって、NYのラテンだぁー! サルサだあーっ! っていうようなアクはあんまりない。これはラテン風味のリビングルームミュージック的ビッグバンドジャズというのが間違いのないとこかな。

だけど、これはこれでなかなかの味わいだよ。しかもこういう音楽はわが家のランサーL101に良く合ってるってことがバレバレである。とりあえず小難しい講釈は抜きにして(ナット・ヘントフがライナー書いてたりしない)、あんまり騒がしくもなく、だけどそこそこメリハリの効いた明るい音楽をアメリカのアッパーミドルのパパさんがリビングルームでくつろいで聴くって感じ。

奥さんに引っぱられてレコード屋さんに入るってのも悪くなかったな。
(つぎは注意。図に乗るのがキケン)





(写真のニッパー君は本文とカンケイありません。どかすのメンドくてね)


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by god-zi-lla | 2019-09-08 08:54 | 常用レコード絵日記 | Comments(0)