歴史に残るような接戦だとおれは思ったアルゼンチンvsフランス
2019年 09月 22日
9月21日 16:15 東京スタジアム
17分 7 - 3 フランスT/C
21分 14 - 3 フランスT/C
29分 17 - 3 フランスPG
40分 20 - 3 フランスPG
41分 20 - 7 アルゼンチンT/C
53分 20 - 15 アルゼンチンT
60分 20 - 18 アルゼンチンPG
68分 20 - 21 アルゼンチンPG
69分 23 - 21 フランスDG
つうわけで期間中、味の素と呼んではいけない東京スタジアムだが南千住じゃなくて調布の飛行場の近所のほうである。
このカードは絶対接戦の面白いゲームになると踏んで高いチケットを先着順販売になってから、つまり予約抽選で売れ残ったのを買い息子を誘って行ったんだが、前半なんだかアルゼンチンのディフェンスがバタバタで機能せず、フランスに勝手気ままに走りまくられて20対3の一方的なペースになっちまった。
なんか、これじゃあまるでおれがウソついたみたいじゃんかと息子に向かってボヤいたくらいである。
しかし後半開始早々アルゼンチンはフランスゴール直前のラインアウトで形成したモールを押し込んだ。チームにとってこのゲーム初めてトライを決めてからのアルゼンチンFWは、世界屈指の名に恥じないパワーでフランスを圧倒しはじめ、ディフェンスでもフランスに翻弄されることがなくなった。
そしてとうとう終了12分前になってアルゼンチンはPGを決めてフランスを逆転したもんである。
おれはどっちを応援してるわけでもないけど、やっぱこういう展開になってくれないと、このゲームはぜってー見応えあるぜなんていかにもワケ知り顔でずっと言ってたおれの立場ってモンがありません。
でもまあ、こんなに面白いゲームってのはそんなにあるもんじゃないよといえる展開になったのは間違いない。
いやしかし、ホントに面白くなったのはここからなのであった。
アルゼンチンがPGで逆転した直後のキックオフからフランスがアルゼンチン陣内中央付近に入り、22mライン上くらいの(このへんうろ覚えだけど)ラックから出たボールをフランスSOがDGを決めて再逆転してしまったんである。
ドロップゴールなんてものはこういう1点を争う接戦の、しかも後半時間のなくなってから狙うもんだと相場は決まっておるわけでありますが、おれはそれを初めて眼前でしかもこんなビッグゲームで見たもんだから、ちょっとじゃないくらい興奮しちゃってね。
いやもう、4万4千の大観衆も後半の後半はもう大興奮でスタジアムが揺れている。
で、ここらあたりで残り時間は10分を切ってきた。フランス逆転したといったってわずか2点差。
そして残り時間2分を切ってフランスは自陣やや深いところでボールを得てラックを形成。
終了まで2分を切ってんだから、これはもうラックサイドをFWが数度突いてボールを保持し続ければタイムアップのサイレンが鳴り(あーいや、このワールドカップではヘンな銅鑼のような音が響くんだけど)、それを聴いたところでスクラムハーフがタッチに蹴り出せばノーサイドっつう、それがフランスの勝利へのフツーの段取りだと思って見てたらなぜかその銅鑼の鳴る前にフランスSHはボックスキックをアルゼンチンへ向かって蹴り上げたんである。
なにかの勘違いだったのか。
もうこのへんで終了1分前くらい。ボールはハーフウェイラインをややフランス陣に入ったあたりのところでアルゼンチンに渡る。しかもこのボールへの寄りでフランスがオフサイドだったかキャッチャーへの危険なタックルだったかでペナルティ。
おいおいおいおい、なにやってんだフランス。
こうなればアルゼンチン。敵ゴール直前のタッチを切って最後のワンプレイでマイボールラインアウトから自慢のFWがモールを押し込んで逆転つう筋書きだろうなと、おれは疑いもせず固唾を飲んで見てたんである。
そうしたらアルゼンチンのゲームキャプテンはショットのジェスチャーじゃんか。つまりゴールキックを狙いますとレフェリーに申告している。
だけどハーフウェイラインを少しフランス陣に入ったややメインスタンド寄りの位置だから、ゴールポストまで直線距離ならゆうに50メートルはあるっつう位置だからさ。こういうインターナショナルなレベルのゲームだったら入らない距離と角度じゃないけど、外す可能性だって半分くらいはある。
んー、これもまたいかなる判断によるものなりや。
で、そのペナルティゴールを蹴るところか蹴ったところかあたりでタイムアップの銅鑼が鳴るんである。
入ればアルゼンチンが24対23と逆転勝利、外せばそこでフランスの2点差勝利が決まってノーサイドの笛。
と思って見てたらボールはポールの右にそれた。しかしゴール失敗したのにレフェリーはノーサイドの笛を吹かない。そこでおれはやっと気づいたんである。ゲームを終わらせるためにフランスチームはドロップアウトを蹴らなければいけない。なにしろアルゼンチンに与えられたペナルティのプレイはこの時点では完結してないんである。
そしてドロップアウトというのは直接タッチに蹴り出してはならないとルールブックに書かれている。
あーそういうことだったのか。アルゼンチンは逆転勝利へ2プレイあるほうを選んだわけだ。PGが入ればそこで勝ち。よしんば外れてもボールがゴールラインを越えさえすればフランスはドロップアウトでリスタートせざるを得ない。しかもそのボールを直接タッチに蹴り出すことが出来ない以上、もう一度アルゼンチンにボールが戻る。
もうタイムアップですから、アルゼンチンは絶対にマイボールをキープせねばならない。だけどキープし続けるのであれば明日の朝までだってゲームは終わらない。そうだったのかー。勉強になるなあ。
しかし残念ながらアルゼンチン必死の猛追もドロップアウト処理後、たぶん3フェイズ目くらいのラックをフランスがターンオーヴァーしてSHがタッチに蹴出したところでおわってしまう。そこでノーサイド。
たぶんアルゼンチンにしてみれば依然フランス陣内にいるわけで、そこで愚直にマイボールラックを形成し続けていれば、そのうちフランスのディフェンスに穴が開いてトライチャンスが巡ってくるか、そうでなければフランスの焦りを誘って再びペナルティを得て、先ほどの繰り返しのようにゴールキックを狙って決まれば逆転勝利、そうでなければまたもやドロップアウト…。
ノーサイドの笛が鳴ると、アルゼンチンのFWがフランスのFWにつかみかかって乱闘になりかけた。あれは多分ラックのなかでフランスが「不正に」ターンオーヴァーしたと見えて怒りを爆発させたんだろうな。ちょっと後味は良くないが、まあノーサイドの笛が鳴れば敵も味方もないなんてのは所詮絵に描いたビールみたなモンだからね。
でもすごいゲームだった。
それにしてもワールドカップってのは別物ですね。もう雰囲気から何から、最寄り駅の飛田給(とびたきゅう)を降りた瞬間から普通の国際試合とは全然違う。
冒頭の写真は駅前でビール呑んで踊るアルゼンチンのサポーターの皆さま。左隅にちょこっと見えるブルーの人たちはフランスのサポーターで、この時点ではアルゼンチンの圧勝だったんだけどね。
スタジアムはもうお祭り状態でフランス・アルゼンチン入り乱れてコスプレというか仮装行列というか、まあそういう人たちがハイネケン呑んで(ビールはハイネケンしか売ってない)歌い踊ってる。二つめの写真のかぶり物のフランスおじさんなんか大人しいほうである。ナポレオンは推定百名はいましたね。馬に乗ったオジサンとか(もちろん馬の着ぐるみですど)。
試合終了後はフランスのサポーターがあちこちでフランスの六甲おろしを歌いまくって全然帰らない。ハイネケンは試合終了後も外の通路で売れまくっている。
ちょっと思いましたね。こりゃあ今度オーストラリアとかニュージーランドでワールドカップがあるときには、わざわざ飛行機に乗って行ってもいいかなって。そう思えるようなお祭りです。
もうひと試合、チケットを買ってある。大散財だけど、この日のようなゲーム見られるんだったら惜しくない。しかもこのお祭りだもん。
4年に一度じゃない。一生に一度だ。
ですよねー。
---
写真3枚目は試合開始のキックオフ(仏キッカーはSOヌタマック)。
その次はファーストスクラム。
以下、仏SHデュポンがボックスキック蹴る瞬間。
アルゼンチン、スクラムからの攻撃。
ちなみに同夜奥さんと娘が渋谷に出かけておったところ、水色と白のシマシマのガイジンとブルーのジャージのガイジンが多数スクランブル交差点付近で歌い踊っていたそうである。
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虎吉
at 2019-09-24 22:26
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ゴジラ殿
こんばんは
フランスVsアルゼンチンの実況ありがとうございます
試合の流れなどがよくわかりました
テレビのない小生 仏とアル はスコアだけは新聞で見たけど
観戦記読んでないな〜 と思ったら 確認したら観戦記は豪州と南アだけでした
あたくしがびっくりしたことの1つは 逆転のDG ハイライトで観ました
あんなことができる あるんだ〜(ほかもあるけど省きます)
生でスタンドでご覧になったんじゃ 2、3杯のビールでは酔えませんね
それにしても 仮装行列でビール祭りなんですね いいですね
ナポレオンもコケコッコーおじさんもたくさんスタンドにはいたんでしょうね
うむ〜あたくしも スタンドで観たくなりました
こんばんは
フランスVsアルゼンチンの実況ありがとうございます
試合の流れなどがよくわかりました
テレビのない小生 仏とアル はスコアだけは新聞で見たけど
観戦記読んでないな〜 と思ったら 確認したら観戦記は豪州と南アだけでした
あたくしがびっくりしたことの1つは 逆転のDG ハイライトで観ました
あんなことができる あるんだ〜(ほかもあるけど省きます)
生でスタンドでご覧になったんじゃ 2、3杯のビールでは酔えませんね
それにしても 仮装行列でビール祭りなんですね いいですね
ナポレオンもコケコッコーおじさんもたくさんスタンドにはいたんでしょうね
うむ〜あたくしも スタンドで観たくなりました
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虎吉
at 2019-09-24 22:46
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引き続き恐縮です
ご返事は無用です
また かなりラグビーの実践を観ていないことが 恥ずかしいです
「ゲームを終わらせるためにフランスチームはドロップアウトを蹴らなければいけない。」
ゴジラ殿の観戦記事で ここいらから 「?」となりました
ドロップアウトとキャリーバック う〜 絵柄が 出てこないのです
すみません 汚してしまいました
でも 今回のアップは凄いです 読ませるコラムが書ける記者はいても
読んでなるほどという観戦記事は難しい と思っています
失礼しました
ご返事は無用です
また かなりラグビーの実践を観ていないことが 恥ずかしいです
「ゲームを終わらせるためにフランスチームはドロップアウトを蹴らなければいけない。」
ゴジラ殿の観戦記事で ここいらから 「?」となりました
ドロップアウトとキャリーバック う〜 絵柄が 出てこないのです
すみません 汚してしまいました
でも 今回のアップは凄いです 読ませるコラムが書ける記者はいても
読んでなるほどという観戦記事は難しい と思っています
失礼しました
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god-zi-lla at 2019-09-25 00:13
虎吉さん こんにちは。
次回、覚えていればとことん京洛でご説明申し上げます。
もし機会があったら是非花園で観戦して下さい。
じつに晴れがましい、ラグビーの祭典です。
朝日は惠藤・森田、ふたりの元ワセダラグビー部のロートル記者のコラムが、古臭くて味わい深いですね。
次回、覚えていればとことん京洛でご説明申し上げます。
もし機会があったら是非花園で観戦して下さい。
じつに晴れがましい、ラグビーの祭典です。
朝日は惠藤・森田、ふたりの元ワセダラグビー部のロートル記者のコラムが、古臭くて味わい深いですね。
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虎吉
at 2019-09-29 22:36
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ゴジラ殿
こんばんは
戻り夏日(なんて言葉ありませんが)で 日差しは暑いしちと蒸す京阪
そんな夕暮れに 日本金星を 赤提灯でしりました
つぶやきを拝見すると ディフェンスですか 勝因は?
ハイライトではわからないですね やはり
ですので雰囲気を味わいたく
とにかく現場への精神で チケット購入を検索しているのですが…
還暦祝いと思って九州へ と思ってもホテルなし
飛び道具(うっ 意味不明かな)しかありませぬ
こんばんは
戻り夏日(なんて言葉ありませんが)で 日差しは暑いしちと蒸す京阪
そんな夕暮れに 日本金星を 赤提灯でしりました
つぶやきを拝見すると ディフェンスですか 勝因は?
ハイライトではわからないですね やはり
ですので雰囲気を味わいたく
とにかく現場への精神で チケット購入を検索しているのですが…
還暦祝いと思って九州へ と思ってもホテルなし
飛び道具(うっ 意味不明かな)しかありませぬ
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god-zi-lla at 2019-09-30 08:05
虎吉さん
やっぱり第一にディフェンスが最後まで一度も崩壊しなかったのが勝因だと、おれは思います、
「崩壊しない」というのは、ひとつに組織ディフェンスの意思統一が保たれる。ふたつめはひとりひとりのタックルの精度の高さを最後まで維持した。それから、それらに含まれる部分もありますが、ディフェンスで反則を犯さない。
それが結果としてアイルランドのアタックの選択肢を減らし、焦りと反則を誘って、それを起点にしてジャパンが得点したってことだと思います。
勝因としては今までの攻撃パターンをほぼ捨てて、キック(キックパスを含め)をあまり使わないハンドリングラグビーに徹したこと。
それと、大きいのはフォワードがセットプレー、とくにスクラムで力負けしなかったことですね。
いずれにせよ、あのロースコアの接戦を制したのは、ひょっとして2015年のスプリングボクス戦勝利よりも価値が大きいんじゃないでしょうか。
どう見たって、試合内容はトップレベルの強豪同士の対戦でした。
それが一番すごい。
たぶん勝ち負けよりも。
やっぱり第一にディフェンスが最後まで一度も崩壊しなかったのが勝因だと、おれは思います、
「崩壊しない」というのは、ひとつに組織ディフェンスの意思統一が保たれる。ふたつめはひとりひとりのタックルの精度の高さを最後まで維持した。それから、それらに含まれる部分もありますが、ディフェンスで反則を犯さない。
それが結果としてアイルランドのアタックの選択肢を減らし、焦りと反則を誘って、それを起点にしてジャパンが得点したってことだと思います。
勝因としては今までの攻撃パターンをほぼ捨てて、キック(キックパスを含め)をあまり使わないハンドリングラグビーに徹したこと。
それと、大きいのはフォワードがセットプレー、とくにスクラムで力負けしなかったことですね。
いずれにせよ、あのロースコアの接戦を制したのは、ひょっとして2015年のスプリングボクス戦勝利よりも価値が大きいんじゃないでしょうか。
どう見たって、試合内容はトップレベルの強豪同士の対戦でした。
それが一番すごい。
たぶん勝ち負けよりも。
by god-zi-lla
| 2019-09-22 09:03
| 物見遊山十把一絡げ
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