神はどーだっていいとこに宿る
by god-zi-lla
SPレコード本末転倒日記 あるいは、音は二の次にしてでも聴きたいものをすぐ聴きたいだけなのよ。
2020年 03月 31日
そんなつもりは全然なかったのに、なんかちょっとセピアっぽい写真になっちゃった。たしかに写ってるレコードは古いけどレコードそのものが「セピア調」なわけはないんである。でもまあいいや、SPレコードですから。 つうわけで、ぐるっと針を回せばSPレコードも聴けるGEのバリレラカートリッジを買っちゃったあの時 、せっかく聴けるようになったんだからSPレコード買って聴いてみるしかないじゃんか。とにかくおれはそのとき生まれて初めてSPレコードを買った。 買って聴いてみると、わかってはいたんだがLPレコードにはない独特の味わいというか色香というか、えもいわれぬ何かがSPレコードを再生した音には色濃くあってね。そんなこんなで(どーせそんなことになるだろうとは予想してたものの)、つい最初の1枚を買ったあと2枚3枚とSPレコードを買うことになってしまったんである。 いっぽうでGEのバリレラカートリッジで聴くモノラルLPレコードにはダイレクトで若々しい音の楽しさがあるんだけど、かけるレコードによっちゃあ少し荒削りというかガサツというか、ようするにちょっと心穏やかに聴き続けられないレコードがあるのに気づいてしまったんであった。んー、そうするとモノラルLPはやっぱしオルトフォンCG25Di で聴きたいよ。 だけどね。モノラルLPは元のとおりCG25DiってことにしちゃうとSPレコード聴こうと思ったときにややこしい。GEはカートリッジ上部に切り替え用の回転軸が突き出てて、コイツをグリっと180度回してSPかLPどちらかの針先をセットするわけだ。これはGEだけ使ってるぶんにはすこぶる便利なメカニズムなんだけど、その回転軸があるため専用のヘッドシェルにしか取り付けられず、そのヘッドシェルのなかでカートリッジを上下にも左右にも動かせない。もしCG25DiとGEを取っかえ引っかえしようとすれば、針圧はもちろんオーバーハングからアームの高さから何から何まで、その都度調整し直さなきゃなんないわけだ。 はっきりいってすごいメンドい。そんなこといちいちやりたくない。でもモノラルLPもSPも分け隔てなく聴きたい。聴きたいと思ったときに速攻で聴きたいものを聴きたい。 で写真に写ってるのはオーディオテクニカ製AT-MONO3/SPつうカートリッジです。つまりなんちゅうかまあ、SPレコードの再生も出来るカートリッジがあるからSPレコードを買ったのにもかかわらず、こんだはSPレコード専用のカートリッジまで買い込んでしまったわけだ。 LPからSPへ、あるいはSPからLPへ。カートリッジをヘッドシェルごとパパっと付け替えるだけで、一切なんの再調整もせずに聴きたいレコードを聴けるようにしたいと思ったらこういうことになっちゃった。 オルトフォンにはCG65Diつう、CG25Diとは兄弟分のSPレコード用カートリッジがちゃんと現役でカタログに載ってます。姿形はまるで同じだ。コイツらなら多分なんの細工もなしに取っかえ引っかえできるはずだ。でもね、高い。ちゃちゃっと差し替えるだけでLPもSPもすぐに聴けるようにしたいっつう横着な願望だけで9万円もするカートリッジを買う勇気も予算もおれにはない。これがSPレコード五百枚も千枚も持ってるとかいうなら別だけどさ。せいぜい両手で数えられるくらいしか持ってないんだから、それはやっぱバチ当たりってもんだろ(いずれ五百枚になったアカツキには晴れて…、なーんてことを考えてはならぬのぢゃ)。 そのAT-MONO3/SPをフィデリックス製のヘッドシェルMIYCHAKUに取り付ける。MITCHAKU、通称みっちゃくん(おれしかそう呼んでませんけど)は今おれが一番気に入ってるヘッドシェルだというのはもちろんだが、コイツの自重がかなりあるというのが大事なんである。 自重33グラムくらいあるオルトフォンCG25Diと、なんの調整もぜずに取っ替え引っ替えしたいのよ。オーバーハングはオッケー、オルトフォンと数値を合わせるのになんの苦労もありません。高さもまあ許容範囲だな。 CG25Diは針圧4グラムで鳴らしてますが、オーディオテクニカAT-MONO3/SPの針圧印加範囲は3.0〜7.0グラムで標準5.0グラムと説明書にある。じゃあ5グラムくらいで使うのがいいとこかな。なにしろマイクロMA505S の針圧印加目盛りは3.0グラムが最大である。オルトフォンの4グラムだって、1グラム分はバランスウェイトを前に出して加えるっつうインチキをやってるわけだ。ホントは7グラムって針圧をぐいっとかけてやりたい気がしないでもないんだけど、さすがにトーンアームの仕様の倍以上かけるってのはね。でも「標準」の5グラムはかけてやりたい。 しかしAT-MONO3/SPってカートリッジがけっこう軽い。説明書には6.8グラムとある。ヘッドシェルMITCHAKUが16グラムと重量級ではあるものの、カートリッジと足したって22.8グラム。CG25Diより10グラムくらい軽い。コイツらをなんの調整もせずに付け替えるだけで使えるようにしたい。 で、このようにした。まずCG25Di装着状態で針圧を実測4グラムでセットする。もうトーンアームはいじくらない。それをAT-MONO3/SP(とMITCHAKU)に付け替えたとき針圧が実測5グラムになるようにする。すなわち自重の軽いぶんを補ったうえで、針圧の不足分1グラムを補う。 鉛板を乗っけてやりましたさ。みっちゃくんの背中にたっぷりと。写真のとおりでございます。ジャンク箱ひっくり返したら出てきた厚さ1ミリメートルくらいの鉛板から、ヘッドシェルの背中に乗っかるサイズを切り出して貼り付けた。1枚じゃ全然足らなくて二枚重ねにしたところ、まだ少々足らない。仕方ないのでさらに小さいカケラを切り出して乗っけてみると、ようやくなんとかなった。 それをふつうの事務用両面テープで取り付けてやろうと思ったら粘着力がまるで弱く、鉛のカタマリが「みっちゃくん」の背中からズリ落ちそうになってアセった。そこでコレならどーだとブチル系のちょい肉厚の両面テープで貼り付けてみる。その状態で実際の針圧を計ってみたところ5.3グラム。テープの重さが加わってしまった。かまうもんか。 つうのが上の写真なんでした。 まあ神経こまやかで物理法則を重んずる真っ当なオーディオマニアは絶対こんなことしない。そうでしょうそうでしょう。でもこれでCG25GiでモノラルLPも楽しめるし、SPレコードも心おきなく買えます。いや、聴けます。めでたしめでたし。 つうわけで、うまく出来た記念にSPレコード買っちゃった。へへへ。いかんね、どーも。レスター・ヤングのA面が〈Foggy Day〉、B面に〈Down 'N Adam〉。メンバーはジョン・ルイスp、ジーン・ラミィb、ジョー・ジョーンズds。タイトルには〈Lester Young and His Orchestra〉とあるけどクァルテット。1951年5月8日ニューヨーク録音だからもうLPの時代だ。 レスター・ヤングの最盛期は兵隊に取られる前だっていうけど、おれはいつの時代のレスター・ヤングも好きだなあ。優雅でしなやかで、なおかつ男らしい。でもSPだから、なんかあっけなく終わっちゃう。え? そこまでなの、みたいな。しかしきっと慣れちゃえば、そこもまたSPレコードのいいとこと思えてくるのかも知れないな。 Mercuryレーベルでノーマン・グランツのプロデュース。同じレコード番号〈8946〉のままClefレーベルのヤツもあるけど、グランツが〈Clef〉を作ったのが51年というからMercury盤のほうが先なんだろうな。 しかし、いい音だわ。たまんないよ。