神はどーだっていいとこに宿る


by god-zi-lla

正月早々、レコード(じゃないやつ)でも聴くか ポリカーボネート編

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CDも相変わらず(減ってはいるものの)買ってる。2021年もたぶん変わらないね。なんでもかんでもハイレゾでダウンロード出来るわけじゃないし、サブスクですべてが聴けるヨノナカにもなってない。

なんつうかハイレゾやサブスクで聴ける音源つうのはほぼ「公式」のものとして認知されたものに限られてるわけだ。そのうえそういう「公式物件」が全部空を飛んでるわけでは当然なくて、シカトされたままどっかでフテ腐れてる音源てのが山ほどある。

マイルス・デイヴィスの来日公演のディスクが去年いくつか出たってことに、これも師走に入ってから気づいて買ってみた。LPもプレスされたようだけど、こういう「発掘音源」ってすごく音が悪かったりすることも多いから割高なLPはいちおう避けてみたりする。

73年と75年の新宿厚生年金のコンサートがそれぞれ2枚組のCDになっている。あと80年代初頭の「よみうりランド」のライヴ・アンダー・ザ・スカイの音源も出てるらしいが、それは今のところ買ってない。

やっぱホラ、「厚生年金」ってところにグッとくるじゃんか。来ない? そうかなあ。

マイルスは一度だけ来日コンサートで聴いたんだけど、それが80年代後半の新宿厚生年金だった。マイルスは東京では「厚生年金」が多かったんじゃないかしらん。つか、学生のころからいろんな来日ミュージシャンを「厚生年金」で聴いたもんだった。いやもちろん日本のミュージシャンもいっぱい。

話が飛んですいませんけど、先年新宿文化センターでやった山下洋輔トリオ50周年コンサートなんてのは、ホントだったら厚生年金でやるのが当たり前だよな。あの名ホールが、ぶっ壊されて売っ飛ばされておれはマジ悲しいよ(いまはヨドバシの本社が建ってるらしいな)。

それはともかくとしてだな。75年の厚生年金のほうはあの〈アガルタ〉と〈パンゲア〉が大阪フェスティバルホールで録音された同じ日本ツアーの録音なのだった(厚生年金のほうが日程は早い)。だからメンバーもそのふたつの名盤と同じ。演奏も似てる。

上の写真は73年の厚生年金のほうで、メンバーはマイルスのほかデイヴ・リーブマンss,ts,fl、ピート・コージーg,perc、レジー・ルーカスg、マイケル・ヘンダーソンel-b、アル・フォスターds、エムトゥーメperc。75年のサックスはリーブマンからソニー・フォーチュンに替わってる。

アガルタとパンゲアもそうだけど厚生年金も含めて75年のツアーの演奏のほうが鋭くて緊張感が高い。チリチリとして近づくと火花が飛びそうな雰囲気がある。それに比べると、たんにおれの感想だけども73年の厚生年金のほうが大らかで少しだけユルい気がする。牧歌的といってもいいかもしれないし73年のほうが少し古い(マイルスの音楽としては、だ)のかもしれない。そこがすごくいいんだよ。

これはおれの妄想だけどデイヴ・リーブマンがそこはかとなくコルトレーンみたいな雰囲気を醸し出す時間があって、マイルスはそれが気に入ってたんじゃあるまいか。なぜかそう思えてならない。根拠はなにもないんだけどね。

リーブマンはバンドに雇われたはじめの頃自分がなにを求められてるか判らなくて、マイルスに自分のサウンドはバンドに必要ないんじゃないかと尋ねたことがあるというんだ。そしたらマイルスが、オマエがサックスを吹くのを客は見たいんだよ、みたいなナゾの返事をしたとリーブマンが語ったのをどっかで読んだ(マイルスの評伝か、なにかアルバムのライナーか)。

「見たい」つうのがなんかミュージシャンに失礼な言い方な気がするけども、ひょっとしたらそれは「客が」じゃなくてマイルス自身がリーブマンが隣りでプレイしてるのを気に入ってたってことなんじゃないか。

なんつう妄想を、この73年厚生年金の2枚組CDを聴きながら抱いてしまうんであった。そういうなんだか、柔らかいインティメイトな雰囲気がコンサート全体に漂ってる気がするんだよ。ようするにまあ、おれがこのアルバムを気に入ってるってだけのことかもしれないんだけどさ。73年のインティメイトな雰囲気と75年のヒリヒリした感じのちがいは、デイヴ・リーブマンとソニー・フォーチュンのちがいのような気がしてならない。リーブマンはたしか自分でマイルスのバンドを去ったんで、クビになったわけじゃなかったと思う。コルトレーンやショーターと同じく。

それとこのCDはびっくりするくらい音がいいんだよ。75年のほうも悪くないけど73年は圧倒的にいい。ひょっとするとアガルタやパンゲアよりも良い音なんじゃあるまいか。ライナーによるとこの73年の録音はNHKがテレビの特番でファーストセットのみをオンエアしたそのマスターだっていう。NHKはセカンドセットも収録してあって、だからそっちは初めて正式に世に出たらしい。

アガルタとパンゲアは日本のCBSソニーが録音して米Columbiaが仕上げたらしいからあのサウンドが当時のColumbiaの公式マイルスサウンドで、たぶん73年のこれはNHKスタンダードの音なんだと思う。

ちょっとマイクがオフ気味で厚生年金の大ホールの残響を拾っている感じがする。だからライヴ感がけっこうナマナマしい。かといって演奏が不明瞭ってことは全然なくてキレもパワーもある。とくにマイケル・ヘンダーソンのエレキベースがすごくいい。

それにしてもこれをよく貪欲なグローバル会社Columbia(つかSONYか)が放っておいたもんだ。れいの〈The Bootleg Series〉のひとつとして出して全然おかしくない音源じゃんか(ディランだけじゃなくってマイルスのもVol.4くらいまである)。だけどあのエヌエッチケーがマスターテープを提供したってことは現時点での法的問題はクリアされてるってことだろうな(添付の日本語解説にはハッキリNHKと書かれてる。ヤバいときは普通出どころをボカす)。

しかしね、こういう放送録音てのはいつ権利関係がひっくり返るか判んないからな。出たときにさっさと買っとかないといつ消えてなくなるか判ったモンじゃない。このアルバムもけっこうグレーゾーンにあるんじゃないかって気がする。

よみうりランドのやつも買っとくかな。






MILES DAVIS SEPTET LIVE IN TOKYO 1973 (HI HAT HH2CD3140) 2CDs






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by god-zi-lla | 2021-01-04 13:28 | 常用レコード絵日記 | Comments(0)