神はどーだっていいとこに宿る
by god-zi-lla
2年も隠れてんじゃねぇよ、って当然ながら自分が悪い(Marc Ribot / Songs of Resistance 1942 - 2018)
2021年 02月 07日
いや、マーク・リーボーが作ったこれは「反トランプ」アルバムなのだった。れいによって国内盤は出てないんだけど、邦題なら「抵抗の歌1942〜2018」だな。2018年にリリースされた45rpmの2枚組。じつはね。その年の秋口に買って何度か聴いてしばらくして、もっぺん聴いたらブログに上げてやろうと棚から引っぱり出してみたところ、ありゃま、2枚組のLPのうちの「2枚目」がジャケットに入ってないじゃんか。 歌詞が印刷された紙製のインナースリーヴに入ってたんだが、そのスリーヴごと失踪した。いやまあレコードが「失踪」するなんてことはありえないわけで、気が急いてたのかただ横着しただけなのか、トンマなおれは「2枚目」をジャケットに戻さず無意識のうちに棚にひょいと刺しちゃったらしい。 それっきりいくら捜索しても出てこない。付近の聴き込み捜査もテッテ的に行った(なんだそりゃ)。それでも見つかんない。んー、参ったねこりゃ。だけどアレだな。2枚組のうち1枚しかないレコードって聴く気になれないもんなのね。あははは、初めて知ったよ。当然ブログに書く気も完全に失せた。それから2年。 それが突然出てきた。トランプが落選してバイデンの就任式典が終わって数日、ぜんぜん関係ないレコードを取り出そうと棚を物色してたら探しモノに密着した「2枚目」がひょっこり姿を現したんであった。やや、オマエはひょっとしてこの2年レジスタンス運動にでも参加してたのか。 ジャケットじゃなくペラペラのインナースリーヴに入ってるだけだから「背」がなくてぜんぜん見えない。しかもそれが紙質のせいか隣りのジャケットに(正確にはビニールの外袋に)ピッタリ貼り付いてた。そのうえ「潜伏場所」は本来あるべき棚の一段下なのだった。これじゃあ見つかんないわね。 そりゃあレコードを棚のなかで見失うことはしょっちゅうだし、何年も前に「失踪」して未だ発見されないレコードがまだ何枚かあるくらいだから、見つかっただけでもヨシとせねばなりませんけど、それにしたって2枚組のカタワレだけ消えたってのはこれが初めてだった。 なので「発見記念」にあらためてブログに上げておくことにした。 冒頭からリーボーのノイジーなギターを交えたスピリチュアル・ジャズでフェイ・ヴィクターというシンガーが〈We Are Soldiers In The Army〉を歌う。続いてトム・ウェイツがイタリアのレジスタンス運動に加わろうとする男の歌をおどろおどろしくも切なく歌い、あとはグランジ風のラウドなロックもあればカントリーもあり、メキシコ風歌唱にラップが重なるトラックなんてのもあったりする。 そしてそれら全部が「自由」やデモクラシーのために戦うひとびとの歌と、いわれなき差別や偏見の犠牲になったひとびとの歌だ。だけど非常にシリアスでありながら教条的で一本調子な(たとえばフォークギター1本で弾き語りするだけみたいな)メッセージソング集じゃないから繰り返し聴いても飽きない。 いやしかし考えてみれば「2枚目」の失踪事件がなく、2年前にこのアルバムでブログの記事をデッチ上げようとしたら当然音楽以外の楽しくないことをあれこれ書くハメになってたよな。だけどいまや張本人がホワイトハウスを追われ、世界はとりあえず当面の危機をしのげたたわけだ。なのでこのアルバムもようやく「音楽」として、とりわけ歌のアルバムとして楽しむことが出来るようになったともいえる。音楽だって、レコードだってホントだったらそのほうがシアワセにちがいない。そういう意味じゃこの2年「失踪」してたのも悪くなかったかもしれない。メデタシメデタシ。 ところでこのアルバム、あくまでも 'Songs of RESISTANCE' で 'Songs of PROTEST' ではない。マーク・リーボーはゲートフォールドの内側にそう書き付けてわざわざ念を押してる。トランピズムには「抗議」じゃなく「抵抗」しようと。 せんだってのワシントンの暴動をニュースで見てしまった今となったら、たしかにリーボーの言うとおりのアメリカだったのかもしれないって思うほかない。トランプの2期目がなくなったことで、アメリカではいろんなことがギリギリ回避されたってことか。 二度と戻って来るんじゃねえぞトランプ。 Songs of Resistance 1942 - 2018 GOODBYE BEAUTIFUL (ANTI 045778760411) 2LPs/45rpm