ストローぶくぶくの音楽は冗談じゃない
2021年 06月 21日
フト左のタグ一覧を見ると「へんなレコード」つうのがある。そんなのやってたかもなー、でもすっかり忘れてた。そしたら二、三年前に買って「またやっちまった」とガックリきたこのレコードをたまたま思い出したので引っぱり出した。以下それだけのことです。すいません。
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ヒゲのおっさんがソーダかなんかのグラスにストロー突っ込んでブクブクやってるイラストのジャケットってだけでもうじゅうぶんヘンなレコードでしょ。
これ見た瞬間、
なんじゃこりゃ。ひょっとしてスパイク・ジョーンズみたいな冗談音楽のバンドか。
と思うのが自然だ。おれは自然にそう思った。
冗談音楽、好きなのよ。スパイク・ジョーンズはもちろん好きだし、クレージーキャッツも好きだし、ドリフだってドンキーカルテットだって好きだし、玉川カルテットも好きだし、ホフナングの音楽祭だってまあ嫌いじゃない(ホフナングの漫画同様おれには『高尚』すぎて面白さが半分くらいわからない)。
それはともかく、このジャケット見て冗談じゃない音楽やってると思うんだったら、そのほうがよっぽどヘンだと断言して間違いない。
でまあ予想(つか期待)するよね。きっとブクブクやってる音を「楽器」にしてるんだろーなー。スパイク・ジョーンズがうがいのガラガラいう声(いや、あれは『音』か)でウィリアムテル序曲やったみたいな。いやきっとそうだぜ、それ以外あるわけない。
結論からいえばそうだったんだけどね。ポコポコプクプクって音が控えめに入ったイントロがたしかにある。ちょっとカワイイ感じでね。でも数秒でそれはパーカッションの音に取って代わられ、しかもそのあと始まるのはブクブクのほのぼのとした雰囲気とは流れ的に関係のなさそうなイージーリスニングっぽい、ノコギリや盥や洗濯板じゃなくてフツーの楽器のビッグバンド音楽になっちゃって「冗談音楽」のカケラもないの。ありゃま、なんだよこれ。ずーっとブクブクやるのかと思ってたのに。
しかも2つめのトラックになったらそのブクブクもない、ごく当たり障りのないムード音楽って感じ。こういうのラウンジミュージックとかいうんですかね。こっちはレコードかけて抱腹絶倒してやろうと身構えてたのに、どうしていいのかわからない。
と思ったら、つぎのトラックのアタマでまたブクブクポコポコ来た。おー、もしかしてここからが本番か。ん? だけどこのイントロってさっきと同じじゃないの? と一瞬訝ってるうち違う曲になっていく。なんなんだこれ。同じストローぶくぶくイントロを別の曲で流用してんのか。はあ?
さらに聴いてるとその次のトラックにはブクブクイントロなくて、そのつぎのトラックではまたもブクブクイントロが流用されて出てくるのであった。曲はちがうんだけど、まあ似たようなアレンジで。
この、コップに突っ込んだストローぶくぶくするっつう品がいいとは言えない(そこだけはスパイク・ジョーンズの『うがい』といい勝負だけど)イントロを何度も何度も「コピペ」で使い回すってのは、いったい全体どゆ意味?
よしんばこのブクブクがバンドの「売り」だっつうんなら(まあジャケット画もそうなんだから『売り』なんでしょうが)、この手抜きはないよなーと思うんである。「コピペ」をしかも全曲じゃなくてトラック飛び飛びにしてるってのも、なんかナゾだしなあ。ひょっとしてイントロじゃなくて「ジングル」? だから毎回同じなわけ?
ジャケットにあるシェップ・フィールズという名前がこのブクブクの人らしいのでネット検索すると英語版ウィキペディアしかマトモな情報がない。仕方ないので拾い読みすると、やっぱこのブクブク音を売りにしてみたいだ。でも冗談音楽とかそういうことをするんじゃなくて普通のポピュラー楽団のバンドリーダーらしい。
でもさ、こっちがヘンな期待したのがいけなかったのかもしれないけど(期待するなってほうがムリだと思うけど)、なんか当たり前で面白味のない音楽でさ。まあいわゆるひとつの「ラウンジミュージック」ってのはあんまし目立ったりしちゃいけないのかもしれない。それでもグレン・ミラー楽団みたいに流麗にスイングすればスターになったんでしょうけど。
ブクブクはひょっとすると、お客の気を引くために思いつきでやったんじゃないかね。そしたらそれがトレードマークみたいになっちゃった。でもその「ワザ」でいろんな曲をやってみようってほどの意欲で始めたわけじゃないから、いざアルバム作りましょうってことになったら、取って付けたようにイントロのとこに「コピペ」するだけみたいなことになっちゃった(ような気がする)。
まあ、たまにステージでやってみるくらいならウケるかもしれないけどさ。いつもこればっかやってたら段々嫌がられるようになるんじゃないかって気もするしな。シブキが飛んできたねえぞ、なんて最前列のお客にヤジられたりしてさ。
いやーでもさ。さすが「Dot」はハリウッドのレコード会社だなあって思うくらい、これが演奏自体うまい(おまけに音も良い)ので困ったモンである。さすが腕っこきのスタジオミュージシャンが大勢いるウェストコーストだよなあって。でもいかんせんアレンジが平々凡々でグッとくるところがない。
いや待てよ。ひょっとしてひょっとすると普通のアレンジのイージーリスニング音楽のスタジオ録音のストックに、シェップ・フィールズのブクブク音を別録りしたのを後付けしてアルバム一丁あがり! なんてことがあったりするか。この、あまりな「取って付けた」感はそのせいだったりして。
いやーさすがにそれはないよな(と思いたい)。
ほかのアルバムもみんなこれなのか。ひょっとしてひょっとすると、全曲ぶくぶくで通したアルバムがあったりして。
いやいや、確かめる気なんか毛頭ないからね。
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ハルズ
at 2021-06-25 13:38
x
へんなレコードで思い出した。
たしか、ジェンキンスさん(?)だと思ったのですが、曖昧な記憶ですみません、クラシックの歌曲集のアルバムがあって、アメリカの大富豪の奥さんらしいのですがむちゃくちゃ音痴、だけどレコードは大ヒットしたと。
上流階級の知合い達が付き合いの為に大量に購入したせいだと聞いた。
上流階級の方が庶民よりよっぽど人付き合いで苦労をしているのだと、アメリカで言われた。
とにかく音痴で気持ち悪かった。
たしか、ジェンキンスさん(?)だと思ったのですが、曖昧な記憶ですみません、クラシックの歌曲集のアルバムがあって、アメリカの大富豪の奥さんらしいのですがむちゃくちゃ音痴、だけどレコードは大ヒットしたと。
上流階級の知合い達が付き合いの為に大量に購入したせいだと聞いた。
上流階級の方が庶民よりよっぽど人付き合いで苦労をしているのだと、アメリカで言われた。
とにかく音痴で気持ち悪かった。
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god-zi-lla at 2021-06-25 16:06
ハルズさん こんにちは。
ああ、有名な〈The Glory(????) of the Human Voice〉のフローレンス・フォスター・ジェンキンスですよね。大量にプレスされたせいか(笑)、ときどきクラシック専門の中古店で見かけます。
一度聴いたことがありますが、長く聴いていると体調を崩しそうです。
ちょっと大屋政子さんを思い出したりしますけど、あのかたはもともとプロの歌手だったようですから、一緒にしたら大屋さんに失礼ですよね。
見ていませんが、たしか10年くらい前にメリル・ストリープ主演で映画にもなりましたね。
ああ、有名な〈The Glory(????) of the Human Voice〉のフローレンス・フォスター・ジェンキンスですよね。大量にプレスされたせいか(笑)、ときどきクラシック専門の中古店で見かけます。
一度聴いたことがありますが、長く聴いていると体調を崩しそうです。
ちょっと大屋政子さんを思い出したりしますけど、あのかたはもともとプロの歌手だったようですから、一緒にしたら大屋さんに失礼ですよね。
見ていませんが、たしか10年くらい前にメリル・ストリープ主演で映画にもなりましたね。
by god-zi-lla
| 2021-06-21 11:47
| 常用レコード絵日記
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Comments(2)