神はどーだっていいとこに宿る


by god-zi-lla

ピアソラを聴くならピアソラを聴く(ASTOR PIAZZOLLA / Live in Wien)

ピアソラを聴くならピアソラを聴く(ASTOR PIAZZOLLA / Live in Wien)_d0027243_8483722.jpgいやそれにしても蒸し暑いぞ。
きのうはよれよれになりながら家に帰りついてようやっと1枚CD聴いたんだけど、ふと思い立ってピアソラを引っぱり出してみたもんね。

おれはピアソラのこともタンゴのことも知らなかったんだけど、うちの奥さんが学生時代神保町のタンゴ喫茶でバイトしててピアソラの音楽に感動し、店でピアソラのレコードばっかりかけてたら店主に「ほかのレコードもかけなさい」って叱られたという話を聞いて、はじめてピアソラという人の存在を知ったんでした。

そういうわけでレコードの時代にはピアソラを知らなかったんでCDしか持ってませんけども、奥さんの話を聞いてはじめてピアソラのCDを聴いたときは衝撃でしたね。

なんというかこう厳しくて哀愁があって、弾むようであり、のたうつようでもあり、そのうえものすごくエロチックな音楽。とにかくピアソラのバンドネオンもすごいけども、からみつくヴァイオリンは色っぽいし、ベースはうなるし、ピアノはがんがん迫ってくるし、ギターはするどいし、あー世の中は広い、おれの知らないところにスゴい音楽がまだまだあるんだと、とにかくそういう感じのショック。

でね、思うんですけど、ピアソラの音楽がスゴっいてのはべつにおれが今さらどうこう言うようなことじゃありませんけども、このピアソラの曲をいろんな人がカバーしてCDやなんかにもなってますが、ヨー・ヨー・マとか。いやそれはそれで立派なもんだとは思うんだけど、ピアソラの音楽ってばそれはピアソラの演奏なんじゃないかって、やっぱ思っちゃうんだよね。

コルトレーンの「至上の愛」をだれかがカバーしたのを聴いたとして、それはやっぱコルトレーンを聴くってのとはちょっと違うと思うんだよな。うーん「至上の愛」だと例えが良くないか、まあなんでもいいんだけどマイルスの「SO WHAT」をだれかほかのミュージシャンがやったのを聴いたとして、それでマイルスを聴いたというのとはやっぱ違うよな。

ピアソラは若い頃クラシックを学んで交響曲も作ったっていうから、そのへんから「作品」としていろんな曲が独り歩きしてピアソラの音楽として認識されてるってのはあるのかもしれないね。バッハやモーツァルトやベートーヴェンの音楽を演奏するように。

でもやっぱ、聴いてみるとおれには誰かほかの音楽家がピアソラの「曲」を演奏したものは、ピアソラのキンテートがやる音楽とは、別のもんだと思うんだよな。てゆうかおれにとっちゃピアソラを聴くというのはピアソラのバンドを聴くということ以外にはないよなあ、と。まあ個人の趣味の問題かもしれないけどさ。

ピアソラのCDを聴くと、いつもそう思います。
ピアソラのバンドネオンにヴァイオリンとギターとピアノとベースが絡んでこそのピアソラ。
Commented by 大天使 at 2007-07-13 15:58 x
 僕はピアソラの音楽は「アンビバレンツ」の音楽だと思います。「哀しい、苦しい、切ない、愛しい....」そう泣き叫びながら走り出しそうな自分と、それを厳しく見つめコントロールする自分と。それを演奏者が分担しながらやっている面もあるように思います。凄かったのは来日公演のミルバとの演奏です。とてつもなく重い内容の歌詞を歌いながら場をしっかりコントロールするミルバと、その上で思い切り泣きに行くピアソラのバンドネオン。この領域にはまず他の奏者は行けないと思います。
 ただピアソラ以外の凄い演奏もあると思います。ピアソラを弾いているあるヴァイオリニストと以前いろいろ話した事がありますが、彼女の意見では「オブリビオン」という曲だけはギドン・クレメルの楽団の方が良い、ということで僕もあの鬼気迫る演奏は凄いと思います。
 それとギターデュオのアサド兄弟の「タンゴ組曲」の自在さと軽やかさと深さも素晴らしい。
 いずれにせよ彼が死んだことは音楽的には大きな損失で、これからもいろんなアーティストがオマージュを捧げることになると思います。
Commented by god-zi-lla at 2007-07-13 22:35
ミルバとの来日公演、NHKで見ました。あれはすごかったですねえ。ミルバもすごかったしピアソラの舞台姿がまた格好良かった! そういえばあのビデオどこにしまっちゃったのか。

結局のところピアソラの音楽を演奏するってことは、ピアソラを通して自分をさらけ出すってことで、クレーメルみたいに強烈な個性の音楽家の場合、それはやっぱりピアソラを聴くというよりはクレーメルの音楽を聴くってことなんじゃないかと思うんですよね。

それもともかくピアソラの場合、ミルバとの共演もそうですけども、ゲイリー・バートンとやったり、いろんな人との「他流試合」がみんな緊張度の高い音楽になってるのがすごいですね。

ミルバ×ピアソラも見終わって、ぐったりした記憶があります。現場で見てたら、あれは大変だったでしょうね。
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by god-zi-lla | 2007-07-13 08:50 | 常用レコード絵日記 | Comments(2)