神はどーだっていいとこに宿る


by god-zi-lla

カテゴリ:常用レコード絵日記( 823 )

d0027243_11535986.jpg




というわけで、後輩たちの夏は終わったようだな。

だけど、たいしたもんだと思うよ。ノーシードで1回戦からトーナメント勝ち上がって5試合目ってば、県によったら決勝戦だかんね。近所から通学してる若者だけでそこまで行ったんだから、せめて身内の卒業生がホメてやるくらいならバチは当たらんだろ。

それはともかくとして〈HI-FLY〉ってアルバム知ってますか。

ぼくは知ってます。つか、発売された77年当時から知ってました。アーチー・シェップtsとカーリン・クローグvoが組んだアルバムで、当時ちょっと話題になった。

だけど正直、ケッ、って感じだった。もちろん聴きもせずに先入観だけで。

なにしろ最初に出た国内盤ジャケットのデザインがいけない。なんかさー、いっときはコルトレーンの後継者のひとりとかいわれて硬派で鳴らしたコワモテテナーのシェップが、北欧の著名白人女性歌手と共演してヤニ下がりやがってとしかハタチそこそこのガキには思えなかった。

カーリン・クローグはそれよりも以前、デクスター・ゴードンtsとアルバムを作ったというので名前は知ってたけど、そもそもおれはデクスター・ゴードンに全然興味がなかった。よーするにまあ二番煎じってヤツなんだろ、と。

しかもそれがスイングジャーナル誌のその年のナントカ大賞に選ばれたりして、根性もヘソも曲がりきった若造がそんなものを聴こうとするわけがない。

で、きっとこういうショーバイまる出しのアルバムは日本のレコード会社が作ったに違いないと、聴きもせず確かめもせずに思い込んでたのであった。

それから幾星霜。

数年前、どういう風の吹き回しかスコット・ハミルトンtsとカーリン・クローグのCDを買った。ガキのころのおれだったらスコット・ハミルトンも「ケッ」なサックス吹きである。若いクセにへろへろとタルい音楽やりゃーがって、みたいな。

それが、聴いてみるといいのよね。とってもいい。たぶんスコット・ハミルトンは昔も今も変わらない「へろへろとタルい音楽」やってんだと思うんだが、おれのほうが変わってた。「へろへろとタルい」はいまや「悠揚迫らず」とほとんど同義なんであった。

だから最近でもよく聴きますね。たぶん月に1回くらいはコンスタントに聴いてると思う。NASにリッピングして。

で、ふと思い出したわけだ。もしかしてもしかすると昔のあのシェップとクローグのアルバムも悪くないんではないの? 機会があったら買って聴いてみようじゃん。とまあ、いつものように探しもせずにアタマのすみっこに置いておくうちに我が手元にやってきたのであった。

そしたら上の写真のジャケットである。ありゃま、日本以外ではこれだったのかしらん。あはは、そして気づいたんだけどこのアルバムはノルウェイの会社によってオスローで作られたアルバムで、日本の売らんかな企画盤でもなんでもなかったんじゃん。あー自分でデッチ上げたウソの情報を42年も信じ続けてたんだ。バカバカバカバカ。おれのバカ。

たぶんこのジャケットデザインじゃあ売れないと思ったんだろうな日本のレコード会社は。ほんでカーリン・クローグに見守られて鼻の下思いっきり長くしてテナー吹くシェップの写真で作り直したと。よーするにそれだけのことだったんだ。売らんかなの国内企画盤なんて、おれのアタマん中にしか存在しなかった。んー、そのころからそんな程度のヤツだったから、こんな程度のジジイにしかなれず人生終えるんだなあおれって。

それにしてもまるで違うジャケットじゃん。写真じゃわかんないでしょうけど、落書きだらけの小汚い地下鉄の電車が高架線の上を走るのが写ってる。これってニューヨーク? 暴走する電車の直下の道路を鬼の形相のジーン・ハックマンがクルマでチェイスした、まさにああいう高架線。

まあしかし日本盤のジャケットデザインも困ったモンだけど、じゃあオリジナルのこれがいいかっつうとどうだかねえ。オスローのレコード会社的にはアーチー・シェップのいかにも今風アメリカンジャズのザラザラした雰囲気をまぶしてみたかったとか、そういうことだったんだろうか。

それはともかくとしてだな。聴いてみたわけだ。んー、そしたらやっぱ42年前聴きもせずに想像してたのとはかなり違う音楽なのであった。もちろんシェップはおとなしく吹いている。けど、おとなしいといってもシェップとしたらおとなしいっつうだけのことで、フリーキーな音はほとんど出さないもののジョニー・ハートマンの隣りのコルトレーンみたいな「オトナの雰囲気」ってのはほぼない。女性シンガーの横でヤニ下がる風でもない。

クローグはクローグでけっこう技巧的で、おれはほかに当時の彼女のアルバムを聴いたことないからいつもこうだったのかどうか知らないけど、歌い方もアレンジも相当に気張って技巧的で器楽的なヴォーカルで、ようするにシェップとクローグとツートップのコンボによる当時としたらちょっと先走った感じのジャズ演奏つう感じかな。

まあ80年代後半あたりから登場したカサンドラ・ウィルソンなんかのトンがった(ときに無調に転んだりもするような)ヴォーカルからすればそれほどのこともないけど、少なくともオサレなクラブかなんかでしっとり聴くような種類の音楽じゃないね。

いやいやこれは全然悪くないですよ。まあ当時はそもそもジャズヴォーカルのレコードを買おうっつう気が(お金がないのもあって)ほとんどなかったから、中身を正しく知ったとしても買わなかった可能性が高いけど、あらためてこのトシになって買ってみて良かったと思うね。

だけどアレだな。カーリン・クローグは当時は相当硬派のテナー奏者と目されていたアーチー・シェップを相手に、やれるだけのことはやってやろう、こっちだって負けちゃいらんないからね的な気分はあったんじゃないですかね。だからリラックスした雰囲気みたいのを期待してもムリというもんである。

スコット・ハミルトンとのアルバムのあの、酸いも甘いも知り尽くした同士の、それでもそこそこの丁々発止はありつつもことさら気張って技巧を見せつけるようなところのまるでないリラックスした音楽と比べると、あー二人とも若かったんだろうなあって思わざるをえないよな。

いや、どっちが良くてどっちが悪いとかそういうことじゃなくてね。


d0027243_11541020.jpg



シュルレアリスムっぽいラベル。A面だけこれでB面は文字情報の入ったふつうのラベルになってる。
(Compendium Records FIDARDO 2)





by god-zi-lla | 2019-07-24 17:31 | 常用レコード絵日記 | Comments(0)
d0027243_15135896.jpg




COOLなSUMMERだぜ。

なんちて。

マイルス・デイヴィスの〈BIRTH OF THE COOL〉である。ただし、せんだって出たばかりの、アタマにTHE COMPLETEとついた復刻LP2枚組である。

どういうもんか、おれは長年このアルバムをちゃんと聴いたことがなかった。それが数年前このアルバムのCDを突然買い求めたんである。

ある日の午後、突然思ったんですよ。ビ・バップの青年期といわずヒップホップの晩年といわず、いつの時代のマイルスだって好きなおれが、食わず嫌い的にこのアルバムを長年敬して遠ざけてきたっつうのも如何なものかって。

おれの人生ひょっとしたらもう晩年であるわけだし。つうことは三途の川はひょっとしてもうすぐそこなのかもしんないし。三途の川を渡れば閻魔大王だ。

その閻魔さまが唐突におれに問う。オマエはどの時代のマイルスが好きなのぢゃ。

するとおれは「マイルスならどんなスタイルの演奏も好きなんです」なんて答える。

じゃあオマエ〈BIRTH OF THE COOL〉はどうぢゃと、閻魔さまは重ねてお尋ねになる。

そして。

あーいや、そいつは聴いておりませんなんてウッカリ言ったばっかりに、おれはベロ引っこ抜かれちゃうんである。

そういうのって、やっぱヤじゃん。想像するだけでも。

なので、いざ閻魔大王からご下問があったときには(最終的に地獄行きが免れないとしても)ちゃんと受け答えができますようにってCD買ってきた。これも一種の「終活」ってヤツかもしれない(でもなぜ閻魔さまはおれにマイルスのことなんか訊くんだ)。

そう思ってなかばお勉強のつもりで買ったCDを聴いてみるとこれが案に相違して、良い。あれれ、こんなんなんだっけ? すごくカッチョいいじゃんこの音楽てば。でも多分、若い頃に聴いてたらダメだった気がしますね。なんか品がいい。のたくったり暴れたりしない。音が濁らない。じつに流麗にアレンジされたアンサンブル。そういうのは年寄り臭い音楽だと思ってた。

そうなんである。おれは今や押しも押されもしない年寄りなのであった。

そしたら、こんだは復刻LPが出るというんだ。それも復刻専門レーベルがスポットでマスター借りて出すんじゃなく現在CAPITOLを傘下に持つユニヴァーサルが自分で出すっていう。しかもなんだか、過去に出た盤はどれもオリジナル・マスターから切られたものじゃなかったのが、今回初めてホンマモンのマスターに遡ってカッティングしたとかなんとか言ってるじゃん。

これって、ある意味ズルいよね。そんなテープがあるの知ってて復刻専門の会社には教えずに、自分で出す段になっておもむろに引っぱり出してくるんだから。

それはともかくモノの本などひっくり返してみると〈BIRTH OF THE COOL〉ってのは、もともとが1949年、SP盤にして12面分だか13面分だかの録音を当時のキャピトルレコードが行って、それを順繰りに売り出したもんだったらしい。だからもちろん「オリジナル盤」はSPレコードだった。当然バラ売りで「アルバム」ではない。

しかも、これがあんまし売れなかったらしいな。

それを初めて12インチLP盤に「アルバム」としてまとめ、現在知られている〈BIRTH OF THE COOL〉として上の写真とほぼ同様のジャケットに収めて発売されたのが1957年なんだそうだ。57年といえばマイルスはスター街道驀進中でインディーズのPrestigeレーベルと縁を切ってメイジャーのColumbiaに移籍したころだ。

よーするにキャピトルとすれば、売れなかった「有望新人」マイルスのアレをLPに焼き直してモト取るなら今しかない。しかもヨノナカじゃ似たようなのを「クールなジャズ」とか言い始めてるし、ここはいっちょうコイツが元祖だ本家だっつうことにして売り出しちまえ! 

まあ、ぶっちゃけそういうことだろ。

で、写真の〈THE COMPLETE BIRTH OF THE COOL〉を買ってみた。聴いてみるとたしかに音がいい。もちろんモノラルだけども70年前の録音だなんて到底思えない。ヴァン・ゲルダー録音なんかとはちょっと趣きの違う、ふくよかなアメリカンサウンドつう感じ。ノイズもあんまりない。そのマスターから過去にレコードを製造したことがないっつうのは、もしかしてホントかもしれない。

もちろんおれは57年の初LP化された盤なんて持ってないし聴いたこともないから比べるもなにもないんだけど、これ聴いた感じでは、さすが大企業キャピトルのレコーディング技術とマスターテープの管理はたいしたもんだったんだなあと思うほかないね。

いやーそれにしても、おれはなんでこんないいアルバムを今まで買わなかったんだろか。音がいいのも手伝って、ここんとこ一番よく聴いてるジャズのレコードになっちゃったじゃないの。

まあ「名盤」といわれてるわりにはあんまり聴かれてないというような雑音をまき散らすギョーカイの有名人に惑わされたってのもあったでしょうが、もしかしてこの、なんだかまっ黒けのジャケット写真のせいもかなりあったんじゃないかしら。

背景はスタジオの黒い天井で写ってるのは黒人のマイルス・デイヴィスで、しかもサングラスをかけている。そのうえシャドウは潰れハイライトは飛び、いったいこれはどういう冗談なのでございましょうか。

便乗商法のわりに、本気で売る気あったのかキャピトル。

その罪ホロボシのつもりなのかなんなのか、こんだの復刻アルバムにはマイルスの若い頃の写真だのスタジオの録音風景だのが綴じ込みブックレット(綴じ込みってのが昔を思い出させますね)を麗々しく飾ってる。


d0027243_10042138.jpg

いいよねえ、不敵なツラダマシイのマイルス。



d0027243_10052330.jpg


49年1月21日。向かって左側にいるのはチューバのジョン・バーバー、ホルンのジュニア・コリンズ、トロンボーンがカイ・ウィンディング。ピアノにはアル・ヘイグ、ベースがジョー・シャルマン。ブースのガラス窓にチラっと顔の一部が見えるドラムスのマックス・ローチ。マイルスは立っている。メガネがリー・コニッツasで椅子の背にジャケットかけて足伸ばしてるのはジェリー・マリガンbs。

こういう写真が外側にあったら、とっくに買ってた気がする。

だって、河原のジャケウンコ座りも、ずっと昔に買ってんだからさ。
この内側の写真みたいのだったら、もう御の字ってもんだぜ。

ところで、2枚組のもう1枚のほうはキャピトルがこのバンドをレコーディングするきっかけになったロイヤル・ルーストからのラジオ中継番組の、あの有名なボリス・ローズによるエアチェック音源なんだけど、これがエアチェックにしてはずいぶん音がいい。

ローズって人はジャズクラブからのラジオ実況放送をエアチェックして、アセテート盤に切ったのを売って商売にしてたらしいが(もちろん昔だって合法じゃなかったんでしょうが、おかげで今でもいろんなライヴ音源が残ってるんだからありがたい人だ)、このアルバムのライナーによればひょっとしたらエアチェックじゃなくて、この高品位な音質からして現場で放送局のラインからラジオの電波になる前の信号をもらってたんじゃないかというようなことが書いてある。たしかにシンフォニー・シッドのナレーションがかぶってるからマイクから直でないのは判る。つうことはラジオのクルーもローズとグルってことか。

それはともかく、ライヴだけでスタジオでやってない曲もあるから、これも貴重な聞き物だよな。



(UNIVERSAL MUSIC 00602577276408)

by god-zi-lla | 2019-07-12 11:14 | 常用レコード絵日記 | Comments(0)
d0027243_10541979.jpg





Amazonのプライムビデオに〈Blues Brothers〉があるのに気づいて、すごい久しぶりに見た。土曜日の早朝で奥さんはまだ寝てるから、テレビをつけてヘッドフォンを繋いでテレビ内蔵のAmazonのアプリを起動し、ヴォリュームをグイっと上げて耳が痒くなるくらいの爆音で見た。ヘッドフォンだから音量に遠慮会釈は不要ってもんである。

しかし、いつ以来でしょうかね。本邦公開は81年だっていうからその時見たとしたら38年目ですか。封切り直後かどうかは別として、とにかく20代のなかばに初めて見たのは間違いない。そのあと、テレビで放送されたのも見たような気がするけどよく覚えてない。

なにしろジョン・リー・フッカーなんて全然、当時おれは名前も知らなかったからな。アリーサ・フランクリンのいるダイナーに二人が入る直前の路上で歌ってたブルーズマンを、ただの歌とギターのうまいエキストラのオッサンだと思ってた。まったく無礼千万な話である。映画見る前にちったぁ予習くらいしてらっしゃいな。

かろうじて、画面を見ただけで誰だか分かったミュージシャンはJBとアリーサとレイ・チャールズだけじゃなかったですかね。バンドでギター弾いてんのがスティーヴ・クロッパーだなんてことはずうーと後になって知った。

ジョン・ベルーシのブラザーズ兄が出所して孤児院を訪ね、そこで世話になった黒人のジサマと久しぶりに会って抱き合う、そのジサマがキャブ・キャロウェイだなんてことはなおさら思いもしなかった。

ずうーっと後のほうの、あの有名な白い燕尾服で〈ミニー・ザ・ムーチャー〉を歌い踊るシーンを見て初めて、あーもしかしてこのジサマってあのキャブ・キャロウェイなのか? と、しかも疑問符付きで思ったくらいなもんである。

何故かといえば、おれのアタマん中じゃキャブ・キャロウェイといやあアメリカ黒人音楽史に必ず出てくる「歴史上の人物」なのである。始皇帝や織田信長やアレキサンダー大王が生きてる人だなんて思いもしないのとおんなじである。

だってアレだぜ。キャブ・キャロウェイ楽団といやあ1920年代だか30年代だか禁酒法時代のNYコットンクラブでデューク・エリントン楽団とバンドスタンドを分けあった「スター」つう認識じゃんか。しかも、かたやデューク・エリントンはこの映画を見たころから遡ること7、8年前にはそれなりの年齢になって亡くなってたんだから、おれはてっきりキャブ・キャロウェイもアノ世の人だと思い込んでたのであった。

だから、たしか見終わってから雑誌かなんかの記事で読んで初めて、あーやっぱあのジサマは本物のキャブ・キャロウェイだったんだー、と知ったんじゃあるまいか。

で、さっき調べたところキャロウェイさんてエリントン翁より七つ八つ年下だったのね。

いやまあ、それはともかくとしてだな。久しぶりに見てもこの映画のトンでもなさぶりの価値ってものは少しも減じてませんね。多分アメリカ映画史上初のブラックミュージックの「ミュージカル映画」(しかも、すごいメンツだらけ)なのに主役はよりによって白人のチンピラである。しかも目茶苦茶に暴力的なまでのアクションシーンの連続で、且つその圧倒的な破壊力のアクションに必然性のひとっカケラもない徹底したスラップスティックコメディときたもんだ。なんかもう心底クダラナイくて、そこがすごく面白い。

いやー、これから何度でも繰り返し見たいもんだ。

たしかにアリーサ・フランクリンもJBもキャブ・キャロウェイもジョン・リー・フッカーもたいしたモンだと思います。みんな、短い登場シーンなのにすごい存在感だ。だからもちろん「音楽映画」としてすごく楽しめる。けどね。あらためて感じたこの映画の真骨頂は、たとえばショッピングモールでのハチャメチャなカーチェイスや、たった二人を警察と軍隊と消防の大集団が入り乱れて市役所で追いかけ回す、あのほとんど(つか、まったく)無意味なシーンに精力と予算をつぎ込んでしまうアブナさにあるんだと、あたくしは思いますね。

いやまったく。

それにしてもと今回見終わって思ったんだが、おもな出演者はみーんな死んじゃってんだな。

まあキャブ・キャロウェイ翁は当時すでに老境にあったから仕方ないし(94年に86歳でお亡くなりになったとのこと)、レイ・チャールズもジョン・リー・フッカーもそれなりのお歳ではあったから今世紀初めに亡くなってる。だけど、ジョン・ベルーシはこの映画から何年もたたないうちにあっけなくドラッグで死んでるし(あのニュースには当時結構びっくりした)、JBが亡くなったのは10年くらい前だったか。

そして、狂気の女ストーカー(そんなコトバは当時なかったでしょうが)を演じたキャリー・フィッシャーが3年くらい前に急死して、とうとうアリーサ・フランクリンが去年この世を去ってしまった。それからベーシストのドナルド・ダック・ダンもだいぶ前に亡くなってる。

そういえばアレだったな。当時キャリー・フィッシャーが出演してるのを知らずに見て、あの女優さんて、もしかしてスターウォーズのレイア姫やってる人? と思ったもんである(つまり名前を知らなかった)。

だけどキャリー・フィッシャーがやったあの役(固有名詞を与えられてない)は、ブルース兄弟をバズーカ砲で狙撃したり爆弾仕掛けてビルごと吹っ飛ばしたりして、要所要所で映画の意味不明さをパワーアップさせていくブースターみたいなもんだったな。

こんど、ああいう超クダラなくて偉大な「ミュージカル映画」を見られるのは一体いつのことなのでしょうか。いや、きっともう二度とあんな映画が作られることはないんだろうな。

つうわけで冒頭の写真のレコードはなんだっつうと、直接関係あるってわけでもないんだが当然ブルースブラザーズのアルバムではあるから無関係ってことでもない。まあ、殺人事件の報道かなんかで写真がなんにもないとき新聞とかテレビのニュースで、なーんとなく「桜田門」のビル正面の写真が使われてたりするでしょ。まあ、アレと同じようなモンです。

でもそれもあんまりアレだから触れておきますけど、何年か前にどっかのレコード屋さんのエサ箱から引っこ抜いてきたジョン・ベルーシとダン・エイクロイドのバンド〈Blue Brothers〉の、たしかこれがデビューアルバムなり。

78年か79年あたりのライヴ録音だからもちろん映画よりも前のリリースで、だからここにはJBもアリーサもキャブ・キャロウェイもレイ・チャールズもいません。

スティーヴ・クロッパーもドナルド・ダック・ダンもいるからもちろんバンドはちゃんとしてるんだけど肝心の「ブルース兄弟」がウマいかどうかっつうと、映画見てるぶんには何も気にならないけどレコードだと多少ビミョーなとこがあるよねえ。やっぱ二人ともシロート芸というべきか。いや、それにしちゃあ結構聴かせるぜというべきか。

だけど気合いはスゴい。とくにジョリエット・ジェイク・ブルースことジョン・ベルーシは人生これに賭けてるような勢いで歌い叫び喋くりまくる。ひょっとして架空の人物「ジョリエット・ジェイク・ブルース」に人生賭け過ぎた挙げ句、そっちに生命を吸い取られて死んじゃったんじゃあるまいかと思ったりもするのであった。





Briefcase Full of Blues (ATLANTIC ATL50 556 ドイツ盤)

by god-zi-lla | 2019-06-17 20:31 | 常用レコード絵日記 | Comments(0)
d0027243_14471436.jpg




お久しぶりでございます。

こないだラジオ聴いてたら、こまっしゃくれた風でヘンに歌のうまい小娘が、

はい一丁あがり、ツルツルツル、毎度ありぃ

なんてラーメンのノベルティソングみたいなみょうにユルいカントリーソングみたいな曲を歌ってる。バックにはチャルメラとペダルスティールが聞こえる。が、ヘンに和風つうか中国風つうかガイジンの耳に聞こえた日本の歌のようでもあったり。

と、聴いてるとそのうち歌詞が英語になった。うしろ半分は英語詞の歌でこれがまたウマい。なんだこの歌とシンガーは。どこの国の娘だ。英語はネイティヴか。ちょっと古めかしい感じはするけど日本の曲じゃない感じがする。

すると、これが〈チャルメラそば屋〉つう曲で、歌ってるのは美空ひばりで昭和28年(1953年)の録音だって言うじゃんか。はあー、なんすかそれ。

昭和28年といえば16歳、歌のウマすぎる小生意気な娘は美空ひばりなんであった。

ひばりのアルバムつうと、いっとき(もう10年以上前かな)スタンダードほか欧米の有名曲を歌ったトラックばかりを集めたコンピレーションを繰り返し聴いてたことがあったんだけど、いやあ、この英語の原曲を替え歌にしたような素っ頓狂な歌にはなんか別のパワーがあって、ひょっとしたらこっちのほうが魅力的な気がする。

で、この曲ってどこにあるかと探してみるとネット上にもあるし何種類かの美空ひばりのコンピレーションCDにもあるってことがわかったんだが(原盤はSPらしい)、どうせならこの際こういう曲をもっと沢山聴いてみたいと思って探したら〈ミソラヒバリ リズム歌謡を歌う 1949-1967〉って写真の2枚組があったんでした。おー、いいじゃんリズム歌謡。

手に入れて早速ぶ厚いブックレットをめくってみたところ、〈チャルメラそば屋〉は作詞ボビー・ ノートン/奥山靉、作曲ボビー・ ノートンとなっている。あーやっぱりこれはアメリカの原曲に日本語詞を付けたのかと最初思ったんだが、それにしちゃあ作詞が日本人と併記されてる。これはどういうことなんだろか。

このブックレットには湯浅学のチカラの入った解説が付いてるんだが、「ひばりのリズム歌謡」についての総論で楽曲解説はない。仕方ないからネットであちこち覗いてみたところ、どうもこのボビー・ノートンて人は東京に進駐してた米占領軍の兵隊だというんだな。そのノートン二等兵だか軍曹だかが東京の街の屋台のラーメンを気に入って歌にしたのをレコード会社が見つけて日本語の詞も足してひばりに歌わせたらしい。いやーこんなの歌ってたんだ。

しかしなんだなあ。スタンダード歌ってるのも十分たいしたモンだ、さすがひばりは違うと思いますけど、ある意味こっちのほうがもっとすごい気がする。










CD2枚で50曲、リアルタイムで知ってたのは最後のほうに入ってる〈真っ赤な太陽〉のみ。そうでなくても知ってる曲といえば〈お祭りマンボ〉とか〈車屋さん〉とか数曲しかない。そもそも「リズム歌謡」と銘打ってるんですから〈悲しい酒〉とか〈川の流れのように〉とか〈柔〉とかそういう系はない。

初録音だっていう1949年の〈河童ブギウギ〉のこまっちゃくれぶりもすごいが、52年〈春のサンバ〉も可憐だ(ぜんぜんサンバじゃないけど)。

だけど、その可憐な〈春のサンバ〉の翌年録音のチャルメラのふてぶてしいような歌い出しと日本語詞も英語詞も当たり前のように歌ってしまう変幻自在な感じはなんなんだ。

その次のトラックは53年〈日和下駄〉で和風の疾走感。

これって、しかし当時は全部バックバンドとスタジオで一発録音してんだよな。けっこう大編成のオーケストラとか、ギターとペダルスティールとチャルメラのバンドとか、ブラスとパーカッションのラテンバンドとか。そういうのに当たり前のように乗っかって当たり前のように平然と歌ってる。

いや、キリがないんでアレですけど、うひゃあーっと呆然自失してしまったのは〈ロカビリー剣法〉58年、ロック&ロールに時代劇が乗っかっちまってる。かと思えばアフロキューバンで江戸の女怪盗を歌う〈ふり袖小僧〉59年、信じられない。

それから原信夫とシャープス&フラッツの壮麗なビッグバンドジャズをバックにコブシ効かせて歌う〈相馬盆唄〉62年。

いやーもうそんなんばっかし。

なんかクセになりそう(つか、もうなってる)。





(コロムビアCOCP-33949-50)

by god-zi-lla | 2019-06-12 16:44 | 常用レコード絵日記 | Comments(0)
d0027243_16111068.jpg



トミー・リピューマという大物プロデューサーが2017年に亡くなり、その追悼盤のコンピレーションCDが最近になって出たんだよ。

おれは基本、トミー・リピューマの関わるアルバムっつうのをあんまし買わない。まず買いませんけど全然買わないわけでもない。つか、リピューマという人が意識の上にない。

トミー・リピューマが亡くなって初めて認識したんだけど、マイルスの〈TUTU〉はこの人のプロデュース作であった。1986年作の、アーヴィング・ペンの写真で石岡瑛子がカヴァーデザインをしたので有名なあのアルバムがそうだってことに全然気づいてなかった。

ようするに、そんな感じで意識の上にない人なのであった。

まあしかし、ヒットメイカーだからね。70年代のなかば頃から80年代の初めくらいにかけて「ソフト&メロウ」とか言ってたあのオサレな軟弱路線フュージョンもこの人の発明によるのではなかったでしょうか。

だけどこちとら当時はもうスピーカーぐいっと睨みつけて微動だにせずに聴くようなレコードばかりをバイトで稼いだなけなしのカネ出して買い、残りの小銭で学食で昼メシ食って新宿で安酒飲んでたわけですから、そんな軟弱モノに回すカネのあろうはずもない。

しかしレコードはいっぺんも買わなかったけど、そのテの音楽についちゃ耳タコであった。あの頃はああいう音楽が街中のあちこちでかかってた時代だからね。喫茶店とかでもうウルサイくらいに(ウルサイ音楽じゃないんだけど)。

そのリピューマの追悼編集盤が3枚組CDで出た。コイツはひょっとして台所仕事や掃除のBGMにちょうどいいんでないかと思ったんだよ。なにしろ街中でウルサイくらいにかかってたわりにはそうウルサクなかったくらいですから。

だけどまあCD3枚はちょっといらんなあ。ブツとして場所取り、つかジャマな気がする。なのでハイレゾでなくて構わないんだけどブツ抜きのデータだけ売ってないかと思って「いいオンキヨー」で検索したんだが全然引っかかんない。

で、さいきん日本人に冷たいHDtracsも一応ためしに覗いてみるかと思ったら検索しても出てこない(あとで知ったんだが、くだんの追悼編集盤は日本独自企画なのでした)。仕方ねえなあ。

だけどまあ、せっかくHDtracks覗いたんだから相変わらず日本人に邪険なのか確認しといてやろうと思ったんである。そうだ、たしかその追悼盤の初っぱながジョージ・ベンソンの〈Breezin'〉だったよな。じゃあコイツで試してみるか。マスカレードもいい曲だしね。なにしろあちこちでさんざぱら聴かされてたからレコードなんか持ってなくったって知ってるのさ。

案の定、正面から堂々入ろうとするとHDtracksは日本人を門前払いしようとする。ちょっと前まではVPN経由でログインすればオッケーだったのが、いつ頃からかそれもダメになった。とにかく日本人と知るや、そのIDは無効だとかなんとか言いながらヘルメットに白い帯のあるMPがM1カービンの銃床でオイラの頭を小突く。くっそーこのアメ公め。なんつて。

どうもHDtracksに登録してある住所を合衆国内に移したうえでVPNで潜入すれば大丈夫らしいというんだが、そこまでやるともうなんだか「不正」の臭いもプンプンし始めて、おれの好みを大きく外れる。

ま、でも一応VPNで入ってみますかね。もしかしたら状況が変わってるかもしれないし。

つうわけで、ログアウトしたうえであらためてVPNでログインし〈Breezin'〉をクリックしてみると(VPNだと時間がかかってメンドいんだけどね)、ありゃま、あの憎々しげな「This product is not currently available due to region restrictions.」が表示されずにお値段が$19.98と出るじゃん。

ん? どうしたんだろか。日本人にイジワルするのに飽きたのか。それともクレムリン色のネクタイの大統領が日本のだれかと「ディール」でもしたのであろうか。そんなんじゃなくて、たんなるフェンスの金網の破れ目?

でもさー。おれそんなにすごく欲しいわけでもないんだけどね。ジョージ・ベンソンの〈Breezin'〉。だけどトランプの「ディール」か緊張緩和か金網の破れ目か知りませんけど、このまま行くとこまで行ってちゃんとカネ払ってダウンロードまで出来るのか、試してやろうじゃん。

で、以前と同じようにPay Palで支払い手続きをしてチェックアウトしたところでVPNを切った。そして、あとはふつうに専用ダウンローダーでなんの問題もなくダウンロードしてしまったのであった。

もしかして〈Breezin'〉だけが金網の穴だったのであろうか。

ちょっと他のアルバムでも試してみたいんだけど、とりあえずハイレゾのデータで欲しいアルバムってのがないんだよな。すでにもうたいして欲しくもなかったのをダウンロードしちゃってるわけですし。これ以上やってると、ちょっと自分がバカっぽい。

いやまあ、そんなこんなで初めて〈Breezin'〉つうアルバムを自分のものにしてしまったのであった。でもね、さすが大ヒットするだけのことはありますね。ブリージンもいい曲だけどマスカレードもすごくいい。

あらためて聴いてみると自分のギターに合わせてユニゾンでスキャットするジョージ・ベンソンのワザはたいしたモンだと思う(それにしてもジャケ写のベンソン。いまと全然顔が違う)。

ところで、その肝心のトミー・リピューマの3枚組追悼編集盤なんですけど、ジョージ・ベンソンをダウンロードした後もしかしてと「一昨日」で検索しましたところ、あっちゃー、あるじゃんか! なんだよー、こっちを先に検索すりゃよかったじゃんかよー。んー。

でもなあ、もう〈Breezin'〉に$19.98も使っちゃったしさ。
(国内盤の中古LPなら100円からあるでしょうに)

ひょっとしたらApple Musicにあるかしらん。あれば別に買わなくてもいいんだし。

そしたらちゃんとありました。3枚分2時間18分。んー。もしかしてもしかするとだな。最初っからApple Musicで調べときゃなーんのモンダイもなかったんじゃあるまいかしら。どうせ台所仕事とお掃除のBGMにしようと思ってただけなんだから、考えてみりゃApple Musicで十分じゃん。

なんか、おれって相当重症のバカな気がする。

そして台所仕事をしながらその3枚組追悼編集盤〈Tommy Lipuma Works〉を聴き始めた。その冒頭のトラックがジョージ・ベンソンの〈Breezin'〉なのであった。1976年のスーパーヒットアルバムのタイトル曲。

しかし一聴瞭然。さすがHDtracksの〈Breezin'〉は24/96のハイレゾリューションファイルである。音質ではApple Musicをまるでモンダイにしないのであった。


そうでなきゃ、おれは悲しい。
$19.98

by god-zi-lla | 2019-05-09 09:53 | 常用レコード絵日記 | Comments(6)
d0027243_07142824.jpg




音楽聴いてしみじみしようなんて気は以前だったらさらさらなかったけども、気がついてみればいつのまにか音楽聴いてしみじみしている自分がそこにいたりなんかするのであった。

トシとったってことだろうか。だとすればトシとるってのも悪かないとしみじみ思ったりもする今日このごろである。

雑誌の新譜紹介欄にアコギの名手ふたりのデュオで、これがしみじみと素晴らしいんだというようなことが書かれていて、おじさんデュオのひとりは超絶技巧で鳴らしてきた人で、もうひとりはナッシュヴィルの重鎮だそうなんだが、そういうことに疎いおれは恥ずかしながら全然知らないのであった。

そのトミー・エマニュエルとジョン・ノウルズというふたりがアコギだけで演奏してるのが、ビリー・ジョエルとかビージーズとかマイケル・マクドナルドとかハンク・ウィリアムズとか、とにかくそういう人たちの(曲名は思い出せなくとも)あーこれ知ってるよなーっつう耳になじみのあるナンバーでね。

なんかさ。このトミー・エマニュエルというひとはウィキペディアなんか見ると超絶技巧で知られるギタリストだそうなんだけど、それっぽいアドリブや速弾きなんてどこにもないし、そのうえ特別凝ってるとも思えない(ような気がする)アレンジで、メロディラインをギターで歌うことだけに専念してるアルバムなんだよ。

ジャンルでいったら、もう断然イージーリスニングすね。むかしよくあった「想い出のポピュラー名曲集」なんていう邦題をうっかりつけられちゃいそうなくらいである。しかし、そもそもの原題が〈Heart Songs〉ってんだから「こころの歌」か。まあ、モトがじゅうぶんベタだわな。

たぶんスピーカーの左チャンネル寄りがトミー・エマニュエルだと思うんだが、メロディラインはほぼ全面的にその左のひとが弾き、右寄りの多分ジョン・ノウルズがそれをゆったりと支えてる感じ。

それがなんだか、自分たち自身がじっくりと味わうように丁寧にプレイしてるようでね。緩急や強弱の変化をつけようという意識もあんまりないようなゆったりとした弾きっぷりというか、うまく言えないんだけど、とにかく作為のないギターとでもいえばいいんでしょうか。

いや、だからまあ、しみじみすると。

聴いてるおれはむろんしみじみしてるが、たぶん弾いてるオヤジふたりもしみじみしてる。

それから、このレコードの音なんだけどね。アコギの録音でここまでギターの演奏ノイズを拾ってるのって珍しいんじゃあるまいか。いやそれが、たぶんたまたま拾っちゃってるんじゃないんだろうと思うんだよ。

このアルバムのレーベルはトミー・エマニュエル個人のものらしい。そのうえプロデュースもアレンジもエマニュエル本人だ。エマニュエルは超絶技巧のひとだというから、きっと自分のギターサウンドを微に入り細を穿つように聴かせようっつう気持ちがあるんだろうな(相方のノウルズのサウンドはそれほどでもなく控えめ)。

だから、なんつうかオーディオ的にいうとこれはイージーリスニング的に聴き流せるような音じゃ全然なくてね。しみじみ聴いてるようで、耳はスピーカーのほうへグイっと引っぱられてる感じがする。ちょっとそのへん、タダモノでない。

そういえば、おれの聴いてる音楽にめったに反応しないうちの奥さんが、このギター誰? すごいねと驚いてた。楽器をやるひとにはわかる何かがあるんだろうか。

わからんおれはちょっと悔しい。





d0027243_07385990.jpg
左がトミー・エマニュエル、右がジョン・ノウルズ。
録音もほぼこのような位置にきこえる。

HEART SONGS (CGP SOUNDS CGP0071) LP

by god-zi-lla | 2019-04-30 07:47 | 常用レコード絵日記 | Comments(2)
d0027243_10363909.jpg





ちょい前のことであるが、ユニオンのオンラインショップでLP入れる段ボール箱なんかを物色しておったところ〈Nipper listens to“HIS MASTER’S VOICE” オブジェ〉つうのが写真入りで載ってた。れいのEMIやなんかのロゴに使われてるこれ↑だな。

このニッパーという名前の有名な白い犬の、セトモノの置物はしかし平和島やなんかの骨董市に店を出してる「古道具屋」系の店じゃほとんど定番商品のようなモンで大小さまざま、あっちこっちのブースのすみっこのほうに、店番のじいさんの飲みかけの伊右衛門のペットボトルと一緒に並んでるのを見かけるようなブツである。

むしろ同じ白いワンコならいまどきソフトバンクのおとーさんのほうがよっぽどいいお値段で売られてたりするくらい、ビクターのニッパー君は珍しくもなんともないんである。

思うにアレだけあちこちにあるところを見ると、あのセトモノのニッパー君はかつて日本ビクターがわがニッポンの高度成長期のはじめ頃、一般家庭向けにたくさん作って売っていた家具調ステレオ装置のオマケとしてレコード数枚と一緒にお買い上げのお客さんに配ってたんじゃあるまいかしら。

というのもだね。40年以上も昔、神戸市兵庫区の祖母宅に壊れて音の出ない(それどころか電源スイッチ入れてピックアップをつまみ上げるとビリっときて危険な)四本足の生えた一体型家具調ステレオがあってさ。

それは、戦前に婚家から出戻ったままずっと祖母と同居していた伯母がどこやら知人から貰ってきたシロモノで、そいつがその日本ビクター製なのであった。そして、レコードプレーヤーを覆う木製の蓋の上にくだんのニッパー君がひとつ置かれてたわけだ。

壊れた古ステレオはともかく、白い犬の置物はちょっと欲しかったね。

祖母はその数年後に亡くなり伯母は独居老人となり、大正時代の末に建てられたという古い二階建ての家の玄関近くにステレオはニッパーと一緒にそのまま飾られているというか放置されてたんだけど、10数年後に神戸を襲った阪神淡路大震災でその家はあえなく倒壊し、ニッパー君は鳴らない家具調ステレオ装置もろとも灰燼に帰したのであった(伯母はたまたまその日知人宅に出かけていて無事だった)。

まあそれはともかくとしてだな。その家具調ステレオの上にあったニッパーも古道具屋の店先のニッパーも "His Master's Voice" とかいうわりには肝心の蓄音機なんかなくて、ニッパー君は意味もなくただ首をかしげてるだけなんである。

これってやっぱ蓄音機と一緒になってないと、その物語性っつうか来歴っつうか、ハチ公だって渋谷駅前の雑踏に銅像立ってるだけじゃなんのこっちゃらわからんし(ハチ公の銅像と一緒に記念撮影してるインバウンド様たちはご存じなのでしょうか)、ソフトバンクのおとーさんだってあのCMを知っててこそのワンコだろ。

だからニッパーには蓄音機が必要だぜ、と昔から思ってたわけだ。そしたら


d0027243_10513271.jpg


おーこれって蓄音機のラッパを覗き込んでるニッパーでないの。へえー、こんなモンがあったんだねえ。ちゃんとモノガタリになってるじゃんか。やっぱり、こうじゃなくっちゃいけねえや。欲しいなあこれ。

で、おれはニッパー君の隣りにある段ボール類などを見てたわけですけど、思わずクリックして説明を読むと

Nipperは英国に実在した犬で、蓄音機から聞こえてくる亡き主人の声に耳を澄ませている姿に、感動した画家によって生み出された絵画「HIS MASTER’S VOICE」で一躍有名に。「Nipper」と「蓄音機」、そして「台座」の3点セットで、オブジェとして「HIS MASTER’S VOICE」を完全再現!

いいねえ、「3点セット」だってさ。「完全再現!」だってさ。ですよねー。こうでなくっちゃ。

だけど税込み7020円はちょっと高いよな。それに、おれっていま段ボール物色してただけじゃん。いかんいかん、こういうとこでムダ遣いしちゃいけねえ。7020円出すんだったらレコード聴いてる犬の置物じゃなくって、モノホンのレコード買おうぜレコード。

と、じつは一度みずからの物欲を振り切ったんだけどね。
でもやっぱ欲しい。欲しいとなったら、欲しい。

それで数日後にあらためてユニオンのサイトを見てみたら、なんとしたことか「品切れ」の表示が出てるじゃありませんか。だよなー。高いけど欲しい人けっこういそうだもんなー。んー、迷ったら買わなきゃいかんなあ。惜しいことしたなもう。

でもね。そのときよく見ると品切れ表示の横っちょにある購入ボタンはクリックできるようになっている。こういうものはそうそう再生産するとも思えないからきっとダメだよなー、とかブツブツ独りごちながら一応クリックしてみたんでした。まあホントに売り切れだったら、ムダ遣いしないように神様が取り計らってくれたのさ、なーんて殊勝なことまで考えたりして。

そしたら購入ボタンクリックしてから16日も経って突然「発送しました」つうメールが来た。うひゃあマジかよ。10日くらい経ったときにはもう完全に諦めてた。1か月のうちに商品確保出来ないときは注文キャンセルなんて自動送信メールも来てたしね。うーむ、こりゃあきっとおれにもっとムダ遣いをせよとの神様の思し召しなのであろう。なんちて。



d0027243_13481898.jpg




で、届いたのがこういうのなのであった。うふふふ。

たしかに上のレーベル写真と見比べてみても「完全再現!」はあながちウソではない出来映えではあるよな。材質はソフビとかレジンとかそういうフィギュア系の素材じゃなくて古道具屋のニッパー同様にセトモノである。落っことしたらきっと粉々に砕けるね。ちょとコワイのことある。

ところで、箱を開けてウハウハ喜びながら取り出してしばらく眺めてるうちにフト思ったんだけど、このニッパーが覗き込んでる蓄音機ってエジソンの蝋管蓄音機じゃなかったんだっけ。いや、たしかに上の英EMIのレーベルに刷られた商標の蓄音機はベルリナーの円盤で間違いはないんだけど、なんか引っかかるな。

でウィキペディアを見てみると、やっぱりもともとの絵はこれなのであった。

もともと蝋管蓄音機を描いてたのをわざわざ書き直してんだね、この絵をベルリナーの会社に売るために(そのへんはウィキペディアの当該項目参照)。なるほどなあ。なんかシッカリした絵描きさんです。

それでこれは余計なことなんですけど(このブログ自体が余計っちゃ余計なことなんだけどさ)、この犬の〈Nipper〉って名前はウィキペディアによればすぐ噛みつくからそう名付けられたとあるんだ(ロクな犬じゃないね)。

するってえと、針金や電線切るあの工具のニッパーと意味が同じなわけだ、へえー。

なんか面白いんで、ついでに調べてみたらあの工具をニッパーっていうのは、かなりの部分「日本語」らしいんだな。あの工具は英語じゃ一般的に「wiew cutters」とか「diagonal pliers」とか呼んでるみたいで、ニッパーってのはあんまりポピュラーな呼ばれ方でもないらしい。

へえ、そうだったんだ。

いやまあ、どうでもいいんですけど。

ちなみにユニオンのオンラインショップを見ると「売り切れ」と表示され、購入ボタンのところには「注文できません」と書かれていてクリックできません。悪しからず御免下さいませ。

(windypapaさんのコメントによると、まだ買えるそうです。コメント欄のurlご参照↓)







by god-zi-lla | 2019-04-22 12:17 | 常用レコード絵日記 | Comments(4)
d0027243_14100042.jpg




つうようなわけで伊豆の河津に桜見物に行ってきたがそれはいずれまた。

ヴァン・モリソンて人はおれにとっちゃうんと遠い人で90年代の初めころ、なにかのきっかけでその頃出たCDを数枚買って聴いてみたがそれっきりになっていた。

それがなんだか知らないけど、先月たまたまこの2018年にオルガンのジョーイ・デフランセスコと共演したアルバムから何かをどっかで聴いて、うおーこれいいじゃんとビックリしてからApple Musicであらためて全曲聴いてみたんだ。そしたらやっぱりいい。んーむ、こういう人なんだっけ。なにしろ前回ちゃんと聴いたのが90年代のことで全部忘れてる。

で基本的にストリーミングで聴いて気に入れば、あとの段取りはブツを買い求めるのみ。ストリーミングの音楽はアッチの勝手な都合(会社が潰れるとか儲からないからヤメちまうとか)で消えてなくなることがあるが、ブツをひとたび手に入れてしまえば消えてなくなるのはテメエの責任だからさ(ダウンロードしたデータ含めて)。

そしてもちろんレコードがあればレコード買うわけで、レコードがあったのでレコード買った。

〈You're Driving Me Crazy〉というアルバムが写真だ。2枚組み。ハラの出たオッサンふたりがリムジンの後席でだらしなく座っている多重露光の写真のようなカヴァーアート。CDならまだしもLPサイズだとなんかクドい。

どう言っていいんだかわかんないけど、ブルーズとジャズのあいだでトラックによって、あるいはひとつの曲のなかでも少しブルーズのほうに寄ってみたりする感じだが、基本デフランセスコのオルガンがでへでへどりょどりょと(レスリースピーカーの音のつもりです)鳴り続けてるからジャズったってそれはファンキーだ。

ところで、こんなに良かったんでしたっけヴァン・モリソン。ひょっとして20年以上たっておれの嗜好が変わったんかとこのレコードを何度も聴いたあとで昔買ったCDを引っぱり出して聴いてみた。ジョン・リー・フッカーと共演してるヤツ。

そうするとやっぱなんかしっくりこない。シブく歌うジョン・リー・フッカーの横でみょうに声のデカいヴァン・モリソン。B.B.キングやバディ・ガイみたいな地声の相当デカそうなおっさん相手ならまだしも、そうでもないフッカーとこれでいいのか、とか、しょせんブルースマンてのはひとりで歌う人なんだからさ、とか思っちゃうのであった。

もしかしたらおれは90年代にもそんな感想を抱いたのかな。まるっきし思い出せない。でも、とにかくまあデフランセスコのオルガンとトランペットをバックにクドい歌い回しで歌っちゃあデヘデヘと品なく笑ってる今回のヴァン・モリソンを気に入ってしまったのは間違いない。

なるほど中身のクドさがジャケットのクドさと意外とマッチしてんだな。

ところでこのアルバムのあとすぐにまたジョーイ・デフランセスコをバックに歌ったアルバムを出してたと知ってApple Musicで聴いてみたんだ。そしたら、まだいっぺんしか聴いてないけどこっちのほうがもうちっとジャズから遠ざかって品無くブルーズっぽい感じにきこえる。おーなんか、こっちのほうがさらにおれの好みかもしれない。

そうするとレコードが。






by god-zi-lla | 2019-03-01 09:40 | 常用レコード絵日記 | Comments(0)
d0027243_11005542.jpg



やっぱ「聴ける」ようになると買っちゃうよな。いや、SP盤のことですけどさ。

聴いてみたいけど聴く術がなきゃハードルは富士山より高い。しかし、いったん聴けるように環境が整ってしまえばハードルだと思ってたモンがじつはたんなる敷居だったりするんでした。なんちて。

あんまりこっち方面には手を出さないようにって、つね日頃自分で自分をイマシメておるわけなんですけどね。ついなんちゅうかこの、出来心というのでしょうか。

言い訳はともかくとしてAtlanticのSPレコードなんである。Atlanticってレコード会社は戦後の1947年にアーメト・アーティガンたちが作り、LPレコードってのはその翌年の48年からヨノナカに出回るようになったと物の本(つかウィキペディアですけど)には書いてある。ついでにいうと7インチシングル盤は49年から売られるようになったということだから、Atlanticの歴史はLPレコードや45回転シングル盤の歴史と一緒に始まったといってもいいようなもんだろう。

でもまあLPが世に出る前の1947年に会社がスタートしたんだから、最初に作って売ったレコードはSP盤だったに違いないんだ。

ところでハナシはちがうけど、かっちょいいよね、この内袋のデザイン。

じつはこれ見たら欲しくなっちゃってね。たいがいのSPレコードはジャケットなんてないからジャケ買いなんて言い方も多分ないわけで、だからまあ「ウチブクロ買い」とでも申しましょうか、いや、それじゃあんまり語呂が悪いから「ブクロ買い」とか。んー、なんか池袋の路地裏で良からぬブツでも買ってるみたいじゃん。

おれは持ってませんけど、昔の写真なんか見るとシングル盤の袋も同じデザインだ。こういうこと言っちゃナンだが、こんなふうにちゃんとデザインされた袋を出来立てホヤホヤの弱小レコード会社が作って使うところに、レコード売って一発当てようっつうヤマっ気だけが元手の経営者じゃなく、さすがトルコ大使の息子アーティガンは無一物から会社起こしたわけじゃなかったんだろうって思わせもする。

で、ウラはこれだ。



d0027243_08454739.jpg



「アトランティックはリズム・アンド・ブルーズの分野をリードします」って惹句が誇らしげで、いかにも新しいジャンルに切り込んでいく新しいレコード会社って感じだよな。

それにしてもこのミュージシャンのイラストレーションがまたいいんだよな。左上から時計回りにルース・ブラウン、ビッグ・ジョー・ターナー、エロール・ガーナー、ザ・クローヴァーズ。

たんなる「袋の絵」なのに、なんてかっちょいいんだ。それにどっか崎陽軒のシウマイ弁当の醤油差しの「ひょうちゃん」みたいなほのぼのとした味わいもあるしね。

だけどエロール・ガーナーのこのシワシワ顔はなんなんだ。すぐ上のビッグ・ジョーよりずっと年下でこのころは多分まだ30代の初めだと思うのに、この描き方はちょっと可哀想なんじゃあるまいか(でもガーナーはジャズのひとっていうよりR&Bのひとって認識だったのね)。

それはさておき、この袋の中身は左上のルース・ブラウンのレコードです。

この面には〈Am I Making The Same Mistake Again?〉、それから上の写真に写ってるほうの面に入ってるのが〈Teardrops From My Eyes〉。

この〈Teardrops From My Eyes〉がビルボードのR&Bチャートで11週連続でトップに立って、ルースは一躍R&Bの「女王」になり、同時にまだ小さなレコード会社だったアトランティックの台所を大いに潤わせたんだってね。それが1950年のことだった。

つうことはつまりこのSP盤はおそらく7インチシングル盤と当時併売されてたんだと思う。で想像するにメインでプレスされたのはこのSP盤のほうじゃなかったか。なにしろ45rpmの7インチ盤が登場したのはこのレコードが登場する前年、49年のことだ。

CDがヨノナカに出たころのことを思い出してみる。1982年鳴り物入りで(まあ鳴り物を収録してるわけですけど)この世界初のデジタルメディアは登場したわけだ。そして翌年の83年。なにしろCDラジカセだってCDウォークマンだってまだカゲもカタチもないんだから、そんな時期にキカイを買ってCDを聴いてたヤツなんてのはカネだけはうなるほど持ってるオッチョコチョイ野郎(まあ、新しもの好きとか先見の明とか言ってもいいけどさ)だったとしか言いようがない。いわんやずっと時の歩みのおっとりとした50年代をや。

もしかしたら家庭用の蓄音機よりもジュークボックスのほうが先に45rpm7インチ盤に移行してったかもしれない。なにしろ収録時間はほとんどおんなじなのに、7インチ盤は軽くて小さくて割れないんだから圧倒的に扱いやすかったろうからね。

まあいずれにせよそういう時代の、つまりSPレコードの「終わりの始まり」頃の盤なのは間違いない。

そのせいかどうかわかんないけど、この盤ノイズも少なくてけっこう聴きやすい。自慢じゃないが安物レコード買いのおれんちにはこれよりジャリジャリいうLPや7インチがどう考えたって200枚はありますね(いや300枚かも)。

ルース・ブラウンの声も若い。だってまだ22歳だもん。バックはバド・ジョンソンのバンドだ。アーティガンたちはルースにギトギトのブルーズを歌わせるよりもややポップ寄りのシンガーで売り出そうとしてたようだから、どっちかっつうとジャズの人って認識のバド・ジョンソンのバンドの伴奏がいい感じ。もちろん当時のひとたちもこの雰囲気がいいと思ったからヒットチャートのトップに君臨したんだよな。

とか、したり顔で書いてますけども、いやじつは袋に先に目が行って肝心の曲のほうは手に入れるまであんまり(つか、ほとんど、つか、まったく)気にしてなかったりして(笑)

6、7年前に〈Atlantic R&B 1947-1974〉てCD10枚組のボックスセットが出て、その10枚のCDが入った「内袋」にこのデザインがあしらわれててね(時代時代のシングル盤の袋がいろいろ使われてる)。なるほどこういう感じだったのかって眺めてたわけだけども、そこに当然ルース・ブラウンの〈Teardrops …〉だって当時のトップヒットだから入ってるし、ちょっと前にはNASのHDDにも取り込んで聴いてた。

それがまさかSP盤が手元にやってきて聴けちゃったなんてね。

「ブクロ買い」もたまにゃ悪くないさ。




d0027243_11551677.jpg






by god-zi-lla | 2019-02-07 12:09 | 常用レコード絵日記 | Comments(5)
d0027243_14154271.jpg



えーとね。このエントリは結果として自分のためのメモになっちゃったから多分わかりにくいです。なので適当に飛ばして読んでいただくか、ハナっから全部無視してくだされたく存じますです。



アメリカのResonance Recordsつう会社からエリック・ドルフィーの未発表録音を出すってアナウンスが最初にあったのはもう2年くらい前だったんじゃないかね。漏れ聞こえてくる情報によるとそれは63年のアラン・ダグラスがプロデュースしたレコーディングセッションの残りのテイクだっていうんだな。

Resonance Recordsってのはジャズの未発表録音の発掘を精力的にリリースしてる会社で、最近じゃビル・エヴァンスとかウェス・モンゴメリーなんかの重要録音をつぎつぎ掘り出して話題になったようだが、おれが買ったのはコルトレーンの66年テンプル大学のライヴ盤とサド・メル楽団のこれも66年ヴィレッジヴァンガードにおけるデビューライヴのふたつだけだ。

そして待つこと2年、やってきたブツは〈ERIC DOLPHY MUSIAL PROPHET - THE EXPANDED 1963 NEW YORK STUDIO SESSIONS〉ってタイトルの3枚組のLPだ。こいつは今年の「Record Store Days」限定商品のようで、そのステッカーが貼ってある。じつはこれとは別に国内盤のCDも予約してあるけど、まだ発売されてない。

なにしろ立派なブックレットが付くと予告されてたからさ。ならばきっと国内盤のCDには対訳が付くでしょうから、英語不如意なおれはCDも買うことにしたんでした。日本語版ブックレットの付いた国内盤のLPが出るってわかってりゃいいんだけど、現時点でも出るのかどうかわかんないんだからLPもCDも買えるときに買っとくしかない。

それはともかく、肝心の3枚のLPの中身はというとダグラスのセッションのうちアルバムとしてリリースされた〈CONVERSATIONS〉と〈IRON MAN〉のすべて。これでほぼLP2枚ぶんになっている。つまりこの2枚についていえばすでに何枚も持ってるアルバムをまた買わされたわけだ。まあ昨今同じ中身を何度もくるみ替えて売り出しちゃあ同じ人間に売りつけるというのがレコード業界の当たり前の商売ですから(『ビジネスモデル』ってヤツね)いちいちあげつらったりしませんけどさ(あげつらってるって)。

で、残りのLP1枚分とちょいが「Previously Unissued」だってわけだ。なんかさ、このコトバに弱いのよね。つい買っちゃう。ときどきダマされもする。でも買わずにいられない。

その「Previously Unissued」の内訳ですけど、アルバム〈CONVERSATIONS〉(VeeJayの〈ERIC DOLPHY MEMORIAL ALBUM〉も同内容)が収められた1枚目の余白にドルフィーとベースのリチャード・デイヴィスのデュオ〈Muses For Richard Davis〉が2テイク。

それからアルバム〈IRON MAN〉が収録された2枚目の余白にボーナストラックとして〈A Personal Statement〉という曲が収められている。なんでこれだけが「ボーナス」なんだと思ったらこのトラックのみダグラスセッションではなく87年にBlue Noteから突然登場したドルフィーの完全未発表アルバム〈OTHER ASPECTS〉に入ってる〈Jim Crow〉と同じ曲の別テイクとある(それはそれでびっくりだ)。

そしていよいよ3枚目が「PREVIOUSLY UNISSUED OFFICIAL STUDIO RECORDINGS」と銘打たれて、〈CONVERSATIONS〉と〈IRON MAN〉に収められた合計9曲のうち6曲の別テイク7トラック(どれも完奏した完全テイク)が、時間にして53分超収録されている。

ところでさ。5年前のちょうど今ごろの季節、横浜のマシュマロレコードからドルフィーの〈MUSES〉ってアルバムが突然出た。そのアルバムについてはここに書きとめておいた。今回のアルバムと同じようにアラン・ダグラスのレコーディングセッションから未発表のトラックをLP1枚にまとめたもので、とくにアルバムタイトルになっている〈Muses〉って曲はそれまでまったく知られてなかったドルフィーのオリジナル曲だっていうのでめちゃくちゃ驚いたもんだった。

つうことはアレですか。

ダグラスセッションにはその〈MUSES〉収録の未発表テイクに加えて、さらに今回のResonance Recordsのアルバムに収められた「Previously Unissued」なテイクが半世紀以上にわたって日の目を見ずに眠っていたってことなのか。

ちょっと待てよ。整理してみるか。

で、基本的な身元調べだ。池田版〈ERIC DOLPHY DISCOGRAPHY〉(2011年10月改訂再版)の「83 ERIC DOLPHY/CONVERSATIONS - IRON MAN」の項によれば、くだんのダグラスセッションについて

Jul.1, 1963
〈Muses〉(unissued)
〈Alone Together〉FM308(アルバム〈CONVERSATIONS〉に収録の意。以下同)
〈Ode To C.P.〉SD785(アルバム〈 IRON MAN〉に収録の意。以下同)
〈Come Sunday〉SD785
〈Alone Together(alternate take)〉(unissued)

Jul.3, 1963
〈Burning Spear〉SD785
〈Music Matador〉FM308
〈Iron Man〉SD785
〈Jitterbug Waltz〉FM308
〈Mandrake〉SD785
〈Love Me〉FM308
〈Iron Man(alternate take)〉(unissued)
〈Mandrake(alternate take)〉(unissued)

ということはつまり2011年10月時点で13テイクの存在が確認され、そのうちの九つのテイクが60年代に2枚のアルバムとしてリリースされているということだ。

で2013年マシュマロレコードの〈MUSES〉に収録されてるトラックは

〈Alone Together(alternate take)〉
〈Muses〉
〈Iron Man(alternate take)〉
〈Love Me (alternate take)〉*
〈Mandrake(alternate take)〉

「*」を付けた〈Love Me〉は上の池田版ディスコグラフィには記述がないから2011年以降の新発見てことなんだろう。

そして今回のResonance Recordsのアルバムで「Previously Unissued」とされるトラックは

〈Muses For Richard Davis(alternate take 1)〉
〈Muses For Richard Davis(alternate take 2)〉△
〈Music Matador (alternate take)〉△
〈Love Me (alternate take 1)〉
〈Love Me (alternate take 2)〉△
〈Alone Together(alternate take)〉
〈Jitterbug Waltz (alternate take)〉△
〈Mandrake(alternate take)〉
〈Burning Spear (alternate take)〉△

ちなみに〈Muses For Richard Davis〉は〈Muses〉と同じ曲。

つうわけで池田版ディスコグラフィにもマシュマロレコードのアルバムにもないのが「△」を付けた五つのトラックってことになる。ということは「△」のない四つはマシュマロとダブってて「Previously Unissued」の看板はそこについては偽りアリってことか。

前にも書いたことだけど5年前バスクラのドルフィーとベースのリチャード・デイヴィスのデュオ〈Muses〉を初めて聴いたとき、んー、こんなに素晴らしい曲と演奏が半世紀も埋もれたままだったなんて信じられない。だけどそれをこうやって聴くことが出来るようになって幸せだよなあとつくづく思ったものだった。

それが今になってもうワンテイク出てきたっていうんだからすごい。そう思いながらこのふたつの〈Muses〉を聴いたわけだ。

でさ。じつはひととおり聴き終わったあとすぐにこのエントリを書き始めた。それで書き進めながら、さてディスコグラフィにもない「新発掘」らしい別テイクと既存テイクはどんなふうに違ってるものかと聴き比べるのもいいかなと思ったんだよ。で、あらためてふたつの〈Muses〉を聴いてから、マシュマロレコードのアルバムをターンテーブルに乗せてこっちの〈Muses〉を聴いてみたわけだ。

音質についていうとマシュマロよりも今回の新しいアルバムのほうが断然いい。たぶんResonance Recordsのほうがマスターテープに近い音源で、マシュマロのはだいぶ世代が下ってる感じのもごもごした音。最初はそのせいじゃないかとも思ったんだが、聴いてるうちになんとなくマシュマロ所収の〈Muses〉はResonance Recordsに収められた二つの〈Muses For Richard Davis〉のどちらとも違うような気がしてきてさ。

演奏時間もちょっとずつ違うんだよ。ジャケットに記載された時間を見るとResonance Recordsの最初のテイクが7分39秒、ふたつめが8分31秒。そしてマシュマロレコードの〈Muses〉は8分49秒。

演奏の構成は三つともまったく同じなんだよ。穏やかで短いビート感のないテーマを、バスクラのドルフィーと弓弾きベースのデイヴィスのどちらかひとりがニュアンスを微妙に変化させながら繰り返し演奏していくところに、もう一人がオブリガートを付ける。その「主」と「従」が何回か入れ替わりながら演奏は静かに続く。

何回か聴いてるうちにResonanceのふたつのトラックのエンディング近くにはどちらもデイヴィスのベースのごく短いアルペジオ(ふたつのトラックのアルペジオはわずかに音数が違う)があるのに、マシュマロのトラックではそれが聞こえない気がする。

Resonanceのふたつの〈Muses〉のどっちかとマシュマロの〈Muses〉が同一テイクだと勝手に思い込んでたけど、こりゃあもしかして三つとも別のテイクなんじゃあるまいか。

じゃあ〈Muses〉以外はどうなってんのかしらん。

そう思って両方のジャケットにある演奏時間を見比べてみるとマシュマロの〈Mandrake〉は4分19秒、Resonanceの〈Mandrake〉は6分48秒になってるじゃんか。上記ディスコグラフィによれば〈Mandrake〉の未発表別テイクはひとつになっている。だけど聴いてみると明らかにマシュマロのほうがドルフィーのソロが短い。編集で切った感じでもない。すると〈Mandrake〉も3テイクあったわけか。

いやあ、最初このエントリを書き始めたときは、「やっぱドルフィーはいいよな。この新しいResonance Records盤は音もいいし初めて聴くテイクもあるし、ブックレットにもいい写真がいっぱいあってGOODなニューアルバムよね」つうような能天気なお買い物自慢にするつもりだったのが、ちょっと雲行きが変わってきちゃったぜ。

じゃあそれ以外のトラックはどうなのか、マシュマロ盤とダブってるようだけど実はそうじゃなかったりするのか。あと何回か聴き比べてみなきゃいけないかな。

こういうことはドルフィー研究家とかディープなコレクターの皆さんは先刻ご承知のことばっかなのかもしれないけど、おれみたいに市販の音源を手に入れて楽しんでる一般庶民にはまったく未知の世界なんだよな。

来週あたり出る日本盤CDの解説にひょっとしてそのへんのことが整理されて載ってたりしないかと思うんだけど、あんまり期待はできない気がする。LPのブックレットには見た感じそういうディスコグラフィカルな解析は載ってないようだし(英文ちゃんと読めないの)。

というわけでおれの聴いた感じでは、いまのところ七つのトラックが正真正銘の「未発表」ってことかな。



d0027243_22021833.jpg

上はジャケットを開いた外側の3面。
下はブックレットに載ってる写真。

エリック・ドルフィーはおしゃれでフォトジェニックだよね。


(Resonance Records HLP-9035)







by god-zi-lla | 2018-12-02 22:43 | 常用レコード絵日記 | Comments(0)