神はどーだっていいとこに宿る


by god-zi-lla

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The beginning and the end(アラン・トゥーサン/AMERICAN TUNES)_d0027243_17452329.jpg
アラン・トゥーサンが亡くなったのが去年の11月で、直後のブログに「まだ追記するつもり」なんて書いたまま放置すること7か月、「遺作」があるんじゃないかとは思ってたけど実際こうやって手にしてみると嬉しい反面やっぱり生きててくれたほうがずっと良かったよな。

なにしろツアーのまっ最中のヨーロッパそれもステージを降りて何時間もしないうちに突然倒れて亡くなったというんだから、トゥーサン本人がこれを遺作のつもりでレコーディングしたなんて到底考えられない。むしろツアーが終わったらニューオーリンズへ帰ってプロデューサーのジョー・ヘンリーとアルバムの仕上げを急がなきゃ、くらいのことを考えてたんだろうって想像するほうがよほど自然だ。享年77歳。

そう思うとこのモノトーンで逆光に浮かぶスーツ姿のトゥーサンをあしらったジャケットだって、もとは別のデザインだったのを本人の死で急遽こんなふうにせざるをえなかったように見えて仕方ないんだよ。

これはジョー・ヘンリーのプロデュースによるアルバムだから当然、グラミーにもノミネートされた2009年の〈The Bright Mississippi〉の続編という位置づけなんだと思う。ようするにピアニスト、アラン・トゥーサンによる「ジャズアルバム」である。今回はなにしろアラン・トゥーサンがワルツ・フォア・デビーを弾いてるんだぜ。

ところで写真の左は1958年アラン・トゥーサン21歳のときに作られたデビューアルバムです。タイトルに「TOUSAN」とあるのはRCAのA&Rマンが「Toussaint」じゃあふつうのアメリカ人が読めないだろうと勝手に変えてしまったせいらしいんだが、トゥーサンはこのデビューアルバムでベースとドラムスといくつかのナンバーにギターとサックスが加わるバンドでピアノを弾いてる。歌はいっさいなくピアノだけ。バンド編成は一見ラストアルバムと似た感じなんだけど、弱冠21歳のトゥーサン青年はぴちぴち飛び跳ねるようにしてニューオリンズ風味濃厚なR&Bを弾きまくっている。

だけどさ、その青春まっただ中みたいなデビューアルバムでも、およそ60年後のこのラストアルバムでもおれが行った三度のライヴでも、聴き覚えのあるいくつかのごく短いパターンがあちこちに飛び出してくるんだよ。いやーこの人は若いころからずっとああやってピアノを弾いてきたんだよなあって、〈The Wild Sound of New Orleans by TOUSAN〉と〈American Tunes〉を続けて聴いてみるとやっぱり少し泣けてくる。

ところでそのデビューアルバムのほうはアルバムすべてがトゥーサンの自作曲なんだけど、ジョー・ヘンリーは基本的に他人の楽曲をトゥーサンに弾かせるというのが前作から引き続いたコンセプトのようで17曲のうちトゥーサンの曲は2曲しかない。

そもそも〈American Tunes〉ってアルバムタイトル自体ポール・サイモンの〈American Tune〉に引っかけて付けられてるくらいなんだけど、トゥーサンは自作曲でも歌ってないのにこのポール・サイモンの曲だけアルバムのなかでただひとつ歌ってるんだよな。だからまあこれがレコードで聴けるアラン・トゥーサンのラストソングってことになってしまった。

なんかね、ちょっとフクザツではあるよ。アルバムでは〈Southern Nights〉も弾いてるんだけどね、それは歌っちゃいないんだ。しかも聴いてるかぎりではその〈American Tune〉を少し歌いにくそうに歌ってる感じがあってさ。

アラン・トゥーサンがキャリアのいつ頃から歌い始めたのか知らないんだけど、少なくとも当初はピアニスト兼ソングライター兼アレンジャー兼プロデューサーとして仕事をしてたからデビューアルバムもそういう仕事のショーケースのようなもので「歌」はナシ。だからもしかすると初めは自作を提供するシンガーに聴かせる「仮歌」として自分の歌声を録音したのがきっかけだったりするんじゃあるまいか。トゥーサンの歌が最後までどっか素人っぽいところが抜けなかったのはそのせいのような気もするんだけど、それはおれの勝手な想像です。

いずれにせよそういうなんとなく素人っぽい歌声がおれは好きだったんだけどラストアルバム〈American Tunes〉ではそういうわけでたった1曲、しかも他人の歌を披露するだけにとどまってしまってるんでした。なんかそれがちょっと残念。もちろんこれをラストアルバムってことで作ってればまた違ったんでしょうが、本人だって引退するとか、ましてや死ぬなんて全然思いもしなかったろうから今回はひとつ毛色の違ったコンセプトアルバムで行こうということだったんだろうな。

もし今もアラン・トゥーサンが元気だったらブツブツ言いたいことがまだいくつかあったりするんだけど、もうこの人のニューアルバムは(多分)金輪際聴くことができないわけだからそういうことは全部ヤメにする。21歳の〈The Wild Sound of New Orleans by TOUSAN〉から77歳の〈American Tunes〉、音楽的な教養と経験をたくさん積み重ねてきた証しがこの2枚のなかには確かにあってそれはやっぱりすごいものだったよなあと思うしかないんだ。
The beginning and the end(アラン・トゥーサン/AMERICAN TUNES)_d0027243_8411263.jpg
「遺作」のゲートフォールドの内側。このサンダルは間違いなくアラン・トゥーサン。白いソックスにこのサンダルで上はラメでキラキラのピンクのスーツっていうのが毎回ライヴの衣裳だった。

ところでこのアルバムに参加してるギターはビル・フリゼール、テナーはチャールズ・ロイド、それにグレッグ・リーズまで加わって、まるでここからセットで助っ人に来たような有様なり。

American Tunes(NONESUCH 554656-1)
The Wild Sound of New Orleans by TOUSAN(RCA VICTOR LPM-1767)
by god-zi-lla | 2016-06-26 08:57 | 常用レコード絵日記 | Comments(4)
追悼 アラン・トゥーサン(追記あり)_d0027243_11573420.jpg
アラン・トゥーサンが亡くなった(Rolling Stoneのサイトに出た訃報)。

上の写真が本人のラストアルバムになったのかもしれないが、2010年NYでのライヴだからそれ以降のレコーディングが(本人名義かどうかは別として)たくさんあるだろうと思う。それにしても突然の訃報だった。ツアー中のマドリッドで心臓発作に見舞われて急死なんて。

アラン・トゥーサンが来日したのは今年1月がたぶん最後で、おれは22日ビルボードライブ東京で聴いた。このときはギター、ベース、ドラムスを従えたクァルテットで自作の曲を歌いまくり弾きまくった。もちろん元気でライヴを見ているかぎり目の前の人が76歳の「老人」だと意識することすらなかった。余談ですけど去年の1月、同じビルボードライブ東京でトゥーサンと並ぶニューオーリンズ音楽の重要人物の一人でひとつ年上のアート・ネヴィルも見たが、彼のほうが杖をついてバンドスタンドに登場し体調も悪そうでいかにも老人ぽかった。

それはともかくその前にアラン・トゥーサンを同じ場所で聴いたのが2013年の10月。そのときはドラムスひとりのみで、しかもドラムスの加わらない完全ソロの演奏が多く、上に挙げたNYライヴのアルバムによく似た構成のステージだった(アルバムのほうは全曲トゥーサンのソロ)。そして初めてナマのアラン・トゥーサンを見たたのがやはり同じビルボードライブ東京2009年の5月30日だったんだが、これは最後に聴いた今年1月と多分同じメンツで(ギタリストは間違いなく同じ人。裸足だしギタリストなのにフルートに持ち替えたり、リコーダー二本吹きしたり多芸だったので覚えてる)、これがアレンジや演奏も含めトゥーサンのレギュラーだったのかもしれない。

と、ここまで書き直したらYouTubeにマドリッドでの、結果的にラストライヴになってしまった演奏がアップされてるのを見つけた。客がスマホかなんなで撮ったものらしく音も映像も悪いけど、まずはこれで偲ぼう。メンバーもアラン・トゥーサンの衣裳も(ラメラメのスーツに白いソックスにサンダル!)1月に来日したときとおんなじだ。

この何時間か後に亡くなったなんて、信じられない。



(まだ追記するつもり)


追悼 アラン・トゥーサン(追記あり)_d0027243_11575024.jpg

by god-zi-lla | 2015-11-12 11:57 | 常用レコード絵日記 | Comments(0)
またもトゥーサン集だが良いものは良いのだから仕方ありません(ジョン・クリアリー/Occapella!)_d0027243_1325972.jpg
そうはいっても全然レコードをかけたりしてないわけじゃないんだけどさ。ジャズでいえば村上春樹のモンク本を読んで以来マイルスのクリスマスセッションのレコードを聴き直してみたり、去年あたりからずうーっと気になってるリー・コニッツのレコードをマイブームというより、このおじさんはいったいぜんたいどーゆー人なんであろうかという程度のまあ非常に初歩的な好奇心といいますか、そういう感じで買える範囲のレコードを見つけちゃ買って聴いてたりするんだけどね。まあどっちも古いレコード聴いてるだけですから、あらためてブログに書くようなこともありません。

で、新しいもののなかでここんとこわりかしよく聴いてるのが英国出身ニューオーリンズ音楽業界どっぷり在住のジョン・クリアリーがピアノ弾きひき歌ってるアラン・トゥーサン集なんだけどね。まーたアラン・トゥーサンかよと宣う勿れ。これがまたとっても小粋でいいんです。同じピアノ弾き語りでもトゥーサン本人が歌うとちょい猫なで声のまあソウルミュージックマナーの歌になりますけど、クリアリーはじゃっかん鼻歌っぽいような、シンガーはサイドビジネスです的雰囲気を醸し出して一瞬モーズ・アリソンに似てなくもないかなと思ったりするんだけど、あんまり似てなくてね(なんなんだよ)。

しょっぱなLet's Get Low Downはヴォーカルにドクター・ジョンとボニー・レイットって超大物ふたりがゲストで歌ってて、おー! と思うんだけどさ。だけどゲストが加わるのはこの1曲のみで、あとは全部クリアリーがひとりで歌ってるんだよ。だからといってほかの曲にもゲストが欲しいとか物足らないなんてことは、これっぽっちも思わない。

だいたいアラン・トゥーサンの作る曲ってリキんで歌わなきゃいけないようなのはたぶん一つもないと思うんだよ。それをクリアリーはじゅうぶんニューオーリンズらしい香りと保ったままレイドバックしたいい感じの歌と演奏に仕上げててね。あーこういうふうに料理したアラン・トゥーサンの曲ってのもすごくいいもんだなあと、秋の夜長にしみじみ且つうきうきと聴けるアルバムなんであった。

ところでアルバムには全部で12曲収録されてるんだけど、そのうち4曲にはアラン・トゥーサンじゃなくてNaomi Nevilleっていう名前がクレジットされている。ん、ネヴィル? ネヴィル・ブラザーズのだれかの娘かなんかですか? だってこのアルバムってアラン・トゥーサンのソングブックだろ。なんでそこにネヴィルなんて名前がまた。

と、れいによってウィキペディアを見てみればそのむかし、アラン・トゥーサンはNaomi Nevilleって名前で曲を発表してたんですってね。ぜんぜん知りませんでしたが、そのネヴィルというのはトゥーサンのお母さんの旧姓だったっていうんだよ。へえー、そうだったんですか。するってえとアラン・トゥーサンとネヴィル・ブラザーズのめんめんはもしかして親類だったりするんでしょうか。

まあそのあたりのことはそれ以上わかんないんですけども、とにかくこのジョン・クリアリーのアラン・トゥーサン集はどっかデイヴィッド・ストーン・マーティンを思わせないでもないカヴァーイラストも悪くないし、とても楽しくて繰り返し聴いてもぜんぜん聴き飽きないアルバムなのであった。

ちなみにアラン・トゥーサンは来年1月また六本木のビルボードライブに登場するようで、こんかいはギター、ベース、ドラムスの加わるクヮルテット仕様でなにかやってくれるようなのであった。じつにうれしいニュースである。ちなみに父さん2015年にはもう77歳、つうことは喜寿である。いやまったくもって目出度いめでたい。こうなったら来日するたんびに行かねばの娘というやつではあるまいことか。

(FHQ RECORDS 6 34457 56182 3)
by god-zi-lla | 2014-11-24 13:03 | 常用レコード絵日記 | Comments(0)
ソングブックといえばこっちだよな(-ROLLING WITH THE PUNCHES- THE ALLEN TOUSSAINT SONGBOOK)_d0027243_74336100.jpg
ところでこのブログ始めてから今までの閲覧回数オールタイム・トップ1は、下のほうへスクロールしていただいて左のほうにある記事ランキングつう欄にだいたいいつも居座っている「魯山人の星岡窯跡を見…」てやつでおそらく間違いないと思うんだよ。

魯山人の星岡窯というのはそれなりに知られた存在で、しかもそんなに古い話でもないのに現存しないうえ多分いろんなややこしいモンダイを抱えたままのようでもあるので、それが正確には鎌倉のいったいどこいらへんにあったのかっつう情報があんまりなかったんだよ。それでまあほとんど野次馬根性で北鎌倉の駅から探し探し行ってみた一日を写真つきで載っけたら、どうも気になってる人はヨノナカにそれなりにいたようでさ。しかもその後もネット上にそれほど新しい情報が加わってなくて、なんとなくいつもどなたかがご覧になってるみたいでね。

だけどもうそれなりに古い情報になってるもんですから、できたらどなたかそのエントリーを見て現地へ行った方が現在の状況を公開してくださるといいと思ってんですけどね。

つうわけで良い季節になってまいりましたし鎌倉観光にちょいと変化をつけるには恰好のポイントではあるまいかと存じますのでこの黄金週間にでも是非足をお運びになってはいかがでしょうか。行き方は文中のランドマークになる固有名詞をグーグルマップで検索してもらえば一発でわかります。だたし付近は観光地でもなんでもない住宅地なので(少なくともおれたちが訪ねた当時は)お土産屋さんとか食事する所とかはいっさいないです。

ついでに申し上げますが、鎌倉観光にちょいと変化をつけるなら鎌倉五山などの有名なお寺を含め、お寺さんの裏手のほうにある山腹などを訪ねますと、「やぐら」と呼ばれる鎌倉特有の横穴式のお墓があちこちにあります。じめじめと苔むして薄暗い穴ぐらを片っ端から覗いていくとそのうち背中のあたりが涼しくなってくること必定。これから汗ばむような季節にはなかなかの散策コースではありますまいかしらね。

で齢七十を超えてますます意気盛んなアラン・トゥーサンが生んだ名曲のかずかずを集めたコンピレーションCDが写真なのだった。いやほら、ここんとこに書いたトゥーサン自身が自作を自分でピアノ弾いて歌ったライヴアルバムのタイトルが「ソングブック」だったんだけど、それはなんかやっぱ普通は作曲家本人が自作自演で作らないでしょって思ったもんですから、本来はこうでしょっていうアルバムをね。

だけどホントはこっちのCDのほうが先に出てたんだよ。買って聴いたのもこっちのほうが先だったんだけど、じつはどっちのアルバムも買ってから一度も片付けたことのないロングタイム・ヘヴィーローテーションになっててね。いやもうアレです。ボニー・レイットはいるわ、ボズ・スキャッグスはいるわ、エアロン・ネヴィルはいるわ、ミーターズはいるわ、アーマ・トーマスはいるわ、ポインター・シスターズはいるわ、マリア・マルダーはいるわ、ソロモン・バーク大王はいるわ、ミリー・ジャクスンはいるわ、本人はいるわ、トリはサザンナイツを歌うグレン・キャンベルだわ。こういう人たちが歌ってしかもそれが全部アラン・トゥーサンの曲だってんですから、もう全然飽きるということがないの。

つうわけで今年はなぜか飛び石の黄金週間うまく旅行にも行けないじゃんか、いっそのことのんびり寝っ転がって音楽でも聴いて過ごすべいかなんて思ったときに聴く1枚にうってつけなんではあるまいかと、この時期に敢えてご紹介申し上げたわけなんででございます。

なんちて、ホントは去年のうちにジャケットの写真まで撮っといて書くのをすっかり忘れてたほっぽらかしてたのを、さっきハードディスクに溜まった写真を整理整頓してるうちに見つけたもんですから急遽デッチ上げたんでした。

それにしてもマクラのほうが長かったな。
わはは(とほほ)。

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by god-zi-lla | 2014-04-27 09:19 | 常用レコード絵日記 | Comments(0)
こんどは歌いまくる巨匠(アラン・トゥーサンのライヴとニューアルバム)_d0027243_7572441.jpg
それにしても台風の雨がなあ。

あろうことか六本木ミッドタウンのビルボードライブでやるアラン・トゥーサンのライヴの予約開始日をカレンダーに印までつけといてすっかり忘れててさ。あーしまった、もうすぐじゃんかと焦っていつもの傍聴席というか大向こうというか天井桟敷というか、まあそういったライブレストランと銘打ちながらそこだけはお食事なんかしなくてもいい1ドリンク付きのカウンター席を予約したら取れたのでよかったんですけど、しかしこれだけの巨匠の知名度というものがいまひとつだってのがちょっと淋しいといえば淋しいよな。

というわけで回と同じビルボードライブへ行ってから4年ちょいの10月22日の夜、ふたたびアラン・トゥーサンのピアノと歌を存分に楽しんできたんでした。いやーよかったよかった。前回はジョー・ヘンリーがプロデュースしたクラシカルなジャズっぽいアルバムが出たあとで同趣向のピアノ中心のステージでしたけど今回は1時間ちょっとのセットをピアノ弾きまくりかつ歌いまくるという展開なのだったが、はっきり申し上げましてバンドで来日した前回よりもほとんどソロの(半分くらいにコンガ&パーカッションのおじさんが一人付き合う)の今回のほうが凄味を感じさせるライヴだったのがすごいよ。

じつは少しまえに御大あたらしいアルバムをリリースしておりまして写真にゲートフォールドの見開きが写ってるAllen Toussaint Song Bookというのがそれなんだが、ふつうソングブックつうタイトルのアルバムってばエラ・フィッツジェラルドのコール・ポーター・ソングブックみたく歌手がある作曲家の歌をまとめてアルバムにするようなのが当たり前であって、自分の歌を自分で歌ってソングブックっていうのもなんだか珍しいような不自然なような気がしないでもないんだけど、たった一人で24曲歌いまくりピアノ弾きまくったライヴが、じつにまったくいいアルバムになってんだよ。

でまあ、こんかいの来日でもこれをやるんだろうなと予想はしてたんですけどね。

あのーやっぱりアレじゃないですか。CD聴いてるとアラン・トゥーサンが自分でピアノを弾きながら歌ってんだってふうにはあんまり意識しないで、アタマではそう知ってはいてもなんとなく「歌+ピアノの伴奏」って感じで聴いてたりするじゃないですか。

なんていうのかな、ようするにピアノの弾き語りっていってもいろいろあるわけで、ぽーんぽーん、ぽろろーん、くらいにコード押さえながらさらさらっと文字通り語るように歌うってのも弾き語りでしょうけど、この巨匠の場合ピアノをがんがんと当然ぜんたいとしたらニューオーリンズ風なとこへときにドビュッシーかと思わせるようなフレーズが挟まってたり、なんだかわかんないけどどっかで聞いたことのある何かの引用だったりってのがこれでもかってくらい入れ替わり立ち替わり出てきては消える緩急自在のピアノを弾き倒しながら、Yes We Canのような早口言葉みたいな歌でもなんでもあの柔らかい声で歌うんだけどさ。

CDで聴いてるあいだはともかく間近にそれを目撃してしまうと呆然とするというか、この人はやはり尋常ならざる巨匠だよなあと思うしかないんだよ。しかもほとんどすべてが自分以外のシンガーのために書いた自作曲なわけだしさ。いったいこの人の本業はピアノ弾きなのか歌うたいなのかソングライターなのか、はたまたアレンジャーなのか、まあしかしやっぱりこの巨匠はニューオーリンズ音楽の生き神様としか言いようがないんだろうな。

つうわけで写真左は店のチラシですけどゲートフォールド右側ロールスロイスのバンパーにスーツ姿で足をかけている巨匠の足は白いソックスとサンダルつう、そういえば昔おれがサラリーマンだったころ勤め先の内勤のおじさんたちによくあったこれは「社内ファッション」だったよなあって、なんかちょっとダサ恥ずかしい生き神様のお姿だったりするのだが、じつはライヴでも巨匠はこのサンダル履きなうえにムラサキの地にラメがキラキラときらめくジャケットをお召しになって、前回も今回も変わらずピアノに向かうのであった。

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ところでアルバムもCDもラストは紫ラメのジャケットのようにきらきらとしてエキゾチックな長いイントロのついたSouthern Nights。アルバムでは途中で歌われる唯一の自作でない曲「セント・ジェイムズ診療所」が22日のファーストセットではアンコールだった。

それからアルバムではBrother Get Furtherで客席とコール&レスポンスが楽しそうだったので、よーしライヴでやったらデカい声で歌ってやろうと思ってたら、おれが行ったセットではやってくれなくてちょっとガッカリ(笑) そういえばSoul Sisterもやってくれなかったなあ、シスタッ・シスタッ・シスタッ・シスタッって。

でもいいんです。巨匠にはじつにたくさんの名曲があるんだから。

ところでビルボードライブには来年1月アート・ネヴィルを含むミーターズの残党バンドが出るらしい。エアロン・ネヴィルと元気な次兄チャールズ・ネヴィルのバンドはここで見ましたから、アートが出るのに行けたらあとは末弟シリルが出てくれりゃビルボードライブでネヴィル・ブラザーズをバラで見物したことになるな。あはは。
by god-zi-lla | 2013-10-26 07:57 | 常用レコード絵日記 | Comments(0)
父さん?(The WILD Sound of New Orleans by TOUSAN)_d0027243_1820621.jpg
雨がしとしとしとしとずうーっと降ってて、なんだか冷える晩だねえ。
凍った雨の降る鵯越の火葬場から底冷えのする京都に寄って、東京に帰ってきたらやっぱりこんな天気でさ。そのせいなのか元気がいまひとつ出ないんだよな。

しかしまああれですわ。こういう日は晩メシにナベでもこしらえて気合い入れてあったまるにかぎります。そうだそうだ。きょうはナベにしよっと。って、しかしほとんど毎晩そんな調子だもんなー。いやまったくいくらレパートリーが広くったってもうネタ切れですよホント。

なので今夜はちょっと新機軸。
構想5分。買い物30分。調理90分。あらあらかしこ。
じゃなくってね。

さいきん買ったレコードってわけじゃないんだけどね。
さいきんになって素性つか来歴がちょっとわかったんです。
買ったのは去年の夏、いやもう少し前だったかな。
もしかしたらおととしだったかもしんない。

内袋はブーブー紙です。
いまどきそんな言い方だれもせんて。

アラン・トゥーサン若かりしころのレコードなんだけども眉にツバつけつつ買いました。
だってほらスペルがおかしいじゃんか。ジャケット見てくださいな。
TOUSAN

になってるでしょ。しかしホントは。
TOUSSAINT

えーここに写ってるCDのタイトルんとこ見てご確認されたし。
ふつうここまで大胆にアルバムタイトルのなかに入ってるミュージシャンのスペル間違えるってことないだろ。だからもしかしたら同じニューオーリンズにいる「トゥーサン」て別人のアルバムかもしれんなーと思ってたりしてさ。

だってジャケットの写真見比べたってさ。この50年の歳月を隔てた2枚のポートレートの人物がおんなじ人だって断言できますかい旦那。うーん。ちょっとなー。外人だからなおさらわからんもんなー。でしょ。

おれは実物のご尊顔も拝しましたけどCDに写ってんのが本人だってことっきゃわかんない。

「トゥーサン」て日本人でいえばサイトウさんみたいな人でさ。
斉藤さん
斎藤さん
齋藤さん
齊藤さん
西藤さん
西東さん

字はちがくても読みは一緒で別人。みたいな。

いやーニューオーリンズにはありげな苗字なんだよねー、なんてそんなことありますか。

聴いてみてもね。あーこれは間違いなく若いころのアラン・トゥーサンだよなあっつうところまでわかりません。歌ってくれてればまだわかるかもしれないんだけどね。柔らかい声だしさ。でもこのレコードではいっさい歌ってません。ピアノ弾くのみ。

非常に達者ではあるんだけどね。ピアノ。でもこのなんというか現在の非常に引き出しの数が多い、ありとあらゆる音楽にこの人は精通してるんでないかという底知れなさっつうのは当然ながらないんだよな。そりゃそうだよ。このレコードたぶんまだハタチになるかならんかくらいでしょ。

この年齢にしちゃあ見事なピアノではあるんだけど、いわゆるひとつのニューオーリンズのブルーズつうか。年代的にややロックンロールがかってきてるものの、しかしあくまでもたんなるニューオーリンズのブルーズという感じなのね。

聴いても同一人物だと確信できません。

そしたらせんだってんだ「レコーディング・スタジオの伝説 〜20世紀の名曲が生まれた場所」(ジム・コーガン、ウイリアム・クラーク/著、奥田祐士/訳)つう本よ。この本の108ページから始まるニューオーリンズの伝説的スタジオ、J&M コジモズ・ファクトリーの章。

あひょー。いきなりこの章のトビラの写真がこのジャケット写真と同じ上着に同じネクタイのアラン・トゥーサン青年じゃんかよ。おんなじセッションの写真に間違いないねこいつは。わははは。やっぱなー。はいはいはいはい。そうだったんかそうだったんか。いやいやいやいや。って意味不明なリアクション思わずしちゃったもんなー。

で本文にはこんなことが書いてあります。
… 1958年、RCAはJ&Mでオーディションを開き、コジモはトゥーサンに、タレント候補たちの伴奏を依頼する。参加者の列は、ブロックをぐるりと取り囲んだ。3日間にわたるオーディションの末に、契約を勝ち取ったのはたったひとり——ピアノ奏者だけだった。RCAはすぐさま、アル・トゥーサン(Tousan)名義のアルバム『The Wild Sound of New Orleans(ザ・ワイルド・サウンド・オヴ・ニューオーリンズ)』("Toussaint"という綴りはあまりになじみにくい、とRCAの重役たちは考えたのだ)をリリースする。現在でこそコレクター垂涎のレア・アイテムとなっているものの、当時の売り上げは芳しくなかった。…

え、コレクター垂涎のレア・アイテム? 売れ残ってたんですけどこれってば。
いやそれはともかくとしてだな。

けど乱暴なことするなあ。読みにくいから勝手にスペルいじってんだもんなー。フランス風のスペルだからご先祖様はクレオール系だったんでしょうかしらね。でも他人様の名前勝手にいじくっちゃいけません。

いやしかしそういうことだったわけか。
ようするにこいつはアラン・トゥーサンのデビューアルバムなわけだったんだ。

まあ、ありげなサクセスストーリーってばそれまでですけども、なかなか興味深いエピソードではありますね。なんか後年のトゥーサンの活躍をそのまんま「予告」してしまってるつうかね。そんな感じだよな。

それにしてもこの本は面白いよ。
たくさんのスターやヒット曲を生んだ伝説のスタジオとそのエンジニアや経営者について書かれた一種の「列伝」本なんだけどね。まあここいらへんのことに詳しい人にはとくに目新しい話はないのかもしんないけど、おれらみたいなアメリカのポップミュージック好きのシロートが読めばすごく楽しい本なんです。

もしかすると、このアラン・トゥーサンのデビューアルバムよりかずっと楽しかったりしてね。
本とレコードくらべちゃいけないけどさ。この本の引き出しの数が今のアラン・トゥーサン並みだもんだからさ。やっぱね。そういう面白さってのはそうそうあるもんじゃありません。

つことで、オマケのレーベル写真どうぞ。
父さん?(The WILD Sound of New Orleans by TOUSAN)_d0027243_18201982.jpg

by god-zi-lla | 2010-02-15 18:21 | 常用レコード絵日記 | Comments(0)
アラン・トゥーサンは神様級でした。_d0027243_955434.jpg
関東地方はきのういっとき上がっただけで長雨だなあ。このまま梅雨入りでしょうかね。

その雨上がりの放課後じゃなくて午後湯島の「ゆるい音楽喫茶」で1時間ばかりバカ話でお茶してきたあと、防衛庁跡地の六本木ミッドタウンにあるBillboard Liveつういかにもいまどきな「ライヴ・レストラン」にアラン・トゥーサンを聴きに行ってきたんでした。

レストランかもしんないけどおらそんな落ち着かないとこでしかも高いメシなんて食いたくないから、天井桟敷みたいな大向こうみたいな見方によっちゃ傍聴席みたいなステージ見下ろすカウンター席で1ドリンク付き6500円税込み。

いやーしかしあれですわ。正直申し上げておれはアラン・トゥーサン聴きにいったことによって、聴かなかった人よりだいぶんとシアワセになったと断言できますもんね。もうそれが感想のすべて。最高。

それにしてもレコードやCD聴いて考えてたよりずっとはるかにおおきな音楽世界を持ってる人だってことがイヤというほどわかった。いままで聴いたどのCDもレコードもこの人の世界の「ほんの一側面」を聴かせてたにすぎなかったんだなあ。このまえ書いた新作もまたしかり。

それとピアノについていえばこれも想像を超えるヴァーチュオーゾだった。
いったいぜんたいなんて人なんだアラン・トゥーサンて人は。

しかしまあなんという引き出しの多さとその引き出しの幅高さ奥行きのなんと大きなことか。
いやまったく神様級です。まいりました。

写真左のほうは78年のアルバムの裏表紙にある写真す。いまとなっちゃ少し笑えますな。右は新作の表紙にある「近影」ね。いまはこんな感じの人。ちなみにバンドは本人のピアノにテナーサックス(クラリネット持ち替え。歌もうたう)にエレクトリックギター(このおじさん裸足だった)、同ベースにドラムスっていうメンツ。

ありとあらゆる音楽の断片が「引用」されまくる、あのピアノソロで1枚CD作ってくんないかなあ。
by god-zi-lla | 2009-05-31 13:03 | 物見遊山十把一絡げ | Comments(0)
意外といえば当然。ありえる話にしちゃ初めて(Allen Toussaint / THE BRIGHT MISSISSIPPI)_d0027243_20132641.jpg
アラン・トゥーサンてば言うまでもなくニューオーリンズ・ファンクの大立者なわけだ。いっぽうニューオーリンズってばジャズ発祥の地のひとつでもあるわけだけしニューオーリンズの音楽のひとつとしてジャズは重要だってことも知ってるような気がしてたわけではあるんだけどもね。

しかしアラン・トゥーサンとトラディショナルなニューオーリンズのジャズが直接結びつく感じってのは、おれのアタマんなかには正直なとこありませんでした。でもこの新しいアラン・トゥーサンのアルバムは全面アラン・トゥーサン流のニューオーリンズ・ジャズなの。

しかしね。「アラン・トゥーサン流」なんていったけど、先入観なしにこのCD聴いてトラディショナルなジャズだと思わない人はいなかろうという、紛れもなくそういう音楽なんだよな。ただ、ついうっかりこれがアラン・トゥーサンのアルバムだと先に知ってから聴いてしまうと、あーこれはもうアラン・トゥーサン流だよなあと、もうつくづくそう思うしかないというシロモノでもあってさ。

なんつうかアラン・トゥーサンの音楽もニューオーリンズの音楽というのも、ともにあれもこれもいろんな顔を持っててそれがどれもこれもみんな同じ根っこから生えてきてるもんなんだってことを、あらためて思い知らされたりするわけだ。このCD聴いてさ。

しかしそんなことをつい思ってしまうのもさ。もしかしたら知恵者のプロデューサー、ジョー・ヘンリーにしっかり乗せられちゃってるからかもしれんなと、ちょっと思ったりもする。

とにかくドン・バイロンが何食わぬ顔でデキシーランドふうなクラリネット吹いてたりするわけで。いやおれなんかみたいな鈍感な人間にはふつうにしか聞こえないんだけども、もしかしてそこにジョー・ヘンリーがなんか仕掛けてんじゃないかとかね。とにかく人脈のなかにオーネット・コールマンまでいるプロデューサーだからさ。なんかかんか埋め込んでんじゃないかとつい勘ぐりたくなるとこはあるんだけどね。

しかしまあなんだな。もしかしたらプロデューサーの錬金術的仕掛けが施されてんのかもしれないけど、そんなことは知ったこっちゃなくてだだもうアラン・トゥーサンの新作としてなんの違和感もない仕上がりつうか、ずっと前からこんなアルバムをいくつも出してるんじゃないかと錯覚してしまうような、べつに「自分のルーツを探って遡る」みたいな気構えたとこなんか微塵もないふつうの音になってんだよな。

1曲だけアラン・トゥーサン歌ってます。1曲しか歌わせないジョー・ヘンリー憎し。
しかもあなた。それがまたスライドギターを従えて珍しく非常にブルースブルースした曲。ディープなブルースを歌うシンガーってわりと張った声で歌うのがふつうだと思うんだけど、それをあのソフト&メロウな声でやられてしまうと、これはまたちょっとたまりませんぜ。うーん、これは1曲だけだからよけい効果抜群なわけだ。ジョー・ヘンリー憎し。

今月すえに来日するんだってね。アラン・トゥーサン。
こういう音楽をやるわけじゃないらしいんだけど(やっぱ本筋の仕事じゃないってことなんだよな)、聴かないテはないよな。

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Allen Toussaint / THE BRIGHT MISSISSIPPI
(Nonesuch WPCR-13336 国内盤CD )
アラン・トゥーサン(p,vo)
ドン・バイロン(cl)
ニコラス・ペイトン(tp)
マーク・リーボー(g)
デイヴィッド・ピルッチ(b)
ジェイ・ベルローズ(ds)
by god-zi-lla | 2009-05-05 20:13 | 常用レコード絵日記 | Comments(5)
ライヴDVDにハマりそうだぞ(HOT AS APISTOL KEEN AS ABLADE / ELVIS COSTELLO & ALLEN  TOUSSAINT)_d0027243_6292861.jpg
エルヴィス・コステロとアラン・トゥーサーンのジョイントというかトゥーサーンのバンドをバックに従えたコステロのコンサートっつーか、そういう感じだね。
もう少しトゥーサーンの歌が聴きたいと思わないわけじゃないけど、まあ贅沢はいいません。トゥーサーンがプロフェッサー・ロングヘアの曲をソロピアノでやったりもしてるしさ。

しかしなんだね、こういうふうにDVDマルチチャンネルで見る(聴く)ライヴDVDってのはなかなかいいもんだねえ。なんか病みつきになりそうな予感がしますなこれは。とくにギミックがあるわけじゃないけども、安定した映像と音で120分きっかり楽しめました(時間なくて3日に分けて見たんだけどね)。

それにしてもモントリオール・ジャズ・フェスティバルのお客がうらやましいよなあ。このメンバーで日本ツアーやってくんないかなあ。来日したらぜってー行くんだけどなあ。でもやんないだろうなあ。

ほんとはライヴDVDがいくら楽しくったって、やっぱり現場に行きたのよね。
by god-zi-lla | 2007-05-01 12:21 | 常用レコード絵日記 | Comments(0)
近頃のヘヴィーローテーション_d0027243_928358.jpg朝刊読んでたらワールドカップ。
日本代表がくそ暑い日中にゲームをしなければならなかったのはテレビ中継を日本時間に合わせたせい、という報道が出てたな。

まあ、さもありなんという話。
しかし、それでもって日本代表が苦しい展開になって負けたようなニュアンス。

それはちがうだろよ。
日本の都合で猛暑の苦しい試合をやらされたのは、むしろオーストラリアとクロアチアじゃんかよ。

両国に対して失礼千万。
ようはサッカーに対するフィットネスの差。それだけ。
じつに見苦しい報道。ただの負け惜しみ。

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それはさておき最近のヘヴィーローテーション・ディスク。

ELVIS COSTELLO & ALLEN TOUSSAINT
"THE RIVER IN REVERSE"

文句なし。言うことなし。
この組み合わせのライヴ、日本でちょっとだけやったっつーのがくやしい。
ぜってー聴きてえぞ。
この盤のプロデューサー、よく見ますとあのジョー・ヘンリーなんですな。
どうりでこのやや暗くマットでかつニュアンス豊かな音。
買って聴くよろし。

MAVIS STAPLES
"HAVE A LITTLE FAITH"

これを聴いたときにその声のチカラに感動したので買ってみた。
ゴスペルについてまるっきし不案内だけどそんなこと関係なく、すごい人はすごい。
買って聴くよろし。

SING ME BACK HOME
THE NEW ORLEANS SOCIAL CLUB

まるごとNEW ORLEANS。ドクター・ジョンもいる。シリル・ネヴィルもいる。ブラスバンドもある。楽し哀しい。買って聴くよろし。
by god-zi-lla | 2006-06-25 10:14 | 常用レコード絵日記 | Comments(0)