神はどーだっていいとこに宿る


by god-zi-lla
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なんとかコーティング・ジャケットのぬめぬめ感を出そうと思って撮るんだけどもシロート写真には荷が重すぎた。なので字で説明しますけど許してたもれ。右はかれこれ40年くらい前に買った(最近こんなのばっかで申し訳ないね)ワーナー・パイオニア盤の〈HERE IS PHINEAS〉で、左が60年前に発売されたコーティングのぬめぬめもあやしいオリジナルのATLANTIC盤なのだった。

おれが40年前に国内盤を買った時点ではまだオリジナルがリリースされてから20年しか経ってなかったってことなんだな。つうことはこの盤を買った年、おれもハタチだったわけだ。光陰矢の如し。あたしゃいまや白髪三千丈。なんちて。

ジャズを聴き始めたばっかりのおれはスイングジャーナル誌に載ったこのフィニアス・ニューボーンJr.のデビューアルバムが1956年5月に録音されたものだっていうのを知り、俄然それを聴いてみたくなったんでした。なんとなれば56年の5月っていうのは生まれた月だから。自分が生まれたとき、一緒にどんな音楽が生まれようとしてたのかってすごく興味があるじゃん。そんなことない? そうかなあ。

前にも書きましたけど、マイルス・デイヴィスの有名なマラソンセッションの前半が56年の5月11日なんだよ。こっちはもっと近くてドンピシャおれの生まれたその日(日本時間5月12日)でさ。以前は4部作のうちこの日録音された曲だけLPからカセットにダビングして聴いたりしたもんだった。

フィニアス・ニューボーンJr.のことがSJ誌に載ったのは多分、何年ぶりかのリーダーアルバムがデビュー作と同じATLANTICからリリースされたって記事だったんだと思う。〈SOLO〉というタイトルで勿論アルバムまるまるソロ作品だった。こいつに針を下ろすといきなり本人の「行くぜ」みたいな声がきこえてめちゃくちゃな猛スピードでものすごい音数を鍵盤から叩き出す。

ニューボーンの演奏スタイルにはソロが合ってたんだろうな。つか、回りに人がいるのが合わないようなピアノを弾く人だったと言ったほうがいいのかもしれない。写真のデビューアルバムも収録8曲のうち3曲をソロで弾いてる。トリオアルバムのなかで1曲くらいならソロを収録するってのもあるでしょうけど半分近くがソロってのはやっぱフィニアス・ニューボーンJr.の資質にソロが合ってるとプロデューサーのネスヒ・アーティガンも思ったってことに違いないんだ。

そしてやっぱりこのデビューアルバムでも隙間という隙間を音で埋め尽くし、曲によってはドラムスのケニー・クラークがあきれてテンポを合わせるのをやめちゃったようにきこえたりするくらいの猛スピードでぶっ飛ばしたりして、一種曲芸的にもきこえるくらいなんだよ。

そのフィニアス・ニューボーンJr.の〈HERE IS PHINEAS〉のオリジナル盤がつい先日、三千円台でエサ箱に刺さっていたのだった。ドリル穴が開いていて裏ジャケには数字のゴム印が押してあるけどぬめぬめコーティングはキレイだ。だけど三千円台ってば盤面はきっとザリザリだよなあ。

なにしろお誕生月に録音されたというだけで買った1枚ではあったわけで、それだけの理由で買ったわりにはけっこう愛聴もしてきたんだけどオリジナル盤を買い直そうなんてことは考えもしなかった(買いたいレコードはほかにいくらでもあるしね)。だけど三千円台っていわれるとなあ。そもそも20年前に買ったときから「記念の品」だしなあ。盤がザリザリで聴くに耐えなくてもまあいいか。なにしろ、ぬめぬめですし。

つうわけでまた「記念の品」として買い求めてしまったんであった。ハタチでワーナー・パイオニア盤。還暦の年にオリジナル盤。なんか自分で自分が可愛くなるよ。ばかだなあ。

ところでこの〈HERE IS PHINEAS〉はアトランティックのレコードのなかでは珍しくヴァン・ゲルダーが録音した1枚なんであった。〈Deep Groove Mono〉つういかにもな名前のサイトにあるヴァン・ゲルダーの初期ディスコグラフィによれば56年2月MJQの〈FONTESSA〉が最初でフィニアス・ニューボーンJr.が2回目となってる。しかしこれはレコーディングの一部と注にあるうえマスタリングの欄には「None」とあるところからすれば、このディスコグラフィを見る限り、どうもアトランティックの仕事でマスタリングまで仕上げたのは我らがニューボーン盤が最初で最後だったみたいだな。56年の5月3日トム・ダウドがほかの仕事で忙しかったのか、なんか理由がありそうだけどわからない。

というわけでこのLPのデッドワックスには手書きで「RVG」と彫られている。

そのルディ・ヴァン・ゲルダーは8月25日に他界、91歳だったとのこと。長命でおれたち世界中のジャズやレコードのファンに沢山の楽しみを残していってくれた恩人だな。ありがとう。合掌。

ヴァン・ゲルダーについてはおれが書き加えるようなことは何もありませんけど、レコード・コレクターズ誌2011年11月号に常盤武彦氏によるヴァン・ゲルダーへのインタビューとヴァン・ゲルダー・スタジオのカラー写真が掲載されている。たぶん日本人による日本の雑誌に載った最後のインタビューで内容もすこぶる興味深い(とくに初期ステレオ録音について!)ので、読んでみて下さいませ。


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盤面はやっぱり結構ザリザリだったけど、メラミンスポンジで磨いたらまあまあ聴けるレベルにはなった(良い子のみんなはマネしないよーに)。
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(9/12/2016追記 上記アルバムにソロ3曲は勘違いでした。実際は2曲。長い無伴奏のイントロのあるナンバーをソロと勘違いしてました。すいません)

by god-zi-lla | 2016-09-10 09:27 | 常用レコード絵日記 | Comments(2)
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オーネット・コールマンがとくべつ好きってほどでもないからたくさんレコード持ってるわけでもないししょっちゅう聴くわけでもないんだけども、そのなかでいちばんよく聴いてる気がするのは多分80年代の終わり頃に出た〈VIRGIN BEAUTY〉じゃないかな。でもまあブルーノートのゴールデンサークルVol.2をVol.1を買ってから何十年もたって買ったくらいだから、よく聴くとか聴かないとかいうほどのことじゃないけどさ。

だけどこの上のジャケットのモデルのおねえさんの蚊取り線香みたいなピアスがすごい気になっててさ。なんだこれ? って最初に思ったのがいつだったか忘れましたけどなんかすごいインパクトあった。だからこれがオーネット・コールマンのアルバムだったなんてことはずいぶん後になってから認識したんじゃなかったかしらん。

それをどういう風の吹き回しだか、ついせんだって買ったんであった。〈LOVE CALL〉つう68年のアルバム。

今回買うまで聴いたことはなかったけど、これがリズムセクションにジミー・ギャリスンとエルヴィン・ジョーンズつう超強力なコンビ、そこにデューイ・レッドマンのテナーの加わったバンドのアルバムだってことはさすがに今はもう知ってました。でもね、正直なところジミー・ギャリスンとエルヴィン・ジョーンズ組にコールマン・レッドマン組ってのは水と油なんじゃないの? って聴くまでは思ってた。

で、聴いてみるとおれにはやっぱり「水と油」にきこえる。きこえるんだけど、面白くないかってばこれがすごく面白い演奏に思えてさ。エルヴィンはとにかくすごい勢いでコールマンとレッドマンにビートを送り込んでる。二人がどう出ようがまあお構いなし。うりゃあー、お前らもっとガツンガツン行けえー、どどどどどどどど、みたいな。ジミー・ギャリスンは二人のプレイに反応しながら激しくパルスを送ってるようにおれにはきこえるけど、とくにコールマンのほうがそれに乗ってきてるかっつうと必ずしもそうでないような気もするんだけど、じゃあお構いなしかっつうとそうでもない(乗っかりかたが違うのか)。

なんというのかなあ、ギャリスン+ジョーンズ組はあの「至高のクァルテット」のまんまのノリノリ、コールマンはコールマン流のノリノリ。当然ノリノリの方向性が違ってる。違ってるんだけどお互い好き勝手にやって楽しそう。どっちかがどっちかに合わせようって気がない。そのかわり強引に自分のやり方で押さえ込もうって感じもない。そこをデューイ・レッドマンのテナーがなんとなく繋いでるような繋いでないような、レッドマンのゴリゴリっぷりはギャリスン+ジョーンズ組に共通のものがあるけど踊るような音楽そのものはコールマンと同じ足場に立ってるっていう感じですかね。

なんかさ、コルトレーンはジミー・ギャリスンとエルヴィン・ジョーンズのリズム隊のうえで語ったり叫んだり泣いたり歌ったりしてたのが、コールマンは踊ってるような感じがするんだよ。その踊ってるような感じが80年代後半の〈VIRGIN BEAUTY〉とおんなじのような気がしてさ。いやこれは楽しいレコードだな。

ところでそのグルグルした蚊取り線香ピアスが印象的なカヴァー写真はクレジットを見てみるとフランシス・ウルフが撮ってる。いや、もしかしたら一瞬アリモノの写真を使ったのかとも思ったんだよ。なんかこういかにもコマーシャルっぽいでしょ。だけどウルフが撮ったと知ればちょっと見方が変わる。つうのもサド・ジョーンズのあのアルバムの、故意か偶然か仕掛けを隠したような写真のことが思い出されてね。こいつもまたどっかに何かが隠れてるんじゃあるまいか。この二人のおねえさんの手の位置はどうか、バックの建物に何かヘンなところはないか、そもそも二人よく似てるけど双子か、あるいは合成か、とかさ(いまのところ何も発見できないけど)。

なんつってたらヘンなところにヘンな(つうよりウレシイ)オマケが隠されていたのであった。このレコード'BST-84357'。下のラベル写真見れば'STEREO LONG PLAYING'の表示。なのにかけてみると中身はモノラルなんだよ。コールマンもレッドマンもギャリスンもジョーンズも全員まん中で1列縦隊。

そういえばと思ってランオフを確認してみると、'VANGELDER'の文字はあるのに'STEREO'の刻印がない。きっとプレス工場で間違えたんだな。この1枚だけだろうか。いやスタンパーの装着間違いだったら結構な数が出回ってるかもな。そしたら、もしかして逆にジャケットとラベルの表示はモノだけど盤はステレオになってるヤツもあるってことか。そりゃマズいじゃん(ったって48年前のことだから今さら心配してもな)。
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by god-zi-lla | 2016-08-08 16:14 | 常用レコード絵日記 | Comments(0)

Bestway?

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つうようなわけでナイスガイ、ボブ・ブルックマイヤーには申し訳ないが、その日もTRADITIONALISM REVISITEDを聴いたあと手近に立てかけてあったブッカー・アーヴィンのTHE IN BETWEEN(BLUE NOTE 84283)に手を伸ばしてしまったんであった。んー、このブッカー・アーヴィンもかっちょいいよなあなんて、まだまだ(還暦が目と鼻の先だっつうのにまったく)ケツの青い初心者ジャズファンはナイスガイとは縁もユカリもなさそうなアーヴィンのぶれぶれジャケット写真眺めながら独りごちたりしてさ。

ところがね。A面からB面にかけかえるときふとデッドワックスを見るともなく見たんだよ。そしたら見慣れたVAN GELDERの刻印の近くにもう一つ母盤番号やなんかとは別の何か手書きのような文字が刻まれてるのが目に入ったんです。あれえ、こんなとこになんか書いてあったっけね。見るとBell Soundのように読めないこともないんだけど、刻印が浅めなうえにこちとら自慢じゃないがもう10年も前から老眼だ。いくら気合い入れたって見えないもんは見えない。

こういうときはデジカメで撮っちゃうのが唯一の解決策というものである。きょうびのデジカメときたら老眼のじじいの目ン玉なんかの数千倍いや数万倍は高性能ですから。さっそくOM-D E-M10を取り出して写真撮ってMacの画面で見てみたのが上の写真だ(ただし元画像はずっとデカい)。筆記体風の書体を使って〈Bestway〉と読める文字を機械で刻印してある。だけど何、ベストウェイって?

いままで意識したことがなかったから断言できませんが、少なくともウチにあるLPレコードでVAN GELDER(RVGもひっくるめて)の刻印といっしょに各種番号以外の文字が刻印されてんのってなかったと思うんだよ。べつにまあ大事件とか大発見っていうようなことじゃ全然ないんだけど、たとえばBell Soundと一緒にVAN GELDERの文字の入ったヤツはうちにはない。ちなみに〈Bell Sound〉はニューヨークにある大手のレコード製造会社で、ここでカッティング/プレスされたレコードにその文字が刻印されてるわけだ(Bell SoundとVAN GELDERが並んで彫られたのを見たことないのをみると、自社でカットせずプレスだけ請け負ったときには社名を刻印しないか、別のマーキングをしたのかもしれない)。

まあふつうに考えりゃBestwayはこのブッカー・アーヴィンのレコードをプレスした会社だろうと見当はつくわけで、じっさい調べてみるとかつてニュージャージー州マウンテンサイドにあったプレス会社だってことがわかる。デッドワックスに彫られる刻印は主に〈B〉らしくて、〈BW〉というのがマトリクス番号のなかに刻印されることもあるらしい、って言われるとなんか見たことはある気がしますね。だけどBestwayは初めて気がついた。しかもVAN GELDERと並んでだ。

うちにはVAN GELDER(あるいはRVG)と彫られたブルーノート盤なんて多分20枚かそこらしかありませんが、その少ないレコードをざざざざざっと見たかぎりではBestwayと刻印されてるレコードはやっぱりなかった。この程度の例じゃなんとも言えませんけど、やっぱり珍しいのかな(そう思いたがってるだけなのよ)。

すいません、どーだっていいことをつべこべと。
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つうわけでブッカー・アーヴィンの〈THE IN BETWEEN〉といえばこれである。68年の録音だがアーヴィンは70年に肝臓病で亡くなっているので「晩年」のアルバムといって言えないことはない。しかしアーヴィンの亡くなったのは39歳だから人生の黄昏時の音楽というようなもんではもちろんない。

アーヴィンといえばやっぱりプレスティッジのBOOKシリーズのようなワンホーンにトドメを刺すというのがコアなアーヴィンファンなのかもしれないけど、おれはこのリチャード・ウィリアムズをトランペットに据えたブルーノート盤とかパシフィックの〈Structually Sound〉でチャールズ・トリヴァーのトランペットと組んだのとか、数は少ないのかもしれないけど二管以上のアルバムのブッカー・アーヴィンも捨てがたいと思う。

ウィキペディアにも「強くタフなサウンド…」なんて書いてあるしテキサス出身でもあるし、ストロングスタイル(プロレスかよ)のテナーソロが魅力なのはわからないでもないんだが、おれは聴いててときにアーヴィンのワンホーンソロに飽きることがある。そこいくとトランペットと組んだアーヴィンというのは特有のマッチョさはうしろに引っ込むけども、フロント二人のつくるサウンドがなんともいえずキモチよくてなおかつかっこいいと思うんだよ。

アーヴィンはミンガスのバンドにけっこう長く在籍したはずだけど、ミンガスの作り出すサウンドというのはやはりフロントの二管あるいは三管の絶妙で美しいアレンジとそれぞれのソロの対比のすごさがひとつの聴き所だろうと思う。そういうかつての親方の音楽がアーヴィンの身体のなかにもしっかり染み込んでるんじゃあるまいか。

〈THE IN BETWEEN〉のサウンドは1930年生まれのアーヴィンよりだいぶ世代の下ったウディ・ショウ(1944-89)のサウンドを思い出させるようなところもあって、アーヴィンはそういう新しい表現に進もうという途中だったのかもしれない。いやもうちょっと生きててウディ・ショウと二管のアルバムなんて出してくれたら最高だったのにね。やっぱり誰かが言ってたとおり、ブッカー・アーヴィンて人は音楽的なピークを迎える前に亡くなってしまったんだろうな。
by god-zi-lla | 2015-09-19 16:03 | 常用レコード絵日記 | Comments(0)
レーザーディスクのRHYTHMSTICK_d0027243_9224913.jpg
ジミー・ジュフリーの映像が映画「真夏の夜のジャズ」にあるよと宗助さんに指摘されて、そういえば昔レーザーディスクを買って見てたのにドルフィーに気が行っててほかに覚えてるのはチャック・ベリーとサッチモとモンクとアニタ・オディくらいのものでジュフリーが出ていることなんてまーったく認識していなかったんだよ。

まったくニンゲンてな興味あるものしか見えてないもんなんだな。

だがレーザーディスクはとっくのとうにパイオニアのプレーヤーもろとも弟のところに行ってしまって、その時とりあえず音楽関連の映像だけはもしかしたら今後ほかのメディアで復刻されないかもしれないと思ってDVDにコピーしといたんだ。で、ふつうの映画のディスクはどうせいくらでもあとで買おうと思えば買えるでしょうからいいやと、そのまま弟にプレーヤーといっしょに渡してしまったのであった。だから59年ニューポート・ジャズフェスティヴァルのドキュメンタリーフィルム「真夏の夜のジャズ」も当然コピーしてあると思ってたので、そいつを引っぱり出して見てやろうかと探してみたんです。

そしたらどうもおれはコイツを「音楽関連」でなくて「映画」のディスクと決めつけてコピーを取ってなかったことが判明したのであった。おーまいがっ。なんたるウカツ。さすがおれだ、肝心なときにまるで役に立たない。だけど見たいもんですから泣く泣くAmazonで注文してしまったではないか(やっぱ映画だからあった。ただしチャーリーのUK盤)。

だけどなんかくやしい。じゃあ真夏の夜のジャズを捨てたかわりに、おれはどんなディスクをDVDに残してあるんだと久しぶりに棚から出してみたところ、例えばストラヴィンスキーのオペラ「放蕩者のなりゆき」(グラインドボーン音楽祭の実況盤)とか、マイルスバンドにコルトレーンが在籍してる時代のSOUND OF MILES DAVISつうアメリカのTV番組(動くギル・エヴァンスが見られる)とか、ベッシー・スミスからブルース・スプリングスティーンまでってタイトルの付いたジョン・ハモンドのドキュメンタリーとか、まあそういうのが10なん枚かあるのだった。

その中にですね。RHYTHMSTICKっていうクリード・テイラーがプロデュースしたディスクがあってね。これはなんていうのかなあ。インパルスからA&M、CTIにいたるまであのクリード・テイラーが得意とした、ミュージシャンのレギュラーグループじゃなくてレコーディングのためのゴージャスなスペシャル編成の、ジャズといってもあまりハードじゃない(コマーシャルといえばコマーシャルな)一連のアルバムがあるでしょ。まさにドンピシャであの路線の1枚。しかもそれらのアルバム群と同じようにルディ・ヴァン・ゲルダーのスタジオで作られたオールスターアルバムなんだな。

ただしこれには全編映像が付いてます。
つか映像込みでアルバムとして仕上げられた作品なんだと思う。

これ多分クリード・テイラーはレーザーディスクつう高画質&高音質の新しいメディアの登場を見て新しいタイプの音楽ソース(アルバム)として気合い入れて作ったんじゃないかと思うんだよ。そういう雰囲気がメンバーの顔ぶれにも出てるし映像の作りにも出てる。まあしかし多分、いま現在の状況を見ればその目論見は結果としてうまくいかなかったということだろうな(曲単位のヴィデオクリップは当たり前の存在になったけど)。

写真に写ってる手前のトランペットはアート・ファーマで、奥にいるアルトサックスはフィル・ウッズね。アルバム全体の(オールスターアルバムとはいえ)看板スターはディジー・ガレスピでアレンジはベニー・ゴルソン。ウッドベースに先般亡くなったチャーリー・ヘイデン。ドラムスにはこのころまだ若手だったマーヴィン・スミッティ・スミスもいるんだが、もう一人はなんとバーナード・パーディー。ギターにはロベン・フォードとジョン・スコフィールド。それからパーカッションにアイアートと、ニューヨーク・ラテンの王様ティト・プエンテ。ピアノがヒルトン・ルイズで歌を唱ってるのはフローラ・プリムという、まさにこうなんつったらいいのかクリード・テイラーの人脈自慢を見てるような顔ぶれなのだった。

聴けばこれはもう想像をまったく裏切らない、もろA&M-CTI路線なラテンフレイヴァーたっぷりの良質なイージーリスニング・ジャズでね。じつに聴きやすいです。だけど、これが出た当時(たぶん80年代の後半)おれはこういうジャズをまるで聴いてなかったですから、そもそもどうしてこれを(レーザーディスクだからそうそう安いわけもなかったはずなのに)買ってきたのかがよく思い出せない。もしかしたらレーザーディスクプレーヤーを買ったばかりで、レーザーディスクのために作られた最新のソフトをためしに買ってみようと思ったのかもしれない(なにせジャズのレーザーディスクって上に書いたマイルスのTV番組みたいな古いモノクロ/モノラル映像の焼き直しみたいのが多かったからさ)。

しかしこれ、いまになってみれば亡くなったガレスピやヘイデンやファーマーにプエンテ(それからテナーのボブ・バーグもだ!)が鮮明なカラー映像で「動いてる」のを見られるのが貴重なのはもちろんなんだけどさ。いやー今回見てるうちにファーマーとウッズが並んで吹いてるここってヴァン・ゲルダー・スタジオだよなあって、当たり前のことに気がついてなかったことに気がついて、なんかびっくりしてしまったんであった。ヴァン・ゲルダー・スタジオの音は無数のアルバムで聴けるわけだけど、映像ってのはほとんどないんじゃないですかね。

でもね、残念なことに写真のごとくチャンとした映像作品として作るためでしょうが、スタジオ内の地明かりをすべて落としてミュージシャンだけにスポットを当てるような照明を行っているためスタジオそのものの様子はまるで窺えないのであった。んー、せっかく気がついて全編見直してみたんだけどなあ。あはははは。まあしょうがないやね。そんなモンが映っててうれしがるのはごく一部の物好きだけですから。

演奏はね。おれの好みでいいますとフローラ・プリムのヴォーカルの入ったトラックがとってもいい。ボサ・ノヴァじゃなくて、ブラジル音楽に詳しくないからうまく言えませんけどやや懐かしめのMPBという感じですかね。できたら全編で唱ってほしいくらいですけど、それじゃあプリムのアルバムになっちゃうもんな。

つうわけで、真夏の夜のジャズのディスクがなかったばっかりに、こんなものを引っぱり出してつい見てしまった今日このごろなんであった(三津五郎が亡くなったのでアップロードが1日遅れた)。

それにしてもここまで読んでもらったところでなんの役にも立たない情報で申し訳ないね。レーザーディスクなんかイマドキ買ったってなんの意味もないしDVDは出てないし音だけ収録したCDも廃盤のようですしね。Amazon見るとVHSも出てたみたいだけど、それもちょっとねえ。YouTube探しても映像ないし。

できればいっぺんDVDでもブルーレイでもいいですから、復刻してくれるとうれしいんだがなあ。できたらメイキング映像とかオマケをタップリ付けてね。そうするとヴァン・ゲルダー・スタジオの様子もきっと見られるでしょうし。どんなもんでしょうか(だれに言ってるんだか)。

フローラ・プリムと旦那のアイアート(プリムの頭がすごい)↓

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by god-zi-lla | 2015-02-24 09:09 | 常用レコード絵日記 | Comments(0)
マラソンセッションのシングル盤(たまにゃレコードのこともな)_d0027243_2249090.jpg
芝居といえば先月は大竹しのぶ・宮沢りえ・段田安則で清水邦夫作、蜷川幸雄演出の「火のようにさみしい姉がいて」をシアターコクーンで見た。ところが見終わってしばらくたってみると、大竹しのぶの、据わったまま宙をさまようことなく見開かれて、まるで人生に迷うことをやめてしまったような目ばかりが思い出されてならないんだ。おれはふだん宮沢りえは舞台俳優としてけっこうすごいところまで来てるよなあと思って見てるし、段田安則はもうたいしたモンだと感心しきりなんだが、大竹しのぶのあの目を思い出すとそういうすごいとか感心するとかの埒外の何かコワイものを見てしまったような気さえするのだった。

とまあ、いかにも芝居三昧のようなことをぬかしておるが、たまにはレコードだって買うぞ。

これは8月、買って2日目のカメラが故障して仕方なく神田小川町にあるサービスセンターに持ち込んで、それだけで帰るのもなんか癪に障るので古書店を冷やかしつつ神保町から坂を上がって明治大学脇にあるユニオンのジャズ東京に入り、スティーヴ・レイシーの持ってなかったソロアルバム(A面がライヴB面はスタジオ)と、このトシになってようやくすごさがわかりかけてきたような気がして少しずつレコード買ってるリー・コニッツのアルバムを1枚ずつ引っこ抜き、さてレジへ行こうかと思ってふと見るとシングル盤のセールの残骸コーナーが幅ほんの15センチか20センチあるのに目がとまったのだった。

いやーおれは全然シングル盤のコレクターでもなんでもないから、常設のエサ箱があってもめったに見ることないんだけどね。なんかこの、たまたま残りカスのようになってるセールのエサ箱を見るとつい手が伸びちゃう。もしかしたらちょっとしかないから、パッと見るのにちょうどいいってのはあるな。シングル盤てたいていジャケットないじゃないですか。そうするとレーベル面を1枚1枚じっと見なきゃ、どんなレコードなのかわかんない。つね日頃お目当てのブツを目を凝らして探索しているコレクターの方なら気力も眼力も続くんでしょうけど、べつに買う気もそんなにないくせにぼおーっとエサ箱パタパタしてる一般大衆のおれにそんな根性はハナっからない。

でこの日もつい見ちゃった。そういえばこのときもそうだった。そうか、これは新宿だったんだな。すっかり忘れてた。

でもね。当然セールの残りモノだからたいしたのはないんだ。今回のこれも盤面スリキズだらけの1500円だったしね。だけど両面マラソンセッションのマイルスからのシングルカットだしさ。A面がSteamin'からWhen I Fall In LoveでB面がRelaxin'からI Could Write A Book。しかもRVG。そもそもプレスティッジのシングル買うのも初めてならヴァン=ゲルダーの切ったシングルも初めてなんだ。

なんて思って、手に取ってしまえば運のツキ。

まーた、いりもしないものを、欲しいと思ってたわけでもないものを買っちまったなー。なんて思いながらもべつだん後悔するでもなくウチに帰って、うふふふふ、なんて顔して眺めてたんですけどね。ふと思い立ってこの2曲の録音年月日を調べてみたのだった。といったってマイルス・デイヴィスのマラソンセッションといえば56年5月11日と同じ年の10月26日の2回こっきりですからWhen I Fall In LoveもI Could Write A Bookもそのどっちかで録音されたに決まってるわけなんだけどさ。

そしたら、どっちも5月11日の録音でやんの。えへへへへ。やったね。

いやその、まえにも書いた気がしますけど、おれの誕生日って56年の5月12日なんです。念のため、大阪生まれ。だから米国時間だと5月11日。ドンピシャの祥月命日。いやいや。だから5月11日録音のマラソンセッションはちょっとだけ特別なのね。むかしはカセットにこの日の演奏だけダビングして聴いてたこともあったんだよな(もちろんLPから1曲ずつダビングした)。こんなかっこいい音楽をレコーディングしてた日におれは生まれたんだなあって、あんまり意味はないんだけどさ。でもなんか、うれしいじゃんか。

つうわけで、手に入れてみれば思いがけず自分だけに意味のあるおタカラになってしまったのであった。

(音は案の定ザリザリだけど、なんか活きのいい音がするんだこれがまた!)
by god-zi-lla | 2014-10-10 18:31 | 常用レコード絵日記 | Comments(0)
あ、絵だ。(John Coltrane/Lush Life)_d0027243_11401262.jpg
おれは東京でもう一度オリンピックやることには大賛成なんだ。ガキのころ聖火リレーに始まって巨大な運動会みたいに見えた青空の開会式や昭和天皇の開会宣言やボブ・ヘイズの力走や円谷さんがヒートリーに抜かれた残念なシーンやばかでかいヘーシンクや東洋の魔女や、とにかくあれほど片っぱしから強烈な印象のイベントっておれにはあのあとひとつもない。だから生きてるうちにもういっぺんあれが見られたらなんて楽しいんだろうと思う。

だけどいまは時期があまりにも悪すぎるよ。大震災から2年半しかたってなくて原発事故は収束どころかいまも進行中だし大都市以外の復興はあまり進んでなくて自分が住んでいた家へ帰れない人がまだ数十万人の単位でいる。つまり日本にはオリンピックより先にやらなきゃなんないことがまだまだ山ほどある。

だから、いっそ20年30年後に国じゅうクリーンにして出直してきますから、そのときは世界じゅうのみなさん是非ヨロシクねって今回は退場しほうがよかったと思う。

こういうこと言うとあれですけど、おれは五輪やりたい派がそのために汚染水対策を急ぐのがなんという不埒な考えなんだと思ういっぽうで、もともと五輪やりたくない派がやりたくない主張の「補強」のために震災復興の遅れや原発事故を持ち出すのも、心根のどっかに共通したもんがあるように感じられて結構、いや相当、いやハッキリいってスゲー気分良くない。

結果が出る前に、とりあえず書き留めとく。

それはともかくとしてプレスティッジレーベルのコルトレーンのLush Lifeなんだが左はもともと持ってたOJCの復刻でジャケットはオリジナルのコピーなんです。それがたまたまプレスティッジには珍しくないレコード番号変えてジャケットデザインをいじった再発盤のLush Lifeを見つけたのが右のやつで一瞬タイトル文字と刷り色をいじっただけかと思ったのが、あれ? これって絵じゃん。

オリジナルデザインのほうには写真かデザイナーかわからない判読不能のサイン(途中にandとあるので二人ぶんの名前らしい)が入ってるんだけど、これが通常この時期のプレスティッジのジャケット写真をよく撮ってるドン・シュリッテンとはどうも読めないんだ。そしてその同じ写真をもとに描かれたとおぼしき再発ジャケットにはIrving Riggsってサインが書き込まれてる。

んー、絵ってのがなあ。ハッキリいってケチくさいプレスティッジがよりによってオリジナルジャケットと差し替えるのに新しくポートレート写真をモトにしたイラストレーションをわざわざ起こすなんて、なんかちょっと信じられない感じがする(どーでもいいようなことでスイマセン)。

でね。もうちょっと調べてみたらどうもこのアーヴィング・リグスって人はここのまん中にあるサイケ調のやつ、これも同じプレスティッジの再発ジャケットをデザインした人でもあるらしくて、そういえばこの肖像画のコルトレーンとレコード番号もすぐ近所なのだった。

そもそもLush Lifeってアルバムそのものが57年と58年の録音セッションの寄せ集めでレコード番号からするとコルトレーンがアトランティックに移籍したあとの60年ころにリリースされた、それ自体がプレスティッジレーベルに山ほどある残りモノで延々と稼ぎまくる盤のひとつだから再発もへったくれもどーだっていいようなモンではありますけど、プレスティッジで写実的な肖像画のジャケットっていうとドルフィーの横顔がジャケットの一部に描かれたOutward Boundくらいしか思い出せないから、ちょっと珍しいんじゃないですかね。

で、おまいさんはその程度のことでこのレコードを買ったっていうのかい。
いやまあその、じつはそうなんです。すいません。安かったし。

もともと持ってるのがOJCだしね。ここいらへんのやつはお値頃感のある古い盤を見つけたらサイフと相談しながらぽちぽちと買い直してるわけなんですけど、それもあってね。VAN GELDERの刻印はあるんだけど擬似ステレオの表示がジャケット上部にあるから(レーベルにもSTEREO表示)安いんだ。

でもさ。経験上プレスティッジの擬似ステにはときどきどう聴いてもこれってモノラルじゃないのってのがあってさ。まあ当たり外れはあるんだけど当たればかなりトクした気分になれます(外れると擬似ステレオ特有の気色悪い音を聴かなきゃなんないけど)。で、これは当たりだった。うれしい。OJCも悪くない音だけどいかにもヴァン・ゲルダーっぽいエコー感みたいのは見事になくなってる(だから逆にOJCのがいいという人がいても不思議じゃないと思うけど)。

でまた絵のハナシに戻るんですけど、この再発盤が出たのは裏解説の筆者名のあとにある1968という数字から推すとコルトレーン没後1年くらいのことらしい。そうするともうトレーンはジャズ史に名を刻まれた巨匠になってたわけで当然追悼盤的な売られ方をしたに違いなくて、そうすると当然商売としたらけっこうな儲けが見込まれたんではあるまいか。

だからふだんはしみったれなプレスティッジがちょいとジャケットにお金を張り込んで肖像イラストを起こしてみたりしたのかもしれない。

中身はというとA面がアール・メイ(b)とアート・テイラー(ds)を従えたコルトレーンには珍しいピアノレストリオで、B面はレッド・ガーランドのリズムセクションにタイトル曲だけドナルド・バードのトランペットが加わったセッションになっている。どっちもコルトレーンが疾走を始める前の演奏で比較的テンポのゆったりとしたトラックばかりで、おれとしたらちょっと物足らない1枚ではあるんだけど、まあ聴きやすいといえば聴きやすい好演奏揃いの好盤だと思う。

ところでこの擬似ステレオ表示(このアルバムだとThis Album Has ELECTRONICALLY REMASTERED For STEREO、大文字小文字の区別も原文どおり)があるくせに聴けばモノラルなレコードですけど、もしかして擬似ステ加工してないモノラルのマスターをステレオ用のカッターヘッドで切っただけなんて横着あるいは手抜きがあったのではなかろうかと、ふと思ったんだけどどうなんですかね(おかげでこっちはうれしいんだけどさ)。

この時期ヴァン・ゲルダーがマスタリングしたステレオ盤てVAN GELDERの刻印のほかに必ずSTEREOって刻印が入ってると思うんだけど、このアルバムのデッドワックスにそれは刻まれてないんだ。
by god-zi-lla | 2013-09-07 07:58 | 常用レコード絵日記 | Comments(9)

NORVO! MOVE!

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みんな言ってますけど東京は秋がちょっとしかなくていきなり冬になっちゃったな。
寒いのに近所のイチョウ並木は緑のまんまで、もしかして黄色くなるキッカケ失ったかな。

レッド・ノーヴォのMOVE!っていうアルバムがもう30年以上前からアタマのすみっこのどっかで気になっててさ。そのうちいつか買って手元に置いてゆっくり眺めてやろうってずっと思ってたんだよ。

そうです眺めるのが目的でした。

このジャケットの写真がさ、アメリカ空軍アクロバットチームThunderbirdsのノースアメリカンF100スーパーセイバーだからね。それでずうーっと昔っからこれはかっこいいジャケットだよなあって気になってたんです。なんたってあたくしはヒコーキマニアだったから。

ただレッド・ノーヴォってひとはいわゆる「中間派」からバップ初期のヴァイブラフォン奏者だってことになってるじゃない。だからちょっとおれの守備範囲じゃないだろうなって思ってたもんだから、それにまあいつだって欲しいレコードっつうのがあるしね。どうしても優先順位は上がりません。そういう意味じゃ純粋にジャケットだけ気に入って買うなんてことはそうそうないもんでさ。たとえジャケ買いといったってそこはやっぱり自分の守備範囲のなかのハナシだったりもするわけだ。

それがちかごろ歳とるにつれてその守備範囲ってヤツのほうがなぜか広がってきたもんだから、ついせんだってエサ箱のなかからこいつを引っぱり上げたとき、おー機は熟せり!、いよいよ今日という今日はこいつをエサ箱から救出してやるまいことかと、まあフトコロにやさしいお値段でもありましたので買って帰ったのでした。

レッド・ノーヴォ・トリオってのはこの時期ノーヴォのヴァイブラフォンにタル・ファーロウのギター、それにチャールズ・ミンガスのベースつうドラムレスのトリオです。

そうそう、ミンガスの音楽を以前よりずっとたくさん聴くようになったってのも大きいよな。これがベースにスラム・スチュワートとかだったら今回もパスした可能性あるかもしれない。やっぱり、この3人でどんな音出すんだろうって興味がいまになって募ってきた感じはある。

それで聴いてみた。
じつは昔懐かしい感じのジャズを聴くつもりでした。

いやーおれのブログってこんなことばっかですいませんけど、今までレッド・ノーヴォの中間派なんつうレッテルに惑わされて敬遠してきたおのれの不明をひたすら恥じるのみ。

このなんつうかスピード感とか、聴いたことないようなハーモニー感とか不思議な響きとか、なんか70年代のおしまいのころにゲイリー・バートンとパット・メセニーがやってた当時不思議な気分で聴いた音楽にある意味近いサウンドを、先立つこと30年前に出してたように一瞬きこえた。ようするに50年代初頭にこんな新しくて楽しい音楽をやってたのかってかなりビックリしちゃってさ。

いやー毎度のことでございますが、もしかして知らなかったのはおれだけですか。
まいったなあ。いくつになってもヨノナカおれの知らないことだらけだ。

なんでもレッド・ノーヴォはこのトリオを始めるにあたりジミー・ロウルズに強く勧められて、ベースにミンガスを使おうとしたんだってね。

で、その当時ミンガスはロサンジェルスで郵便配達をしてたんだそうです。
それをノーヴォは一生懸命探し回ったらしい。ミンガスもファーロウも20代後半の若者。
やっぱりノーヴォは新しいことをやろうとしてたんだろうな。

じつはビバップ全盛の50年代初めに少し時代遅れなジャズをやってるアルバムの表紙に53年に初飛行したバリバリの最新鋭機F100がジャケットかよって、ちょっと違和感もあったんだよ。なにせレッド・ノーヴォってひとはチャーリー・パーカーやディジー・ガレスピを従えてリーダーアルバム作ったような人だからね。

だけどちがってました。
これ当時は、中身も新しいしガワも新しかったんだよ。

つうようなわけで、ここのとこくり返しくり返し聴いてたんだけどさ。このトリオのレコードってのはこれっきりなのかどうかネットで検索してみたらサヴォイレーベルが80年代になっていろいろ出したアンソロジーのシリーズのなかにこのトリオの録音をまとめたアルバムがあるとわかった。

で最初、写真の下のほうに写ってるCDがAmazon.co.jpのマーケットプレイスにあったんで買ってみたんだ。

いや、あんまり気に入ってしまったもんだから、このトリオの演奏ほかのもいっぱい聴いてみたいと思ったのは当然あったんだけどさ。それともうひとつあったのはノーヴォ、ファーロウ、ミンガスのトリオについてどうもよくわかんないってのがあったんだよ。

このサヴォイのシリーズをいくつかLPで持ってて音質的にはあんまり感心しないのもあるんだけど、ライナーノートが比較的しっかりしてる印象があったもんですから(あくまで印象ね。なにしろ英語苦手だからちゃんと読んで理解してるわけじゃないの)、もしかするとこのトリオについてわかるかもしれないって期待もあってね。

それがあなた。送られてきたCDをみたらLPのライナーノートをそのまんまCDサイズに縮小したらしい、これって蟻んコが読む新聞かよってくらいな極小文字がびーっしり印刷された見開きのリーフレットが入っててさ。これがもうおれの目にまったく見えないの。老眼鏡かけたってぜーんぜん見えません。んー。

でもまあいいや。ほかの演奏が聴けりゃ。そっちが大事なんだからさ。

ちなみにMOVE!のLPには12曲入ってますがこっちのTHE RED NORVO TRIO WITH TAL FARLOW AND CHARLES MINGUSのCDは20曲収録。いやー結構けっこう。これでなくっちゃね。音もまあそれなりですし。なによりこの気持ちいい音楽をいっぱい聴けるのがうれしいもんね。

ちなみにこの一連の録音は50年と51年にわたってロサンジェルスで2回、シカゴで1回のレコーディングセッションで行われたようなんだけども、MOVE!のこのアルバムはそれをまとめてヴァン・ゲルダーがマスタリングしてるんだね。だからこのレコードには手書き文字でRVGと彫られてますけど、しかしロサンジェルスとシカゴで録音したのをヴァン・ゲルダーが仕上げてニューヨークのサヴォイが発売ってのがなんだか大陸横断でスゴイよな。

で、いい調子で聴いてたんだ。2、3日。

ふとCDのバックインレイにある曲名リストのすぐ下の蟻んこ文字をしげしげと見てたら
Due to time limitations. 5 tracks which appeared on the original double album release have been omitted from this compact disc.
は? それってつまりモトの2枚組LPには入ってたけどCDに入りきらなかったトラックは勝手に外しちゃったってことすか。えー、なんだよー、ふつうそんなことしねーぞ。先にそれ言えよなー、バカヤロー。

で結局買ったのが写真左に写ってる2枚組のLPす。
たしかに5曲(つか5テイク)よけいに入ってました。

ちょうどヤフオクに安値で転がってたのが、せめてもの救いだった。

だけど知ってたら最初からCDなんか見向きもしないでLP探したのにさ。
なんでこういうテキトーで無責任なことするかなあ(CD製作したのはどうもこのときサヴォイの原盤権持ってた日本コロムビアらしいな。けっ、覚えとくぜ)。

つうようなイキサツはありましたけど、いまは楽しく聴いております。

ちなみにMOVE!以外のオリジナルアルバムというのはMidnight On Cloud 69っていうジョージ・シアリングのトリオの演奏入ってる(A面B面を分けあってるのか?)やつがあるようで、これはベッドの上で女性が裸の背中を見せて横になってるあのジャケットはわりと有名なアルバムらしいね。

まあでも、そっちはもういいかな(とか、いまは思ってるけどさ)。

だけどまだ不思議なのはこのジャケットのF100でさ。こいつの初飛行が53年、Thunderbirdsで使われたのが56年から63年。いっぽうレッド・ノーヴォ・トリオの大傑作MOVE!のレコーディングは50年から51年。

つうことはこのかっ飛びサンダーバーズのかっちょいいジャケットじゃないオリジナルジャケットってのがあるってことなんでしょうかね。ふつうそうだろうな。だけどもしかしてこの大傑作が5年も6年もリリースされずにお蔵入りしてたって可能性もあるのかな。

あともう1コ。

下のレーベル面見るとわかるんだけど、アルバムタイトルが"ZING WENT THE STRINGS..."とあってMOVE!の文字はタイトルじゃなくて曲名として入ってるだけなんだ。

もしかしてこれがオリジナルアルバムのタイトルだったってことなのかな。

けっこうミステリアスな傑作アルバムだよな。
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by god-zi-lla | 2012-11-28 10:50 | 常用レコード絵日記 | Comments(0)
WALKING IN SPACEはこれでアガリです_d0027243_6442941.jpg
きのうも暑かったが、きょうも朝から暑い。
いやもう暑いというのはよそう。

それよりも、

近所の沖縄系居酒屋に初めて入ってゴーヤーを薄く切ったのを梅干しで和えたところにカツオブシぱっと散らした品を食ったんだが、これが暑い夏の夜のビールにもゴハンにもとってもいい感じに合いそうで今夜は自分でも作ってみようと思う。

というような前向きの姿勢で残りの夏を乗り切ろう。
ははははは。なんとなく前向きだろ。

つうようなわけで、またもや同じレコードを買ってしまうという後ろ向きな生活をこっち方面では相も変わらずやっている今日このごろなんではあったのだった。

あったのだったが、どうやらこのクインシー・ジョーンズのおれ以外あんまり名盤とは言わない名盤WALKING IN SPACEはこれがラスト1枚ってことで決着つきましたね。

これの前に買ったのは片面VAN GELDER刻印入り、コーティングなしゲートフォールドジャケットだったんだけど、それが20代のころに買ってずっと愛聴してた国内廉価盤のシングルジャケットのやつと全然ちがう音がして一体おれのこの30年はなんだったんだろうかという茫然自失的な音でさ。

以来その1枚をまったくなんの不満もなくこんにちまで聴き続けてきたわけですが、せんだってコーティングジャケットてらてら、プロモコピー、白ラベル、両面VAN GELDERというのを発見してつい買ってしまえるくらいのお値段だったのでつい買ってしまったのだった。

そしたらあろうことかなかろうことか、さらに音がいいんだ。

もうレイ・ブラウンのベースはぶんぶん出しゃばるわ、ラーサーン・ローランド・カークのマルチリードは一層冴えるわ循環呼吸はするわ(ずっとしてるけど)、ヒューバート・ロウズのフルートは飛ぶわ、フレディ・ハバードは調子こいてぱっぱらぱっぱら吹くわ、エリック・ゲイルは切れるわ、とにかくもっと鮮度が高くて、クインシー・ジョーンズとクリード・テイラーとヴァン・ゲルダーがこさえた人工的音響世界が炸裂しまくっている。

こんな、レイ・ブラウンのエレキベースがつねに中心にいてそれにソロやアンサンブルが絡んでくるというようなビッグバンドサウンドなんてたぶんライヴじゃ出来ないまったくレコードのなかだけの世界だと思うんだけど、それがこの白ラベルのプロモ盤だとさらに強烈に出てくる。

いやーこれでアガリですね。
ジャケットもけっこうな照りのコーティングですし、ウラ面のPROMOTIONAL COPY / NOT FOR SALEのシールがサカサマに貼ってあるとこなんかも愛嬌あってなかなか結構だし(そもそも天地まぎらわしいデザインなんだよ)、コンディションもじゅうぶんだからね。

そのうえ初めて見た内袋まで入ってたしさ。

そしたらちょうど今月のレコードコレクターズ誌の特集がA&Mレコーズの200枚ということで早速かってきてパラパラとページを繰ってみたんですけど、まあ200枚選ぶんだったらたぶん入ってるだろうなあ100枚だったらことによると入ってないかもなあと思いながら見てたらいちおうありました。1ページ3作品紹介されてるカラーページにはなくってページ4作品のモノクロんとこ。

んー、まーそんなモンなんだろうなあ世間さまじゃ。
当然、名盤なんてことは書いてないし。

やっぱA&M/CTIの名盤つうとタバコの吸い殻のウェス・モンゴメリーだったりするんだよな。
まあいんだけどね。おれが好きなのはこっちのクインシーだっつうだけです。

とくにDEAD ENDからWALKING IN SPACEへ、レイ・ブラウンのソロを橋渡しにして切れ目無く続くA面のかっちょよさったらありません。サイコー!
by god-zi-lla | 2012-08-25 06:44 | 常用レコード絵日記 | Comments(0)
んー本人か?(Eddie \"lockjaw\" Davis/TRANE WHISTLE)_d0027243_1318492.jpg
あるレコード屋さんのネットショップからついせんだって買い求めたエディ・ロックジョー・デイヴィスのTRANE WHISTLE、じつはあのときのこれとおんなじ中身のモトのやつなんだ。

セカンドプレスかサードプレスでRVG刻印入り、しかもMONO!

いやーこれは買わないテはないよ。安いしRVG入りだったら直接聴き比べたってオリジナル盤との音の違いなんておれにはきっとわかんないしさ。しかもMONOだぜ。買いだ買いだ。これは買いですよ旦那。

で買いました。
音も案の定、ステレオの復刻と違ってぶっといのがぶっ飛んでくる。
もーヴァン・ゲルダーはこれだからヤなんだよなー、なんて言いながら顔は笑ってるんだ。

だけどジャケ裏のこのサインのようなもの。
サイン有りとか書き込みアリなんて但し書きはなかったのに、なんか書いてある。

なんだか万年筆のような筆記用具でひゃらひゃらひゃらっと3words。Eddie Lockjaw Davisって書いてあるように見えないこともない。こともないんだが、ぜったいそう書いてあるとも言い切れない。んー、これが手塚治虫のサインとか王貞治のサインとかいうんだったらガキのころからさんざっぱら見てきてるからわかるんだけどなー。

エディ・ロックジョー・デイヴィスのサインなんて見たこともないよ。

でもまあいいんです。
おれはよっぽどじゃなけりゃ書き込みなんて気にしないし、わざわざサイン盤を求めるほどじゃないけど、サインはあればあったで楽しいと思うからね。

だけどこれってロックジョーのサインかなあ。
もしかして、モトの持ち主がすごく自己顕示欲旺盛なひとで自分の名前を芸能人のサインぽく書いてたりなんかしてさ。んー。そうじゃないとも言い切れない気がする。

トツゼンですが、
小学生のころサインの練習しなかった?
将来ユーメー人になったときに備えて(笑)

いやまあそういうわけでじゃっかんの疑惑が残るものの、とっても良い買い物だった。
この盤についてはこれでもう、さらにオリジナル盤を、なんて気にはなりません(たぶん)。

ちなみにエリック・ドルフィーはソロを取ってません。
わずかにこれはドルフィーだろうっておれにわかるのはStolen Momentsのラストのところのテーマ再奏にきこえるバスクラリネットらしい音色の部分。ここんとこだけです。

だけどそんなことは置いといて、これはとってもかっこいいアルバムなんだよな。
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言い訳ですけど左上のジャケットは写真のウデが悪くて青っぽいんじゃなくて、じっさいにファンタジー盤よりもプレスティッジ盤の「黒」の部分のほうが青味が強いんです。右下の「黒」が黒いほうが以前買ったファンタジーの復刻盤。
by god-zi-lla | 2012-07-13 13:18 | 常用レコード絵日記 | Comments(0)

徳用手書きRVG

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1950年代の古いレコードをターンテーブルに乗せて、音楽が終わって針がいちばん内側のミゾまでいったのをそのままにしておくと、針のついたピックアップアームはそのミゾとその一つ外側のミゾのあいだを行ったり来たりせわしなく右往左往し続ける。

それ以降のレコードはそんなふうにはならなくて、ただ最後のミゾをいっけん静止しているかのごとく回り続けてるだけです。どうして最初はそうで、のちにそうでなくなったんだろうか。

理由を知りたい気もして調べればすぐにもわかりそうではあるけど、べつに知らなくてもいいかなという気もするのでとくに調べたこともない。

ただ、あれをぼんやり、なんとなく見てるのは楽しい。

ときに、たいして古くもないレコードのはずなのに買ってきて針を降ろすとそうやってピックアップが忙しく右往左往するレコードがあって、よくよく見てみればこの手のレコードが録音されたのは40年代や50年代だったりと新しいわけではない。

こういうレコードというのは古い時代にカッティングされたマスターをそのまま使い続けてプレスしてるレコードなんだってことに、あるとき気がついた。

しかもたぶん、大なり小なりヒットしたレコードだったりすれば1枚のマスターから何枚も何枚も実際にレコードをプレスするスタンパーを作るわけにはいかないで、その寿命が来るまえにマスターテープから新たにマスターを切って増産することになるんだろう。

そうすると50年代の右往左往する最終ミゾのあるレコードも年を経るにつれて新しいマスターによるスタンパーで作られるようになって、いつのまにか右往左往しない最終ミゾのあるレコードに取って代わられてしまうにちがいない。

してみるとそう古いわけでもない、せいぜい古くても65年くらい以後にプレスされたに違いないレコードなのに右往左往のミゾのあるレコードっていうのは、つまるところ短期間に大量に生産されたことのないレコードだってことになるんだろうな。

だけど、これはずっと後になって、そういうレコードをどこをどう巡り巡ってきたものか中古レコードとして買い求めるおれたちにとっては、ちょっとうれしいプレゼントのようなものではあるわけです。

なにせ、そう古いオリジナル盤なんてもんじゃないわけだから、そんなに高いわけはない。
それなのに、古いスタンパーを使ってるから音のほうはそうそうオリジナル盤より劣るわけでもない。

数日前にたまたま下の3枚を出して聴いてたら、珍しく揃いも揃ってそういう盤だったもんだから写真撮って並べてみたんだけど、3枚ともいわゆる手書きRVGの彫り物がデッドワックスにあるヴァン・ゲルダーのマスタリングによるレコードです(もちろん買ったときにはどれもそういう盤だと確認して買ってますけど)。

左とまん中はどちらもモトはSPという古い音源のマイルスとモンクだけど、どっちも60年代後半ぎりぎり70年代には入らないだろうくらいのプレス。右は大名盤サキソフォン・コロッサスのオランダ盤でUS盤でいうとサードプレスと同じスタンパーらしいやはり60年代なかごろのレコード。

それがどれも最後に右往左往します(笑)

なんか、うれしい。
なんたって良い音が安いんですから。
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まあ、それだけの話です。
by god-zi-lla | 2012-04-28 21:10 | 常用レコード絵日記 | Comments(2)